特別企画

申込期限は3月15日 白色申告から青色申告に切り替えて1000万円を節税しよう

 個人事業主の一大イベントである確定申告。その提出期限の3月15日まで残りわずかとなった。同じ3月15日に期限を迎えるのが、これまで白色申告の人が、その年から青色申告へ切り替える際に必要な「所得税の青色申告承認申請書」の提出だ。2017年分(2018年2月~3月で確定申告)から青色申告に切り替えようと思っている人は、遅れないように手続きをしよう。

 「そんなに稼いでないから白色で十分」「青色申告って面倒なんでしょ」「白色申告は記帳しなくていいから適当でいいし(←間違っています)」と思い、ずっと白色申告のまま継続しようと考えている人もいるだろう。

 筆者の回りにも「白色申告の記帳義務化、何それ?」という人もいるので、あらためて白色申告と青色申告の違い、青色申告の節税効果、白色申告から青色申告へ切り替える方法などを説明しよう。

白色申告者と青色申告者の比率

 まずは白色申告をしている人と青色申告をしている人の比率、その推移、人数などを統計データからみてみよう。平成29年2月に公開されたばかりの「平成27年分 申告所得税標本調査 -調査結果報告-」(PDF)によると、平成27年分の申告納税者数は633万人。申告納税者数は事業所得者数が170万人、不動産所得者数が109万人、給与所得者が243万人、雑所得者数が77万人、ほかの区分に該当しない所得者数が33万人となっている。構成比は事業所得者が26.9%、サラリーマン(給与所得者)が38.5%などとなっている。

事業所得者は170万人、全体の26.9%

 別の統計をみると事業所得者170万人のうち、青色申告をしている人は約102万人で、全体の59.6%となっている。平成20年以降の8年間の推移をみると、ここ数年で青色申告者の比率が大きく伸びていることが分かる。

 特に平成25年は前年から0.9%、平成26年は1%上昇しており、平成26年から白色申告の記帳と帳簿保存が義務化されたことが影響して、青色申告を選択する人が増えたことをうかがわせる結果だ。昭和25年から平成14年までの推移は国税庁のコチラのデータを参照していただきたい。

ここ数年で青色申告者の比率は上昇している

 次は同じく、事業所得者170万人の所得別の白色申告と青色申告の比率だ。所得が低い層は白色申告の比率が高く、所得が150万円超200万円以下で50%を超え、300万円超400万円以下で60%を超えるなど、所得が増えると青色申告の比率が高くなっている。

所得が増えると青色申告者に比率が高くなっている

 同じデータを所得別の人数でみると、所得が100万超200万円以下と300万円超400万円以下に多くの事業所得者が分布していることが分かる。100万超200万円以下の人は青色申告者の比率が50%前後なので、この層が青色申告に切り替えると全体の比率がグッと上がりそうだ。

所得が100万超200万円以下と300万円超400万円以下の人数が多い

 これらのデータをみると、年間所得が150万円を超える事業者は、白色申告より青色申告の人が多くなっている。今まさに確定申告の行われている平成28年分では、青色申告者が全体の60%超える可能性が高い。「そんなに稼いでないから白色で十分」と言っている人は、知らぬ間に少数派になっている。これを機に、青色申告への切り替えを再検討していただきたい。

「白色申告は記帳が楽」は過去の話

 青色申告は税制面で有利なことは分かっていても、複式簿記による記帳や貸借対照表などの作成が難しいという理由で、白色申告を選択している人がいると思う。すべて手書きで、自力での記帳や損益計算書、貸借対照表の作成を行うのは難しいが、青色申告ソフトを使えばほとんどの人が越えられるハードルだ。

 以前は楽と言われた白色申告だが、平成26年分から記帳義務化がスタートしたので、簡易簿記による記帳とは言え、労力は青色申告と変わらないレベルだ。預金通帳や領収書を見てExcelに手入力するくらいなら、インターネットバンキングやクレジットカード、電子マネーの入出金を青色申告ソフトに自動的に取り込んだ方が楽になるだろう。

 「白色申告は記帳が楽」は過去の話だ。クラウドに対応した青色申告ソフトを使えば、複式簿記による記帳も損益計算書、貸借対照表も意味が分からなくても作成できるし、入力のための労力は大幅に削減できる。パソコンが苦手という人を除けば、白色申告も青色申告も労力や難易度に大差はないだろう。

青色申告は大きな節税効果あり

 先日掲載した「クラウド?パッケージ?自分に合った青色申告ソフトの選び方」で、「やよいの白色申告 オンライン」は確定申告書を作り終えたときに「来年は青色申告にしませんか?」というメッセージが表示されることを紹介した。その事例では青色申告にすると15万9000円お得になると、申告内容から節税効果を算出してくれた。

