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ソフトバンクBB、ITU-TにおいてADSL上り帯域拡張方式の標準化に反対を表明


 ITU-TにおいてADSLの上り帯域拡張方式として標準化作業が進められている「G.992.3 AnnexM」並びに「G.992.5 AnnexM」の両方式の標準化に対し、ソフトバンクBBが反対の意見書をITU-Tに提出していることが明らかになった。これは16日に開かれた、「総務省・情報通信審議会 ITU-T部会 伝達網・品質委員会」の席上で明らかになったもの。

 今回問題になっている両方式は、今年10月に開催されたITU-T SG15会合において標準化に向けた基本合意(コンセント)が行なわれ、現在スペルミスや明らかな記述の間違いなどの修正を受け付ける「AAP(Alternative Approval Process)」と呼ばれる手続きの期間に入っている。

 このAAP手続きにおける意見募集に際し、ソフトバンクBBは「両方式が標準化され実際にサービスで使われると、自社並びに他社のADSLサービスに対し悪影響を及ぼすため、もう少し議論が必要」といった内容の意見書を提出し、両方式の標準化そのものに反対を表明したという。

 同会合に出席したイー・アクセスの藤田敬史氏によれば、10月のSG15会合において両方式の標準化が議論された際、参加者が合意する直前になってソフトバンクBBから上記の意見書と同様の趣旨の反対意見が出されたものの、議長が「他のADSL回線への干渉については、各国が定めるスペクトル管理基準に従ってそれぞれの国内で議論すべき問題であり、ITU-Tで議論すべき内容ではない」、「明らかに技術的な問題点がない場合はこの会合で標準化に向けた合意を取るべき」との理由で同社の意見を却下し、標準化への基本合意が承認されたという経緯があるとのこと。

 それにも関わらず今回、ソフトバンクBBがほぼ同内容の意見を再度提出して標準化に反対を表明したことから、同会合の主査を務める三谷政昭氏(東京電機大学教授)は「AAPでは建設的なコメントが期待されているはずだが、この意見のどこが建設的なのか説明して欲しい」と苦言を呈したほか、事務局や他の参加者からも「AAPプロセスのガイドラインをもう1度確認していただきたい」、「提案するにしても、もっと工夫した形にしてもらわないと、日本として困る」といった意見が相次いだ。

 これに対しソフトバンクBBは、当初出席予定だった同社の筒井多圭志CTOが急遽都合で欠席したことから「詳しいことを説明できる人間が不在のため、この意見を持ち帰り後日回答させていただきたい」と回答するに止まった。

 ソフトバンクBBは、今年2月にもG.992.1 AnnexC方式の改訂などを巡り、今回と同様に1度会合において基本合意が行なわれた内容について、AAP手続きにおいて反対を表明し、他の参加者から「標準化作業を遅らせる行為であり、ルール違反」との指摘を受け、後に意見を撤回した経緯がある。

 同社は一方で、今回標準化に反対した方式に似たGlobeSpanVirataの「EU-G方式」を利用した上り最大3Mbpsのサービスの予約受付を既に開始していることから、今後TTCのスペクトル管理SWGなどにおける関係者の反発は避けられないと見られ、ADSLの上り帯域拡張を巡る混乱はさらに拡大しそうだ。


関連情報

URL
  ITU-T
  http://www.itu.int/ITU-T/
  関連記事:ソフトバンクBB、ITU-TにAnnexC廃止を提案へ
  http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0120/itu.htm

TTCスペクトル管理SWG、上り帯域拡大方式への干渉を巡り会議が紛糾(2003/11/21)


( 松林庵洋風 )
2003/12/16 19:01

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