特別企画

生徒の学習用iPad 1000台を一括管理する広尾学園の取り組み

「使い込むほど良さが分かる」エルゴトロン製品がICT環境をバックアップ

 板垣退助らが創立に関わり、長い間、順心女子学園の名称で親しまれた後、2007年に改称し共学化を果たした広尾学園中学・高等学校。教育の現場にスマートデバイスをいち早く大量導入し、成果を上げている。同校の生徒1600人のうちおよそ1000人がiPadを所有し、授業や課外活動、自宅において自然な流れで活用できる環境がすでに整っている。

 そんな同校のiPad活用で重要な鍵を握っているのが、1000台ものiPadを教育利用に適切な状態に保つために用いる、エルゴトロンの「タブレットPC管理カート」だ。同時に48台までのiPadをセットし、一括でシステム管理・アップデートを行える管理カートによって、iPadの安全で効果的な教育利用を実現しているという。

 実際に同校の教育現場においてスマートデバイスはどのように活用され、そこにエルゴトロン製品がどのように関わっているのか、広尾学園でICTを担当する鹿内芳貴先生に話を伺った。

1000台のiPadとエルゴトロン製品を導入した広尾学園中学・高等学校

授業、課外活動、私生活でiPadを広く活用

 中高一貫校である広尾学園では、普通学科である本科コースのほか、医系・理系への進学に特化した医進・サイエンスコース、帰国子女や国外の大学進学に向いたインターナショナルコースの3つのコースが用意されている。

 このうちインターナショナルコースでは、10年前から全生徒を対象にMacBookを導入。その後、2011年に設立した高等学校の医進・サイエンスコースでは、最初からiPadを用いた授業をスタートし、続いて翌2012年には本科コースの生徒にもiPadを導入した。

同校に3カ所設けられているICTラボ。取材当日は機材整理などの真っ最中だった

 「デジタル化が進む社会の状況を、教育の現場にも落とし込みたい。しかし個人のスマートフォンのようにパーソナルなものをそのまま使うのは、(ゲームがインストールされていたりして)教育用途には難しい」(鹿内先生)ことから導入が始まったiPadは、今や広尾学園全体で1000台に及ぶ。

広尾学園中学・高等学校 ICT担当の鹿内芳貴先生

 インストール可能なアプリやアクセスできるWebサイトは、Apple Configuratorを用いて制限するものの、1台1台は生徒の各家庭で購入した個人用のデバイスとして、授業だけでなく、放課後のクラブ活動時や帰宅後の学習用ツールに利用されている。

 「開始当時は、教育現場でのiPadの大量導入は他にほとんど例がなかった」(同)。そのため、「授業でどんな風に使えるのか、研究しながら」、いわばチャレンジング精神で進めていったという広尾学園のICT化。今では授業で使用したスライドデータを教師が授業後に配布したり、課題を生徒にメールで提出させたり、あるいは英語音声をテキスト変換するアプリを応用して発音のトレーニングを行ったりと、多様な場面で活躍している。課題の1つとして自らの英語スピーチを動画撮影し、そのまま外部のスピーチコンテストの応募用素材に流用するといった、デジタルならではの使い方も増えてきているという。

 さらに、取り込んだサウンドを波形表示するアプリや、星座を風景に重ね合わせて表示するAR的なアプリも多く存在することから、iPadは理系用途との相性が良いとも話す。各クラスで任命された"ICT係"がそのクラス専用の情報サイトの運営を担うなど、生徒が情報配信に積極的に関わっていく仕組みも用意している。

授業だけでなく、学校と家庭との連絡など、さまざまな用途で利用されている

大量にあるiPadの管理方法とは

 教育用の1ツールとしてあらゆるシーンでiPadを活用したことにより、クラスや学校全体の連絡事項が伝わりやすくなり、調べたり作成したりしたデータを生徒同士や教師・生徒間でデジタルのままやりとりできるようになるなど、授業外でもさまざまなメリットをもたらした。が、その一方で、学校側では大量のiPadの管理が悩ましいところでもあった。

 前述した通り、1000台のiPadは全て各生徒の家庭で購入した個人用デバイスで、教科書やノートと同じように、常に生徒1人1人が自分で持ち歩き、自己管理する。しかし、iPadの中身はApple Configuratorによって独自に制限を加えることから、初期設定時とOSアップデートなどのタイミングでは、どうしても学校側で一時的に預かり、1台ずつカスタマイズやアップデートを行わなければならない。

