インターネットイニシアティブ(IIJ)は14日、2003年度第4四半期および通期の決算を発表した。第3四半期で2年ぶりに達成した黒字を第4四半期も維持したものの、通期では、上半期の営業損失を埋めるまでには至らなかった。
● 売っても売っても売上が伸びない接続サービスをSI事業がカバー
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IIJの鈴木幸一代表取締役社長
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第3四半期の売上は116億1,700万円(前期比20.6%増)、営業利益は3億5,000万円(48.3%増)だった。粗利益率が23.7%というシステムインテグレーション(SI)事業の売上高の増加が貢献した。一方、インターネット接続サービスは、コストの8分の1を占めるというバックボーンコストを約10%削減することに成功し、こちらも高い粗利益率を維持した。しかし、契約者数が増えているにもかかわらず、接続サービスの売上高は2002年度第1四半期以降、ほぼ横ばいの状況が続いている。
これには、接続サービスの市場単価の下落が大きく影響している。「接続者数や帯域はこれからも増えていくだろう。本来は順調であるはずだが、売っても売っても売上の伸びにつながらない」(鈴木幸一代表取締役社長)。同社の強みである品質や信頼性重視の接続サービスをベースとして、その上で、セキュリティなど利益率の高い付加価値サービスを展開していく考えだ。
鈴木社長によれば、現時点でも単に接続サービスだけを提供している形態は少なく、ほとんどの契約企業に対してセキュリティなどの付加サービスもあわせて提供しているという。さらに今後は、「スパムが問題となっているメールについて、会社として真剣に取り組みたい」として、「IIJが持つメール運用技術を掘り下げて、サービスとして提供したい」との考えを示した。
2003年度通期では、売上高は対前年度比11.9%減の387億7,900万円に止まったが、営業損失は14億5,000万円で、前年度の16億7,000万円から改善した。また、当期損失についても、前年度は子会社のクロスウェイブコミュニケーションズの持分法損失が含まれていたために164億7,700万円を計上していたが、2004年度は1億500万円の損失へと大幅に改善している。さらに2004年度は、クロスェイブの会社更生手続のマイナス影響が完全に払拭されると見ており、利益率の高いサービスの開発・販売によって通期での黒字化を目指す。
● 筆頭株主となったNTTとは、技術面で協力できるところは協力
東京都内で14日に開かれた報道関係者向けの説明会で鈴木社長は、NTTグループが筆頭株主になった影響について、「(NTTグループの出資比率である)31.6%は微妙な数字。大株主であることは事実だが、今のところ、特段大きな変化はない」とコメントした。接続サービス会社としては依然として「いちばんの競争相手には変わりない」とする一方で、今後はIPv6をはじめとする技術面において「協力できるところは協力していく」という。
さらに鈴木社長は、「インターネットとは本質的に未熟なところを持っている通信技術。安全に利用できるようにするための技術協力をしていく」とし、例えばファイル交換ソフト「Winny」の対策などもNTTと協力し、「IIJの帯域制御技術や監視システムなど、使えるものは提供したい」と述べた。
関連情報
■URL
ニュースリリース(PDF)
http://www.iij.ad.jp/IR/4q03/IIJI4Q03J.pdf
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( 永沢 茂 )
2004/05/14 19:20
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