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ソフトバンクの2003年度決算、ブロードバンドで4,000億円の“生涯価値”

~第4四半期の顧客獲得費は情報漏洩事件の影響も

 ソフトバンクは、2003年度の決算を発表した。売上高は5,173億円と前年同期の4,068億円と比較して1,105億円の増加。営業損益は前年同期より371億円改善し548億円の赤字、経常損益も前年同期より379億円改善して、719億円の赤字に止まった。一方、当期損益は1,070億円の赤字となり、前年同期の赤字999億円からさらに赤字幅を拡大している。

 また、国内株式市場の情勢が上向いてきたことから、ソフトバンクが保有する上場株式の時価総額は順調に推移。2003年12月時点では1兆5,215億円だった時価総額が、2004年5月7日には2兆3,810億円となった。ソフトバンクによれば、現金や現金同等物などの手元資金は4,371億円に上るとしている。


ブロードバンド・インフラ事業がグループの中核事業に

孫正義代表取締役社長
 売上高の内訳では、Yahoo! BBに関わる「ブロードバンド・インフラ事業」が24.9%を占め、「グループの中核事業」(孫正義代表取締役社長)となった。次いで、インターネットカルチャー事業(12.3%)、イーファイナンス事業(7.3%)と続いている。

 次いで、ソフトバンクBBの状況に触れ、4月末時点で約407万6,000加入を達成したことを明らかにした。また、4月末時点のBBフォンの加入者が約384万7,000回線、無線LANパックの加入者が約69万4,000回線に達したことも公開した。課金対象となるユーザー数は、2003年第4四半期で約330万となった。

 2003年第4四半期のARPU(顧客当たり平均収入)は4,000円を超えた。また、課金者あたりの変動利益(ARPUからISP料金を引いた数値)も2,350円に達した。孫社長によれば、「最近は、45M ADSLサービスとBBフォン、無線LANパックをまとめて申し込む“45Mトリオ”が最も売れ線」だという。45Mトリオは粗利が高いため、「新規ユーザーの変動利益は、2001年5月では約750円だったが、2004年3月には約2,800円となった」としている。

 45Mトリオと8M ADSLサービス単体と比較すると、45MトリオでのARPUが5,200円で変動利益が3,500円、8Mサービス単体ではARPUが2,600円で変動利益が1,400円。解約率などを考慮に入れた「生涯変動利益」では、45Mトリオが30万8,000円、8Mサービス単体では12万3,000円となり、「一時的に顧客獲得費がかさむとしても、その後の利益に貢献するのは45Mトリオ。積極的に獲得していく」と述べた。


軽微ながら顧客情報漏洩事件も影響した

 なお、第4四半期の顧客獲得費は第3四半期に比べ50億円程度増加して約300億円程度。この増加に関して、孫社長は「顧客獲得費の拡大自体は当初の予定通りだったが、コストの割には加入者数が増えなかった」とコメント。「この唯一最大の要因は、顧客情報の漏洩事件」と分析している。

 通常は1%程度の解約率が2004年3月には1.89%、4月には1.57%と上昇している点にも注目。2003年同期と比べて高い水準にあるため、「通常、3~4月は引っ越しという季節要因があり、他の月に比べても解約率が高くなる傾向にある」と前置きした上で、「季節要因に加え、軽微ながら情報流出の影響があった」と述べた。なお、解約率の平均値は2001年度が1.90%、2002年度が1.07%、2003年度が1.14%となっている。

 Yahoo! BBユーザーの獲得目標については、「目標である600万に向け、引き続き積極的に顧客獲得活動を実施する。また、連結営業損益の月次黒字化も本年度内に目指したい」としている。


ブロードバンドのビジネスモデルを確信~4,000億円の“生涯価値”

 孫社長によれば、ソフトバンクによるブロードバンド事業は、“面をとって深堀する”ものだという。つまり、当初はユーザー数(面)の拡大を目指し、その後、ADSLの高速化やBBフォン、無線LANパックなどの付加価値メニューを追加し、利益を拡大するという手法だ。

 こうして展開してきたブロードバンド事業のビジネスモデルについて、孫社長はユーザー数や月ごとの変動利益、残存月数、顧客獲得費などの指数を元に「ブロードバンド事業生涯価値」を算出。2003年度には4,000億円の生涯価値を達成したという。

 「サービス開始からわずか2年半で企業価値を4,000億円も高めた会社は世界にも稀だ」と自賛。「ブロードバンド事業は成功したと認識している」という。


2005年度は3,000名の新卒社員、1,500名の中途採用社員

 続けて孫社長は「ビジネスモデルの検証は終了し、あとは前進あるのみだ」と決意を述べた。そのために2005年度は3,000名の新卒社員を採用し、1,500名の中途採用を行なう。また、正社員向けの教育パッケージやキャリアパスなどの整備を進めているとしている。

 「新卒社員は派遣社員や業務委託と比べると、むしろコストは安価。短期で離職するアルバイトなどに比べてロイヤリティも高く、教育効果も期待できる。実際にテレマーケティングで正社員に顧客獲得をさせたところ、アルバイトに比べ4倍の成果を残した」とコメント。「総合的にはコストニュートラル」という認識を示した。


個人向けFTTHへの参入報道についてはノーコメント

 参入予定を報道されている個人向けFTTHについては、「噂話にはコメントできない」「今は話せる段階ではない」と一蹴。ただし、「最新のテクノロジーは常に研究している。FTTHが主流になると判断した場合にいつでも参入できるように準備は怠っていない」という。「いろいろな戦い方があるが、中途半端に攻めるのではなく、できるだけ相手を引きつけて一斉射撃を行ないたい」と方針の一端を示した。

 また、「ADSLの時も規制や参入障壁と戦ったが、FTTHに関してもすでに水面下で動きはあった」ことを明らかにした。


関連情報

URL
  ソフトバンク
  http://www.softbank.co.jp/
  ソフトバンク決算報告
  http://www.softbank.co.jp/ir/

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( 鷹木 創 )
2004/05/10 21:48

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