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オープニングセレモニーにおいて、実際にスーパーの店頭でデモを行なう坂村健教授。左手に持っているのがユビキタスコミュニケータ
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T-Engineフォーラムは8日、無線ICタグ(RFID)を用いた青果物のトレーサビリティシステムの店舗実験を開始した。ユビキタスIDを格納したRFID「ucode」を約3万個の野菜に貼り付け、これをスーパー店頭の端末などで読みとることで消費者が生産履歴を確認できるようにしている。
店舗実験がスタートしたのは、横浜市金沢区にある京急ショッピングセンターけいきゅう能見台店。野菜売場の一画に専用の陳列コーナーが設けられ、ucode付きのキャベツや大根、ブロッコリーなどが並べられた。その中央にはキオスク端末が置かれ、リーダー部分にucodeをかざすことで生産地や生産者名、出荷日のほか、農薬などの使用履歴をモニター画面に表示できる。キオスク端末のほか、携帯型端末「ユビキタスコミュニケータ(UC)」も用意している。
ucodeを添付する野菜は、JAよこすか葉山の組合員農家で生産したもの。生産現場では2003年9月から先行して実験が行なわれており、肥料や農薬のほか、畑にもucodeを導入。肥料や農薬を使用する際には、現場でそれらの容器と畑のucodeをUCで読みとり、どの畑でいつ、何回使用したのかという情報を収集していたという。収穫した野菜はucode付きの箱に詰めて出荷され、最終的に店舗で1個ずつucodeが付けられるが、流通の各過程でucodeを読みとり、生産から店頭に至るまでの履歴がすべてユビキタスIDセンターのサーバーに送信・蓄積される。店頭のキオスク端末やUCはネットワーク経由でセンターサーバーに接続し、その野菜の履歴情報を引き出す仕組みだ。LAN環境であれば5秒以内(通常2~3秒)で情報を取得・表示するが、今回の実験では接続回線にPHSが使われており、表示までが10秒以内とやや遅くなっていた。
実験で使われるRFIDのチップはユビキタスIDセンターの認定製品で、日立製作所、凸版印刷、ルネサステクノロジの3社がそれぞれ製造している複数の製品を採用している。915MHzと2.45GHzの周波数に対応しているが、店頭で使われているのは2.45GHzで、リーダーから5cm程度の距離でIDを読みとることができる。認定チップは現在のところ、安いもので1個10円、セキュリティを強化したもので数十円から100円程度となるが、今回野菜に付けられているのは単価が10円のものだという。チップ本体は0.4mm角の小さなものだが、ucodeの示すロゴなどが印刷された15mm×110mmのシールで野菜に貼り付けられる。
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実験期間中、約1カ月にわたり継続して販売されるucode付き野菜は大根とキャベツの2種類
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ucode付きのモノには、ユビキタスIDセンターのセキュリティポリシーにより、黄色いロゴが表示される
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店舗実験はけいきゅう能見台店のほか、13日から京急ストア平和島店(東京都大田区)、14日から京急ストア久里浜店(神奈川県横須賀市)でもスタートし、3店舗で2月6日まで続けられる。これまでも国内外で同様の実証実験は行なわれていたが、流通過程を効率化するためのものが多かったという。これに対して今回の実験では、畑や肥料などもucodeで管理するようになっており、生産現場から流通までをカバーしたRFIDの実証実験は「おそらく世界ではじめて」(T-Engineフォーラム代表/YRPユビキタスネットワーキング研究所長の坂村健東京大学教授)だとしている。
坂村教授によれば、農薬などの使用履歴は生産者が必ず記録しているものであり、これらのデータを消費者に開示する価値があると世の中で判断されれば、2、3年後にも青果物のトレーサビリティシステムが実用化されるのではないかと見ている。
関連情報
■URL
T-Engineフォーラム
http://www.t-engine.org/japanese.html
ニュースリリース(PDF)
http://www.t-engine.org/news/pdf/TEP040106.pdf
関連記事:京急ストアなどでICタグの実証実験~野菜の生産履歴などを確認
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/01/06/1667.html
関連記事:ユビキタスIDセンター、日立ら3社の標準タグ準拠製品を認定
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0623/uid.htm
( 永沢 茂 )
2004/01/08 17:53
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