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ハーバード大とGartner、著作権とデジタルメディアに関する論文


 米ハーバード大Berkman Center for Internet & Societyと米Gartnerは、Napster事件以降のデジタルメディアと著作権に関する論文を発表した。論文では、著作権法の沿革と国際的な権利行使の問題点、ビジネスモデルの変革、判例、現行法および改正法の提案などがまとめられている。

 音楽、映像などに関連するデジタル技術は、産業界で革命を起こし、多くの電子娯楽産業、電子メディアなどが発生し発展してきた。この発展にともない、著作権者、技術開発会社と消費者との間の関係は複雑で整理しにくいものになり、これら関係者の間は、必ずしもバランスがとれた関係とは言えない状況が続いている。これらの利害バランスがとれるようになれば、著作権市場は活性化し経済にも好影響を与える、と述べている。特に、著作権ビジネスにおいては、著作権の意識が浸透すれば、製品開発に加速がかかり、市場が拡大する。しかし残念ながら、現状はそうなってはいないと指摘する。

 ビジネスモデルとして例示されたのは、Napster後に代表される音楽や映像、テレビ、出版などの分野におけるネットワークビジネスだ。従来の、CDやDVDなどの媒体型ビジネスから、ネットワーク型・ダウンロード型・ストリーミング型ビジネスへと変容している現状が紹介されている。ユーザーの50%以上はすでにCDライターを持っており、過半数のパソコン所持者はいつでもCDメディアを複製可能な状況にある。論文では、著作権に関連する事項として、消費、複製、共有などの種々の形態についての法的問題点が指摘された。

 判例として最初に紹介されているのが、ソニーのβマックス事件だ。この事件は、ソニーがビデオ録画機器を販売したところ、ユーザーが、Universal City Studios(原告、被上告人)の著作権に係る製品を複製。ユーザーの複製行為について機器発売元のソニーが責任を持つべきとして訴えたものだ。最高裁は、上告審でソニーが販売するビデオ録画機器は、その主要な目的には著作権侵害用途は入っておらず、たとえ、ユーザーが著作権侵害に相当する行為を行なったとしても、機器を販売しただけのソニーには責任がないと判示した。この判例は、現在の著作権法を考える上で基本となるものだが、論文では、新技術に関してはケースごとに詳細かつ慎重な分析を行なう必要があるとも指摘する。

 論文は、政府がもっと積極的かつ現実味のある著作権保護対策を打ち出すべきだ、という警告に近い提言で締めくくられている。


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URL
  ニュースリリース(英文)
  http://cyber.law.harvard.edu/home/2003-05


( Gana Hiyoshi )
2003/08/07 15:54

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