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電子書籍ストアサービスを徹底比較(後編)

1クリックのKindleは購入が簡単。確認画面が多いBookLive!とReader Store

 欲しい電子書籍を見つけて購入するまでの手順では、1クリックで購入できるKindleストアが最も手軽。また、楽天koboの場合、購入内容の確認画面を表示してからの購入となるため最短でも2クリックではあるものの、検索結果から直接書籍を購入することができるため、欲しい書籍を検索して購入する流れであれば、Kindleストアとほぼ同等の手順で購入できる。

1クリック購入が手軽なKindleストア
検索結果から直接購入できる楽天kobo

 一方Reader StoreとBookLive!は、支払い方法の確認と購入内容の確認が別ページで行われるため、確認の手間がそもそも多い。また、どちらもカート方式のため1冊単位で購入する場合にはカートに入れてから購入するというフローが必要だ。BookLive!に関しては「今すぐ購入」という1冊単位の購入ボタンがあるものの、ブラウザーを起動して初回購入時には必ずパスワードを求められるため、実際には一手間増えてしまうことになる。

Reader StoreとBookLive!は支払い方法の確認と購入内容の確認が別

 Reader Storeの場合は、ブラウザーを再起動するとIDとパスワードのログインが必要になるほか、スマートフォンの場合も同様にIDとパスワードを求められる。さらに、書籍の購入時にはメールマガジンのチェックが必ず入っており、メールマガジン不要のユーザーは毎回手間が発生する。メールマガジンについては初回でチェックを外したユーザーは以後も不要などの対応を望みたいところだ。

購入からダウンロードまでの流れも1クリックのKindleが手軽

 電子書籍を購入後実際に端末にダウンロードするまでの流れもサービスごとに異なる。Kindleストアの場合は購入と同時にダウンロードする仕組みに加え、どの端末でダウンロードするかを購入時に指定できるため、PCから購入した場合でも指定した端末へ自動でダウンロードが可能だ。

 一方、BookLiveの場合は電子書籍端末から購入した場合は自動でダウンロードを行なうが、PCやスマートフォンで購入した場合は端末側で手動でのダウンロード操作が必要。Reader Storeも同様に端末から購入した場合は一括ダウンロードが可能だが、PCで購入した書籍はUSB経由で転送するか、端末から手動でダウンロードする必要がある。

スマートフォンの場合は1冊ごとダウンロード操作が必要なBookLive
Reader StoreはPCで購入した書籍を端末で読む場合手動でダウンロード。スマートフォンや電子書籍端末から直接購入すると一括でダウンロードできる

 楽天koboの場合、Webサイトで購入した書籍をダウンロードすることは可能だが、購入した書籍すべてをダウンロードする同期型のため、電子書籍端末の場合は好きな書籍だけを選んでダウンロードということができない。楽天koboのAndroidアプリも初回ログイン時にすべての書籍をダウンロードする仕様になっており(アプリの場合は一度同期を止めることで任意の書籍のみダウンロードすることも可能)、楽天koboは基本的に同期システムになっていることは理解したほうがいいだろう。

購入した書籍をすべてダウンロードする同期型の楽天kobo

 なお、タイトルごとに作品を管理するBookLiveの場合、コミックなどのシリーズ作品をまとめて購入したり、コミックの続きを簡単に購入できるといったメリットもある。しかし、電子書籍端末で購入した場合は自動でダウンロードするが、PCやスマートフォンで購入した場合は1冊ごとダウンロード操作が必要。電子書籍の購入頻度が低い場合はいいが、シリーズ作品を続けて読みたい、という時には悩ましい仕様だ。

BookLiveのAndroidアプリでは購入したコミックの続きが表示される

電子書籍の分類は基本的に端末ごと管理。BookLiveは本棚を同期

 電子書籍の利用頻度が高くなり、電書書籍の冊数が増えてくると管理方法も重要になってくる。

 分類という点ではBookLiveが優れており、ストア同様作品はタイトルごと自動的に管理されるほか、書籍を自分で分類できる「本棚」を複数端末で同期できるため、スマートフォンと電子書籍リーダーの両方で本を読む、という人には便利だ。

作成した本棚や分類状況を複数端末で同期するBookLive

 楽天koboの場合、電子書籍のみ「本棚」機能で電子書籍を管理でき、電子書籍端末間であれば本棚を同期できる。ただし、Androidアプリには本棚機能がそもそも搭載されていないため同期ができない。

koboの本棚機能は電子書籍端末のみ同期

 Reader Storeは「コレクション」機能で分類が可能だが、本棚やコレクションの同期機能は搭載していない。Kindleの場合コレクション機能が電子ペーパー搭載のPaperwhiteのみとなっており、スマートフォンやKindle Fireではコレクション機能で管理することができない。

