公正取引委員会は、ブロードバンドサービス等の競争実態に関する調査結果を公表した。本調査ではADSLや光ファイバといったブロードバンドのシェアや実態のほか、公取委による競争政策上の考えが示されている。
本調査は2003年8月から12月にかけて実施され、704社を対象とした事業者アンケート、3,783人を対象としたユーザーアンケート、25社を対象としたヒアリング調査が行なわれた。公取委ではブロードバンドサービスを巡る急速な競争状況の中、今後の電気通信事業における競争政策の的確な運営に役立てるため本調査を実施したとしている。
ADSL分野では、2004年1月末現在のデータでソフトバンクBBとNTT東西がそれぞれ約36%と拮抗した状況にあり、イー・アクセスやアッカ・ネットワークスを含む大手5社で約90%以上のシェアを占めているという。
また、ADSL利用者の多くはパソコンの再設定、メールアドレス変更の再通知といった手間が障害となるため、事業者の乗り換えを検討していないという意見が多く寄せられた。これらの調査結果を踏まえて公取委では、ADSL分野においてNTT東西およびソフトバンクBBの寡占化傾向があると考えられるため、市場の状況について引き続き監視を行なうほか、競争を制限する行為には独占禁止法による厳正な対応が必要だとしている。
光ファイバ分野では、2003年12月末現在でNTT東西が73.2%と圧倒的なシェアを占めている。光ファイバサービスの形態は、NTT東西や有線ブロードネットワークスのように自ら光ファイバ網を構築する事業者と、これらから光ファイバ設備を借りてサービスを提供する事業者の2種類に大別される。
光ファイバ設備を借り受ける際の利用環境については、NTT東西の設備は世帯カバー率やコロケーション設備の接続の容易さなどから利便性が高く、集合住宅向けの光ファイバも接続料水準は必ずしも高くないといった意見が多く寄せられた。電力会社の光ファイバは都市の一部でしか芯線貸しサービスを提供していない、変電所にコロケーションするための新たな設備が必要なため利用しにくいとしている。
公取委ではNTT東西の光ファイバ設備開放義務について「ユーザーの事実上の囲い込みが生じる可能性があるため、見直しの必要は認められない」とした上で、「開放義務の是非に関する検討は慎重な対応が必要」とコメント。一方で電力会社の光ファイバ設備開放については「NTT東西の設備ほど事業者の依存度は高くないため、開放義務の必要性も高くない」とした。ただし、今後電力会社の光ファイバ設備がNTT東西と同等の利便性を有した場合には、規制を検討する必要があるとしている。
CATV分野では、他のブロードバンドサービスからの競争圧力はあるものの、ほとんどの場合は1地域に1つのCATVインターネット事業者しか存在しないため、同業者間の競争は活発でないと指摘。これが事業者間の地域分割協定といった競争制限行為に基づく場合は独占禁止法による対応が必要だとした。
FWAや公衆無線LANは、ブロードバンドサービスの補完的な役割との位置付けであり、競争はさほど活発でないという。ただし、FWAや公衆無線LANの提供にあたって周波数帯域が不足していることが事業展開の障害となっているという事業者の意見も多いため、今後は周波数割当ての抜本的な見直しについて検討が必要だとしている。
IP電話分野ではソフトバンクBBの「BBフォン」が約78%を占めており、IP電話利用者の多くがユーザー数の多さを理由としてBBフォンを選択しているという。公取委では利便性の面からIP電話の相互接続が望ましいとした一方で、NTT東西が個人向けIP電話サービスに参入する可能性があるなど、競争状況の変化が見込まれることから、ソフトバンクBBのIP電話についてただちに開放義務などの規制を課すといった対応は望ましくないとしている。
関連情報
■URL
ブロードバンドサービス等の競争実態に関する調査について(PDF)
http://www2.jftc.go.jp/pressrelease/04.april/040427.pdf
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( 甲斐祐樹 )
2004/04/27 21:02
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