NTTデータ、丸紅、マルエツの3社は19日、食品流通分野における無線ICタグ(RFID)の実証実験を24日から開始すると発表した。商品に貼り付けたRFIDによって、メーカーの出荷確認から物流センターにおける在庫管理、店舗での賞味期限管理やレジ精算まで、実際の物流過程をトレースするのが特徴。まずは11月23日まで実験を行なうことが決まっており、実フィールドでの実験を通じてRFID実用化への課題を洗い出す。
実験店舗となるのは、東京都江東区にあるスーパー・マルエツ潮見店。食料品メーカーや卸業者24社を含む全34社が参加し、みかん、キャベツ、牛肉、牛乳、ヨーグルトなどの生鮮食品と加工食品約90商品に50,000枚のタグが貼り付けられる。一方、メーカーや流通センターには、ノートパソコンに接続するRFIDリーダを用意。読み取ったタグ情報を専用のネットワーク経由でセンターサーバーに集約することで、どの商品がどこを流通しているかトレースできるようにする。また、店舗内には液晶ディスプレイ付きのRFIDリーダ4台を設置。消費者が商品を置くことで、商品の詳細情報や生産者からのメッセージなどを閲覧できるようにする。
実験で利用されるタグは、13.56MHzを使う電磁誘導方式の「my-d」と「I-Code SLI」。サイズは85.6×54mmのクレジットカード大のものから、32×16mmの小型ラベルまで3種類が用意される。表面には「情報満載、情報シールキャンペーン」「このシール部分を読取台に載せて下さい」などの説明が印刷されている。
さらに実験では、100名の消費者モニターも募集し、RFIDカードを配布する。モニターがこれを所持することで、RFIDリーダで商品の情報を閲覧する際に個々の消費者を識別。あらかじめ設定しておいた情報ページが最初に表示されるようにする。なお、タグ付き商品の購入やリーダによる情報閲覧は、モニター以外の一般客でも可能だ。
13.56MHz以外に、UHF帯の電波を使うタグについても、この周波数を扱う免許を取得できれば11月より実験に取りかかる予定だ。UHF帯ではスキャンの距離を飛躍的に延ばすことができるため、特に流通センターなどで効果があるという。NTTデータビジネス開発事業本部CRM/コンタクトセンタの吉川明夫BU長は、「13.65MHzではバーコードをスキャンするのとあまり変わりはない。UHF帯が使えると本当のイノベーションが期待できる」としている。
ショッピングカート内の商品を一括してスキャンできるなどのメリットがうたわれているレジ精算については、まだ技術的課題が多いため、モニターや社員による限定的な実験を10月中旬に実施するに止まるという。また、RFIDで課題となっているプライバシーの問題についても、モニターにアンケートを実施するなどして消費者の意識を把握したいとしている。
マルエツ商品本部物流部の高橋晋部長は、今回の実験について、「実験で止めてしまうものではなく、来年には実用化につなげるための実験」として、RFIDの導入に積極的な姿勢を見せている。ただし、同社では1,000社以上の商品を扱っているため、流通管理やレジを一気にバーコードからRFIDに移行することは不可能であり、これらを併用するPOSシステムの開発など、数段階の移行ステップが必要だと指摘した。
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3種類のタグのうち、これは50×50mmの中サイズのもの
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大根をリーダに置いて、生産者情報を表示しているところ
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関連情報
■URL
ニュースリリース
http://www.nttdata.co.jp/release/2003/091900.html
マルエツ
http://www.maruetsu.co.jp/
関連記事:マルエツら3社、食品流通分野における無線ICタグ
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0424/ictag.htm
関連記事:大根に無線ICタグが付けられるのは2007年以降~NTTデータが市場予測
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0613/rfid.htm
( 永沢 茂 )
2003/09/19 21:40
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