総務省は、2月3日から開催している「次世代IPインフラ研究会」の第一次報告書を公表した。総務省ではこの報告書を踏まえて研究開発や実証実験に向けた対応を図っていくとともに、次世代のIPインフラ整備に関する各種課題等の検討を引き続き進めていく方針。
総務省によれば、ブロードバンド通信の「安さ」と「速さ」で日本は世界一となり、ブロードバンド加入者数も約1,400万近くに達したが、実加入者数ではFTTHが6%、DSLが29%と依然として低い状況だという。総務省ではブロードバンドについて「実際に対価を支払って利用するまでには至っていない」状況と見ている。
2003年7月に策定された「e-Japan戦略II」は、第一期の「IT基盤整備」から第二期の「IT利活用」へと戦略が進められている。総務省ではこの取り組みによって実加入者数が増加、さらにそれぞれの加入者が大容量のトラフィックを発生させた場合、現状のバックボーンが対応しうるかどうかを本報告書で検証している。
総務省がISP14社に対して行なったアンケート調査によれば、各社が実施しているプロバイダー間のネットワーク相互接続はその9割が東京であり、IXへ接続している回線容量合計値も東京が182Gbps、大阪地区が43Gbps、海外が5Gbpsと東京が圧倒的に高い。さらに全国主要地域のトラフィックも東京-大阪間が上り下りとも約70%と東京一極に集中しているという。
トラフィックの東京一極集中に関する問題点として総務省は「地域におけるブロードバンド・サービスの品質低下」「サイバー攻撃や大規模災害等に対する脆弱性」「通信設備に対する過剰負荷」を挙げている。このため、分散型ネットワーク形態への移行に向けて、IPアドレスの割り当てや地域性を考慮した経路制御などの技術的課題と分散化の程度について、ISP各社が協調して検証していくことが必要としている。
今後のトラフィック増加への対応策としては前述したトラフィック分散のほかに、「ネットワークの増強」「トラフィック制御」が挙げられた。このうちネットワーク増強については、交換機能を担うルータやスイッチ、インターフェイスの電気処理上の限界が見えてきており、光技術を活用した技術開発のブレイクスルーが必要になるという。
トラフィック制御については「上り」が「下り」のトラフィックより多い一部のユーザーがバックボーンの全転送量の根本を占めており、この多くがP2P型のファイル転送を行なっているという。事業者によっては大量トラフィックを発生させるユーザーについて帯域制限などの処置を実施しており、総務省でも大量のトラフィックを発生させるユーザーには追加料金を徴収するといった課金モデルの工夫も必要としている。
関連情報
■URL
ニュースリリース
http://www.soumu.go.jp/s-news/2004/040608_3.html
■関連記事
・ BB.exciteの規約改定、スパム業者やWinnyユーザーなどに帯域制限も可能に(2004/02/16)
( 甲斐祐樹 )
2004/06/08 19:41
- ページの先頭へ-
|