Reader Storeのコレクション機能
Kindleのコレクション機能は現在Paperwhiteのみ

 書籍の続きを購入する際も、BookLiveは購入していない分も含めてシリーズ表示するため、コミックなどシリーズ巻数の多い書籍は順番通りに表示されてわかりやすく、続きを確認しやすい。しかし、購入自体は前述の通りフローが多いためやや煩雑だ。

 Kindleの場合、同じシリーズであっても巻数順には並ばないため非常に管理がしにくい一方、1クリックで購入できる手軽さゆえに続きを購入するための手間は非常に短くて済む。実際に続きを読みたいときにはその巻数を検索ワードに追加すればいいだけなので、シリーズ物を購入し続ける時もKindleのほうが結果として手軽だと感じた。

Kindleでは、シリーズ作品を検索しても巻数順に並ばないため官吏がしにくい
購入は1クリックで済むKindleがもっとも簡単だ

楽天koboの電子書籍端末は圧縮ファイルの読み込みにも対応

 サービスごと購入した電子書籍以外の文書や画像データに関する対応も各社それぞれ異なる。電子書籍端末の場合、LideoはmicroSDメモリカードなど外部ストレージに非対応なほか、表示できるファイル形式もBookLiveで購入した電子書籍のみで、PDFや画像ファイルなどには対応していない。ブラウザ機能も持たず、USBマスストレージにも対応しないため、外部ファイルはそもそも対応しない仕様となっている。

 Kindleも同様にmicroSDカードは非対応だが、PCからUSB経由でファイルを保存できるほか、ユーザーごと5GBまで利用できる「パーソナル・ドキュメント」を利用してメール経由でファイルを取り込むことができる。ファイル形式はTXT/PDF/DOC/DOCXといった文書ファイルに加え、JPEG/GIF/PNG/BMPといった画像ファイルにも対応。DRMがかかっていないmobi/prc形式の電子書籍ファイルも閲覧が可能だ。

 Reader Storeの場合は、6インチサイズの「PRS-T1」「PRS-T2」「PRS-G1」いずれもmicroSDカードスロットに対応し、外部データを取り込める。ファイル形式もXMDF(zbf)/.book/EPUBといった電子書籍フォーマットのほか、PDF/TXTなどの文書ファイル、JPEG/GIF/PNG/BMPなどの画像ファイルに対応している。

 楽天koboも6インチサイズの「kobo Touch」「kobo glo」がmicroSDメモリーカードに対応。また、公式にはEPUBおよび楽天koboで販売しているPDFのみが対象としているが、実際には楽天kobo以外のPDFやJPG/GIFなどの画像ファイルに加え、ZIPやRARで圧縮した画像ファイルも拡張子を変更することで閲覧が可能だ。

 具体的には、複数のJPGファイルをZIPで圧縮し、ZIPファイルの拡張子を.cbzに変更した後、マイクロSDカードに保存。楽天koboで「ライブラリ」の「本」からそのファイルを選ぶことで、一覧が表示されるので、読みたいファイルをタップすれば開く。自炊ユーザーなどは取り込んだ画像をZIPやrarで圧縮して対応ビューワーで読むという使い方が多く、koboの端末はそうした自炊ユーザーの利用にも向いていると言えるだろう。

ソーシャル機能は楽天koboが充実。ソーシャル機能に乏しいBookLive

 ソーシャル機能で最も優れるのは楽天koboだ。連携サービスはFacebookのみに限られるものの、読んでいる書籍のシェアはもちろん、書籍の読み始めや読み終わり、読んでいる時間によってバッジを発行する「Reading Life」機能が面白い。Andoridアプリの場合、自分が読み終わったデータを過去にさかのぼってFacebookにシェアする機能も備えるなど、ソーシャル連携が充実している。

楽天koboの「Reading Life」機能

 kindleもTwitterやFacebook連携機能を搭載し、読んでいる最中の電子書籍情報を投稿したり、Amazon.co.jpのレビューを投稿することが可能。ただし、現状は端末によって機能がバラバラになっており、読み終わった本を5段階で評価できる機能は専用端末のみでアプリから利用はできない。

◇Kindleのレビュー投稿機能は専用端末のみ
http://internet.watch.impress.co.jp/img/iw/docs/575/598/html/share.png

 Reader Storeの場合、Androidアプリおよび最新の電子書籍端末「PRS-T2」がTwitter、Facebookへの投稿機能を搭載するほか、PRS-T2ではPCからEvernoteへ保存したWebサイトを閲覧する機能も備える。一方、BookLiveはこうしたソーシャル連携機能はほとんど備えておらず、AndroidアプリのみOS標準のインテント機能でソーシャルメディアへ投稿できる機能を備える程度となっている。