 15万9000円の内訳は所得税と復興特別税で3万6000円、住民税で6万5000円、国民健康保険で5万8000円で、青色申告特別控除の65万円が課税所得や算定基礎額を下げたことによる恩恵だ。15万9000円は大きな金額だが、青色申告の特典は65万円の控除以外にもある。まずは青色申告特別控除を含め、青色申告に切り替えることで得られる主な特典を確認していこう。

特典その1 青色申告特別控除の65万円

 65万円の控除により、納税額を算出する際の基礎となる課税所得を65万円少なくすることができる。所得税は課税所得により税率が異なるので、税率ごとの節税効果は

税率5%の節税額 3万2500円+682円(所得税+復興特別税)
税率10%の節税額 6万5000円+1365円(同上)
税率20%の節税額 13万円+2730円(同上)

 住民税はほぼ全国一律で税率は10%なので

住民税10%の節税効果 6万5000円

 国民健康保険の保険料の算出方法は地域により異なっている。東京都千代田区の場合は算定基礎額が所得-基礎控除(33万円)となっていて、

医療分=算定基礎額×6.86%+加入者数×3万5400円
後期高齢者支援金分=算定基礎額×2.02%+加入者数×1万800円
介護分=算定基礎額×0.7%+加入者数×1万4700円(40歳から64歳の人が対象)

という式で算出される。算定基礎額が青色申告特別控除の65万円分下がるので、

40歳未満の人の減額分 65万円×(6.86%+2.02%)=5万7720円
40歳から64歳の人の減額分 65万円×(6.86%+2.02%+0.7%)=6万2270円

となる。

 所得税、復興特別税、住民税、国民健康保険料の合計は

課税所得195万円以下(税率5%)で40歳未満の人
3万2500円+682円+6万5000円+5万7720円=15万5902円

となり、1年間で少なくとも15万円ほどお得ということだ。仮に35歳の人で30年間同じ状況が続くと450万円も得することとなる。

課税所得330万円超695万円以下(税率20%)で40歳以上の人
13万円+2730円+6万5000円+6万2270円=26万円

と、こちらの例では年間26万円もお得だ。もし45歳でこれから20年間同じ状況が続くと、総額は520万円になる。

特典その2 青色事業専従者給与

 青色事業専従者給与は、家族に支払った給与を経費にできる制度だ。白色申告では奥さん(配偶者)の給与は年間86万円しか経費にできない。子どもや親(扶養親族)の給与で経費にできるのはたった50万円だ。家族に給与を支払うと、その家族は配偶者控除、扶養控除の対象外となる。

 青色申告であれば青色事業専従者給与として、家族に支払った給与を全額経費とすることができる。奥さんに経理や店番などの仕事を手伝ってもらえば、常識の範囲内の給料なら全額が経費となるので、大幅な節税が可能だ。

 節税効果を確認してみよう。旦那さんの課税所得を500万円としよう。奥さんが専業主婦であれば旦那さんの所得税は57万2500円となる。

課税所得×税率(20%)-控除額(42万7500円)=所得税額
500万円×20%-42万7500円=57万2500円

 白色申告で奥さんに年間86万円の給与を支払うと、経費が86万円増え、配偶者控除が38万円減るので、旦那さんの課税所得は452万円に下がり、納税額は47万6500円となる。9万6000円の節税だ。

課税所得×税率(20%)-控除額(42万7500円)=所得税額
452万円×20%-42万7500円=47万6500円

 青色申告で奥さんに20万円/月の給与を支払うと、旦那さんの課税所得は298万円となる。奥さんも年収が103万円を超え納税者となる。240万円から基礎控除と給与所得控除を引いた112万円が課税所得となる。2人の所得税は

旦那さん
課税所得×税率(10%)-控除額(9万7500円)=所得税額
298万円×10%-9万7500円=20万500円

奥さん
課税所得×税率(5%)=所得税額
112万円×5%=5万6000円

所得税額の合計
20万500円+5万6000円=25万6500円

 奥さんを専業主婦としているケースに対し、白色申告で86万円の給与を支払うと9万6000円の節税、青色申告で240万円の給与を支払うと31万6000円の節税となる。白色申告と青色申告の差は22万円だ。

 白色申告、青色申告それぞれの復興特別税、住民税、国民健康保険(東京千代田区:40歳で計算)を加えた差額は以下のとおり。白色申告の節税効果は20万円ほどだが、青色申告であれば50万円となり差額は30万円。これも40歳から25年間同じ状況が続くと750万円もの節税となる。

青色事業専従者給与 比較
青色申告白色申告
所得税31万6000円9万6000円
復興特別税6636円2016円
住民税9万5000円5万8000円
国民健康保険9万1968円4万5984円
合計50万9604円20万2000円

特典その3 30万円未満の資産の即時償却

 「数十年間同じ状況が続くと……」が個人事業主には難しい。リーマンショックのような外的要因、ケガや病気といった個人的な要因、業界、取引先などさまざまな要因が売り上げに影響する。次に紹介する固定資産の即時償却は浮き沈みが激しい人に効果のある特典だ。

