東京地方裁判所は17日、ファイル交換サービス「ファイルローグ」を運営していた日本エム・エム・オー(日本MMO)と同社代表取締役の松田道人氏に対して、総額約6,689万円の損害賠償金の支払いを命ずる判決を下した。
今回の訴訟は、2002年2月に日本音楽著作権協会(JASRAC)と、日本レコード協会(RIAJ)の会員19社がそれぞれ東京地裁に起こしていたもので、市販の音楽CDから作成されたMP3ファイルの送受信停止と、著作権侵害による損害賠償を求めていた。
これに対して東京地裁は、同年4月に送受信停止を命ずる仮処分を下しており、日本MMOも同月中にサービスを停止している。さらに、東京地裁は2003年1月に中間判決を出し、日本MMOが著作権侵害の主体であり、同社および松田氏に損害賠償責任があるとの判断を示していた。今回出された終局判決では、中間判決の判断を再度認めるとともに、具体的な損害賠償額が示された。JASRAC側が3,000万円、RIAJ側が約3,689万円となる。
当初JASRACが請求していた損害賠償額は、2001年11月のファイルローグサービス開始から2002年2月までの4カ月分について2億1,433万円、さらに2002年3月以降もサービスを停止しなかった場合について月額3,969万円。RIAJでは、同じく1億5,100万円と月額2,805万円だった。中間判決時点で総賠償額は4億円を超えるとも言われていたことを考えると、終局判決で命じられた額はかなり小さい額となる。
判決文によれば、サービスが停止した2002年4月16日までにファイルローグにアップロード(送信可能化)されていたMP3ファイルに対して、JASRACがネットワーク音楽配信に課している規定の楽曲使用料を形式的に適用すると、その使用料は2億7,932万8,000円になるという。ただし、この使用料規定はアップロードされたファイルが月間90.9回ダウンロードされることを想定しているものであり、当時のインターネット環境を考えると、すべてのファイルに対してそれだけのダウンロードがあったと考えるのは「あまりにも過大」だとして、おおむね10分の1にあたる3,000万円を楽曲使用料に相当する損害額として認めるに至った。JASRACでは、これは最低限の額であり、ブロードバンドが普及した現在では、同じ行為をするとその10倍の損害賠償が課せられることも十分にあり得るとしている。
一方、RIAJの損害賠償額については、「1ファイルあたりの月額使用料が少なくとも2,000円を下回ることはない」という原告の主張が認められ、それにファイルローグでアップロードされていたファイル数を乗じた約3,689万円という額なった。ただし、RIAJによれば、アップロードされていたファイル数の推計方法がRIAJと判決では異なっているとしており、今後、判決に対する評価を行なうとしている。RIAJではまた、月額2,000円という設定はあくまでも控えめな数字であり、今後、同様の訴訟があれば、より多額になることも当然考えられると強調している。
|
|
JASRACの加藤衛常務理事(左)と、同社訴訟代理人の田中豊弁護士(右)
|
RIAJの生野秀年常務理事(右)と、同社訴訟代理人の前田哲男弁護士(左)
|
17日に東京都内で開かれた記者会見で、JASRACの加藤衛常務理事は、「(楽曲使用料の)算定方法が認められたことは、今後の法廷闘争で追い風になる。若い人たちにネットワーク上のモラルやルールについて考えてもらう契機でもある」とコメント。また、ファイル交換ソフトによる著作権侵害行為が減らない状況に対して、ユーザーを解析する技術の問題はあるとはしながらも、個人を対象とした訴訟も「やらざるを得ない」との考えを示した。
一方、RIAJの生野秀年常務理事は、「センターサーバー型(のファイル交換サービス)は、米国では管理者をクローズさせるところまで追い込んだ。今回の判決が日本でも区切りとなる」とし、「今後は、個人ユーザーへの対策抜きには考えられない」とコメントした。
関連情報
■URL
JASRACのニュースリリース
http://www.jasrac.or.jp/release/03/12_1.html
RIAJのニュースリリース
http://www.riaj.or.jp/release/pr031217.html
ファイルローグ
http://www.filerogue.net/
関連記事:「ファイルローグ」裁判、日本MMOが著作権侵害の主体と認定
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0129/fr.htm
( 永沢 茂 )
2003/12/17 20:32
- ページの先頭へ-
|