Reader StoreはTwitterとFacebookに対応
BookLiveはAndroidアプリのみレビュー登録機能を搭載。ソーシャル機能は持たない

決済はクレジットカードが基本。BookLiveはキャリア決済も対応

 最後に各種サービスの決済方法を比較。どのサービスもクレジットカードが基本だが、Reader StoreはNET CASHに対応するほか、BookLiveはNTTドコモ、au、ソフトバンクのキャリア決済に加え、WebMoneyとBitCashでポイントを購入して電子書籍の決済に利用することもできる。

【対応決済サービス】
端末BookLive!Reader StoreKindleストア楽天kobo
Windows×××
iPhone/iPad××
Android
電子書籍端末
その他Windows PhonePlayStation VitaKindle Fire
同時利用端末5台5台無制限非公表(無制限)

ラインアップで充実する国内サービス、利便性の高い海外系サービス

 ここまで各サービスの機能や対応端末、サービスの使い勝手を比較してきた。数値だけで見ると取り扱う冊数の多いBookLiveとReader Storeが魅力的ではあるものの、実際の使い勝手では1クリックで購入でき、PCから購入しても好きな端末へ自動でダウンロードできるKindleのほうが上。コレクション機能ではBookLiveに劣るものの、その買いやすさからついついKindleで書籍を購入してしまうことが多い。実際に使えば使うほど、大事なのは書籍数よりも使い勝手だということを実感させられる。

 サービス開始当初の不具合や、書籍数の数ばかりを追求するあまりに批判の多い楽天koboだが、現状はKindleにはやや劣るものの、青空書籍や楽譜だけではない書籍数を着実に伸ばしつつある。また、外部ファイルの対応も幅広く、自炊ユーザーの端末としても魅力的。Reading Lifeのような仕組みも面白く、iOS向けアプリなど環境の広がりを期待したいところだ。

 電子書籍に関しては何度も「電子書籍元年」という言葉で普及が期待されてきたが、Kindleや楽天koboといった海外系サービスの日本展開や対応端末の拡充など、電子書籍の読書環境は急速に整いつつある。eBookJapanも専用タブレット端末の提供を予定しており、電子書籍環境の充実は今後も続きそうだ。

 一方、電子書籍で避けられないのがユーザー体験の変化。他のエンターテインメント系コンテンツの場合、スピーカーやイヤフォンで聴く音楽、ディスプレイで視聴する動画であれば、コンテンツがデジタル化してもユーザー体験に大きな変化はないが、書籍の場合はデジタル化することで「紙」と「ディスプレイ」という大きな変化がどうしても生じてしまう。どれだけ技術が進もうとも紙と同等の携帯性や視認性の高さを電子書籍で維持することは非常に難しいが、これも慣れの問題で解決できる部分もあるだろう。

 個人的な体験ではあるものの、電子書籍に夢中になって電車を乗り過ごしてしまったり、続きが気になって帰り道についつい歩きながら電子書籍を読んでしまったりという経験がある筆者からすると、紙であろうとディスプレイであろうと本を読む楽しさというのは変わらないと感じている。もちろん視認性の高さでは紙の上であることは間違いないが、読書で得られる体験は必ずしも紙である必要もなく、電子書籍の普及が進んでディスプレイで本を読むことが一般化すればこうした課題も解決されていくのではないだろうか。

 複数の書籍をコンパクトに持ち歩くことができ、置き場所も不要とメリットの多い電子書籍だが、紙の書籍と比べて最大の課題は保存性。紙であれば物理的なスペースは必要になるものの購入した書籍は半永久的に残るのに対し、DRMで保護された電子書籍はサービス終了時にどうなるのかがわからない。過去にも楽天の「Raboo」、SCEのPSP向けコミック配信サービスなど終了したサービスが存在するだけにユーザーとしてはどのサービスを選べばいいのかという不安は大きい。

 出版社によるダウンロード制限も大きな課題だ。例えばReader Storeの場合、小学館コミックがダウンロードできるのは購入から5年以内、集英社コミックは1年以内という制限が設けられている。BookLiveの場合小学館コミックは同様の制限があるが集英社コミックには制限がかけられていないため、必ずしも出版社で横並びではないようだが、レンタルサービスならいざ知らず、書籍と同じ価格であるのに制限が存在するというのはユーザーとして正直受け入れがたい。2年に1度は買い換えタイミングが発生するスマートフォンにおいて、再ダウンロードできない仕組みでは書籍を半永久的に持ち続けることが難しくなる。

 端末やサービスの拡充は非常に喜ばしいことである一方で、正しく対価を支払っているユーザーが不利益を被るという現状は納得しがたいところだ。2013年は電子書籍業界の発展とともに、こうした制限も緩和されていくことを望みたい。

(おわり)

甲斐 祐樹