電気通信事業紛争処理委員会は、ソフトバンクBBが総務大臣に対してNTT西日本との協議再開命令を行なうよう申し立てていた件について、「協議再開を命ずることが相当」との答申を行なった。ただし、協議の主体内容となる自前工事については、当事者間で調整を行なうべきとしている。
ソフトバンクBBでは、Yahoo! BB工事の工期短縮と費用削減を目的として、NTT局舎内の工事を自前で行なう旨の要望をNTT西日本に提出しており、NTT西日本はこの請求を拒否していた。これを受けてソフトバンクBBは総務大臣に対して協議再開命令を行なうよう申し立てを行ない、総務大臣はNTT西日本を当事者とした聴聞を実施、その後電気通信事業紛争処理委員会に対して諮問を行なっていた。
同委員会では、電気通信事業法38条の「電気通信設備の接続」とは、同法の沿革からも“技術的に接続が可能なすべての箇所における接続を意味することが明らか”であり、MDF内の設備であってもそれを拒否することはできないとしてNTT西日本の主張を否定。
また、ソフトバンクBBが自前工事を求めている点については、「自前工事を期待していることはソフトバンクBBの命令申立書からも認められる」とした上で、申立人の主観的期待を持って接続請求を対象外とすることはできないとした。
その他、「接続協議を行なう」ことと「接続協定の内容がいかなるものか」は別個の問題である、ジャンパ線をどの事業者が設置したかが明らかであれば、責任分界は可能であるとの理由から、協議再開命令を行なうべきとの答申を下している。
「協議再開」と「自前工事」は別問題
今回の答申はあくまでNTT西日本側が接続を拒否できない事由を明らかとし、協議再開命令を行なうべきとしたものであって、ソフトバンクBB側の自前工事を認めたものではない。しかしながら両社の本質的な対立部分はこの自前工事にあり、本来は協議再開と別個の問題が、両者間で不可分の問題として捉えられていると委員会は考える。そのため自前工事の是非についても委員会の考えを合わせて示している。
ソフトバンクBBが新たな接続点の追加を請求し、そのジャンパ線を自前で用意するという点では、その費用はすべてソフトバンクBBが負担し、責任分界点もNTT西日本側のジャンパ線の接続点であることも明らかとの認識を委員会は示した。しかし、NTT西日本の設備に影響を与える行為である以上、ジャンパ敷設や工事をNTT西日本に優越して行なうことはできないとしている。
接続のための工事内容は「NTT西日本のジャンパ線を切断」「ソフトバンクBBのジャンパ線を敷設、接続」という2つの工程が必要となる。委員会では、前者はNTT西日本の了解なく工事を実施できないことは当然ながら、後者についても多数のジャンパ線が混在する狭いMDF設備内で、さらに他の工事と競合する場合も踏まえると、他のジャンパ線や工事との接触が予想されるため、工事の内容については両社が緊密に協議すべきとの判断を示した。
ソフトバンクBBは「歓迎」、NTT西日本は「遺憾」
答申の発表を受けて、ソフトバンクBBは「申し立てが正当という答申が出されたことをを歓迎する」とコメント。対するNTT西日本は「(答申は)遺憾である」との姿勢を示した。NTT西日本では、今後の対応は答申および総務大臣からの命令を十分に検討した上で進めていく方針。また、ソフトバンクBBでは自前工事の詳細について、両社で十分な協議を進めていくとしている。
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NTT西日本が公開したMDF内部の様子
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関連情報
■URL
総務省 報道発表資料
http://www.soumu.go.jp/s-news/2003/030820_3.html
ソフトバンクBBのコメント
http://www.softbankbb.co.jp/company/topics/t_030820.html
関連記事:NTT西日本、Yahoo! BBのADSL自前工事へ反論
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0618/nttw.htm
( 甲斐祐樹 )
2003/08/20 20:03
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