 10万円以上の工具、器具、備品、車両などは固定資産となり、購入した金額をその年にすべて経費にすることができない。購入価格を耐用年数で割って、数年に分けて経費とする(減価償却)仕組みだ。耐用年数はパソコンは4年、カメラは5年、車は6年などと物品ごとに決められている。

10万円以上のパソコンは固定資産となる

 例えば24万円のパソコンを購入した場合、白色申告の人が定額法で減価償却すると4年=48カ月に分割して経費とするので、毎月5000円、12カ月分で6万円だ。年末に「今年はもうかって資金にゆとりができた」と購入しても、12月分の5000円しか経費にすることができない。

 青色申告には減価償却の特典があり、10万円以上30万円未満の資産を「少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例(措置法28の2)」により、即時償却をすることができる。その年に全額経費にできるので、この制度を使えば年末ギリギリに24万円のパソコンを買えば、全額をその年の経費とすることが可能だ。

 でもチョット待った。見かけ上はその年の経費が23万5000円増え、大きな節税になったように思える。しかし定額法であれば翌年も翌々年も6万円の経費を残せるが、即時償却すれば翌年以降の経費にはならない。4年後に振り返ってずっと同じ税率であれば、定額法でも即時償却でも差はなかったことになる。

 過去数年の所得税の税率が10%(課税所得で195万円超330万円以下)で、その年に大きな仕事が入り税率が20%(330万円超695万円以下)になった場合は有効だ。年末に10万円以上30万円未満の機材を購入すれば、サクッと節税ができる。

 売り上げ、所得の浮き沈みが少なくても、課税所得が税率の変わり目付近にいる人も有効だ。冒頭の所得別の人数のグラフをもう一度見ていただくと、300万円超400万円以下の人数がポンッと増えている。

300万円超400万円以下が不自然に多い理由は……

 所得が400万円以下であれば、基礎控除、社会保険料控除を引いた課税所得は300万円台前半(税率10%)となる。所得400万円超500万円以下の人は節税対策をしなければ、課税所得が300万円台後半から400万円台前半(税率20%)と推測される。仮に課税所得が350万円の人が20万円の資産を購入すれば、その分はチョットお得に買い物ができることになる。同じ人が翌年は課税所得が320万円であれば年末節税を見送ることもできる。このように、年末節税の調整弁としても青色申告の特典である即時償却は有効だ。この発想で、課税所得を330万円以下に調整している人が多く居て、グラフの所得300万円超400万円以下の人数がポンッと増えていると思われる。

特典その4 赤字の3年繰り越し

 青色申告であれば赤字を3年繰り越すことができる。開業時に設備投資が必要な業種、仕入れが多い業種などでは有効な特典だと思われる。

 図のように1年目が1000万円の赤字だったとしよう。2年目の黒字の200万円は1年目の赤字の200万円分と相殺し無税。3年目も黒字と1年目の赤字で400万円分を相殺し無税。4年目は1000万円の黒字から1年目の赤字の400万円分を差し引いた600万円の黒字となり、納税義務は発生するが大幅に納税額を減らすことができる。

 その後もさまざまな要因で赤字になることがある業種であれば、その年の赤字を繰り越すことができるので、大きな節税となる特典だ。

*****

 このように青色申告には多くの特典がある。どれが有効かは業種や家族環境による。何歳で起業して何年事業を継続するかで累積される節税額に差はある。青色申告で生涯を通じて数百万円の節税は期待できるし、特典をうまく活用すれば1000万円を超える節税も可能だ。

青色申告承認申請書を提出するだけ

 白色申告から青色申告に切り替える決心をした人。2016年分の確定申告を終わらせたら、ホッとしないで「所得税の青色申告承認申請書」(PDF)を提出しよう。紙一枚を記入して、税務署に持参するか郵送するだけだ。

所得税の青色申告承認申請書

 記入内容は住所や屋号、職業、所得の種類など一般的な内容なので難しくはない。注意点は簿記方式で複式簿記を選択することと、備付帳簿名で総勘定元帳、仕訳帳、固定資産台帳にチェックを付けることだ。

白色申告のデータを移行する

 なお、これまで白色申告をしてきた人は青色申告による記帳をしなければならない。Excelなど使用していた人は現金、預金、売掛金、買掛金などの残高、固定資産などを青色申告ソフトの導入時に入力すればよい。

 無料で使用できる「やよいの白色申告 オンライン」を利用されている方は、そのまま「やよいの青色申告 オンライン」にデータをコンバートすることができる。マイページで「やよいの青色申告 オンライン」の申し込みをして、「やよいの青色申告 オンライン」にログインし高度なメニューにある「白色申告からの移行」で消費税、口座、取引手段、固定資産、残高を設定しよう。

白色申告からの移行
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