【年末企画】
編集部が選ぶ'99年のキーワード
編集部では、インターネット業界の今年1年をよく表わしているキーワードを5つピックアップした。別記事で紹介している「読者が選ぶ'99年の10大ニュース」と共通するトピックスも多く、今年を振り返るにはちょうどよいセレクションとなった。
●ネット告発
東芝ユーザーサポート事件は、インターネット業界のみならず、一般的にも注目度の高い“事件”であった。この事件は、福岡市の男性会社員が東芝製ビデオデッキの修理について問い合わせをしたところ、渉外管理室担当者から暴言を浴びせられたとして抗議のホームページを開設したことから始まった。担当者の電話対応を音声ファイルで公開するという“飛び道具”のインパクトもあり、アクセスは急上昇。テレビや新聞などでも報道され、かなりの注目を集めた。東芝は、福岡地裁にホームページの内容の一部削除を求める仮処分の申し立てを行なっていたが、その後、申し立てを取り下げ、一転して町井副社長が謝罪する形で一旦収まった。
この事件では、インターネットを武器にした一般の個人に大企業が“屈した”点がポイントであったが、それが何をもたらしたのか、結果は出ていない。この事件に触発された個人が簡単に“告発サイト”を開設し、企業を糾弾。一方、企業は自社に対する告発サイトに神経を尖らせるようになった。インターネットの使われ方、企業と個人の関係性、そして報道するメディアのあり方も含め、今年もっとも注目を集めた事件と言える。
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・東芝、抗議ホームページの一部削除求める仮処分申請を取り下げ(7月19日)
●iモード
ヒロスエのCMでおなじみのNTTドコモの“iモード”は、携帯電話単体でメールやWebサイトなどを見ることができるサービス。'99年2月のスタートからわずか2カ月で加入台数が12万台を突破、10月には200万台を超えるほどの人気ぶりだ。モバイルバンキングや旅行のチケット予約といったiモードの代表的サービスのほか、個人ユーザーでも比較的簡単にコンテンツが作れることから、iモード向けのメールマガジンやWebサイトなども続々と登場している。
また、iモードとグループウェアを連携したサービスや、一般のメールアカウントのメールをiモードで受け取れるサービスなどもあり、最近ではビジネスシーンでの利用も増えてきている。この12月に、カラー液晶を搭載した新端末、502iシリーズ1機種が発売されたが、これを筆頭にカラー対応の機種やJavaを搭載した端末など、来年はさらに高機能な端末が続々と登場すると思われる。
一方、iモードに対抗するサービスとしては、DDIセルラーグループ、日本移動通信、ツーカーセルラーらが、WAPに準拠した“EZweb/Ezaccess”を開始している。現在のところはiモードが優勢だが、このような携帯電話向けインターネットサービスは、非PCユーザーも取り込みながら、ネット利用の新しいスタイルを確立しつつある。
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・NTTドコモが「iモード」の詳細発表、発表会にはヒロスエも登場(1月25日)
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・特集 スーパーデジタルcdmaOneとWAPの実力とは?(4月30日)
●定額制
日本のインターネットユーザーなら無関心ではいられないのが“定額制”の通信サービスである。実際、今年はNTT地域会社の定額制IP接続サービスや東京めたりっく通信などのADSLサービス、スピードネットの無線による高速ネット接続など、定額制料金を売り物とする一般ユーザー向けサービスの発表が相次ぎ、大きな話題を呼んだ。これらはみな、常時接続の普及を妨げる要因となっていたアクセスラインの料金の問題を解決してくれるということで、ユーザーの期待は大きい。
ただし、IP接続サービスとADSLサービスは現在、一部のエリアで試験サービスに入ったばかり。一方、スピードネットもサービス開始は2000年の夏頃としており、本格的な定額制サービスが実現するのはまだ先の話だ。とはいえ、'99年は、一般ユーザーでも利用できる常時接続サービスの実現へ向け、アクセスラインの定額制への動きが大きく前進した年だったことは間違いない。
■関連記事
・ネット接続、料金定額制の実現を~郵政省の懇談会が報告書(6月23日)
・ソフトバンク、東京電力ら3社、定額制ネット接続の合弁会社(8月11日)
・NTTの定額制「IP接続サービス」、月額料金は8,000円(10月18日)
・東京めたりっく通信、ADSLによる月額5,500円の常時接続サービス(10月18日)
・NTT、ADSLによる定額制アクセスの試験サービス(12月9日)
●オンライントレード
金融業界の今年最大かつ待望のイベント、10月1日の売買委託手数料の完全自由化をきっかけに、インターネットを利用した証券取引“オンライントレード”が注目を集めた。
時間や場所に関係なく、正確で迅速な取引が簡単に行なえるインターネットは、まさに証券取引にはうってつけの仕組みだったといえる。オンライン専業の証券会社が相次いで設立されたほか、異業種からの参入もあった。
とにかく、注目を集めたのが“手数料”だが、実際には手数料競争は10月1日までに一巡してしまった感が強い。今ではほとんどの証券会社が口をそろえて「リーズナブルな手数料体系を設定し、それに見合った質の高い情報とシステムを提供する」という。よって、まったく情報提供を行なわずに、取引業務のみを受け付ける“ディープディスカウンター”の出現は実質的になかったといってよいだろう。
オンライントレードの口座数は、10月に急増し、その後も反動で伸びが落ちることなく安定的に増加している。取引を行なう顧客は、さすがに過去に証券取引を行なったことのある人が中心だが、今まで一度も証券投資の経験がない向きの参加も予想以上に多かったようだ。オンライントレードの仕組みができたことが、証券投資の呼び水になったことは確かだろう。
来年からは、手数料よりも“情報”を核としたサービスがポイントになると見られている。株価、チャート、企業情報といった基本的な情報サービスは、ほぼすべての証券会社が提供している。どういった差別化ができるかが焦点になろう。
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・特集 オンライントレード基礎講座(10月12日)
・オンライントレード、情報提供サイトや講座など周辺サービスも相次ぐ(11月10日)
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・日本証券業協会、証券会社のインターネット取引状況を調査(12月15日)
●オークション
'99年後半、オンラインでもっとも盛り上がったサービスが“オークション”だ。
オークションのシステム自体は以前から知られていたが、プレミアものや美術品がメインで、一般人は気軽に参加できるとは言い難いものだった。これに対し、インターネットオークションでは、日用品や趣味の品々が中心となってフリーマーケット感覚で利用できること、そして自分の結果や周りの状況がすぐわかり、リアルタイムでの駆け引きが楽しめることから多くの人気を集めるようになった。
日本ではMY-TRADEを皮切りに、楽天オークションやオンセール、そしてYahoo!オークションなど、大規模オークションサイトの増加にともなって人気が上昇。現在Yahoo!オークションでは12万点の品物が出品されている。2000年には、リクルートとSo-netの提携で注目されるBiddersの本格オープン、2月にも開始予定のeBay日本版公開などが控えており、さらなる盛り上がりが予想される。
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・オークションサイト「オンセール」、6月10日一般向けオークション開始(5月18日)
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・Yahoo! JAPAN、誰でも出品できる「Yahoo!オークション」開始(9月30日)
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(1999/12/27)
[Reported by INTERNET Watch]
ウォッチ編集部INTERNET Watch担当internet-watch-info@impress.co.jp