 現在のところ、Apple Configuratorで機器管理を行うには、管理用のPCとiPadを直接ケーブル接続する必要がある。広尾学園では教育にふさわしいアプリのみ利用できるようにしており、生徒がApp Storeにアクセスして好きなアプリをインストールすることはできない。Webサイトについても、教育上必要なものを除きアクセスできないよう制限を加えている。これらの設定に加え、OSアップデートの際にもPCと接続することが必須となる。

 iPadが搭載するiOSのアップデートは、ほぼ半年に1回定期的に発生しており、動作の不具合を解消するうえでも、できる限り早期に行っておきたい作業だ。最新版のアップデート提供直後は既存アプリとの相性問題などのトラブルが発生する可能性があるため、動作検証が十分に完了した1つ前のバージョンでアップデートするパターンが多いとのことだが、いずれにしても大量のiPadを1台ずつ接続して作業を行うのは非効率的。そこで同校が導入したのが、エルゴトロンの「タブレットPC管理カート」だった。

96台のiPadを同時並行でアップデート

 「タブレットPC管理カート」は、最大48台のiPadを内部に格納し、MFi認証取得済みのLightingケーブルで接続することで48台全てを同時に充電できるほか、管理用のPCを接続することにより、Apple Configuratorを用いた機器管理やOSアップデートも48台一括で実行できる仕組みを備える、自走・運搬可能なラック型のケースだ。

エルゴトロンの「タブレットPC管理カート」
広尾学園では2台導入しており、計96台を同時にアップデートできる

 広尾学園では、初期のiPad導入時にこの「タブレットPC管理カート」を1台、その後もう1台を追加で設置し、合計で96台分のアップデート作業を同時並行で走らせることを可能にしている。鹿内先生は、「1クラスに40人前後の生徒がいるので、16台×3段、計48台を同時に格納して作業できることは特に重要。内部のケーブルの引き回しが秀逸で、カバーが付いていても収納しやすい構造になっている」と、エルゴトロン製管理カートのメリットを説明する。

 それでも1学年分、生徒200〜300人のiPadのアップデートを行うのに4、5日はかかる、負担の多い作業だ。授業でのiPadの利用タイミングなどを考慮して、時間差でクラスごとのiPadをまとめて預かりつつ作業しているが、アップデートが必要なiPadは取材の間にも続々と運ばれてきており、これらを1台ずつアップデートしなければならないのだとしたら、気の遠くなるような時間がかかることは容易に想像できる。

 タブレットPC管理カートによって「圧倒的に楽になった」と鹿内先生は話す。しかし単純にケーブルを差し込んで、PC上でアップデート操作だけをすれば良いのではない。充電が不足していればOSアップデートが失敗する可能性があるため、あらかじめそのiPadだけ取り除いて別で作業する必要がある。また、iPad自体の動作に問題がないか、不正なアプリがインストールされていないかなど、1台ずつ丁寧にチェックしていく作業はどうしても人力に頼らざるを得ない。

不具合が発生していないかどうかもチェックし、適切な対応を取る

 およそ半年に1回のアップデート作業は、生徒の大切な教育用ツールのメンテナンスという面でも大きな意味をもっている。いくら一括アップデートが可能になり作業効率が改善したとしても、気は抜けないようだ。

使い込むほど良さが分かる、エルゴトロン製品の魅力

 エルゴトロンのタブレットPC管理カートについて、「必要な機能は十分に備え、特に不満はない」と満足そうに語る鹿内先生。最近は、高さをほとんど無段階で調節可能な「LearnFit 調節式スタンディング デスク」も10台導入し、椅子に座っての作業や立ちながらの作業のどちらにも対応できる便利さを実感している。

高さ調節機能により、座っても、立っても利用できる「LearnFit 調節式スタンディング デスク」

 「エルゴトロンの製品はギミックが面白い。長く使っていると、それまでに気付かなかった良さが新たに分かってきたりもする」と絶賛。同校はiPadをはじめ、MacBook、ChromeBook、3Dプリンターなど、ICTに関わる最新のトレンドを教育の現場に次々に取り込んでおり、そのなかで今後もエルゴトロン製品が果たす役割は少なくないだろう。

3Dプリンターを生徒が自由に使えるなど、先端企業に匹敵するような設備が整っている

(日沼 諭史)