Internet Watch logo
記事検索
最新ニュース

アドビ、Acrobatの“WebコンテンツJIS”対応機能をアピール


 アドビシステムズは1日、PDFなどの電子文書のアクセシビリティに関する情報を提供するサイトを開設した。米Adobe Systemsの「access.adobe.com」を日本語に意訳したもので、「Acrobat 6.0」が持つアクセシビリティ対応機能や、Webコンテンツ制作者などがアクセシブルなPDF文書を作成するための方法などが紹介されている。

 Acrobatではすでに前バージョンの「Acrobat 5.0」において、米国のリハビリテーション法第508条に準拠し、アクセシビリティへ対応。日本においても、「XP Reader」を開発しているシステムソリューションとちぎなど、読み上げソフトベンダーとも連携してきたという。そんな中、日本では6月20日に、Webコンテンツのアクセシビリティを確保するための要件を規定したJIS規格「高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス-第3部:ウェブコンテンツ(JIS X 8341-3、WebコンテンツJIS)」が公示されたこともあり、アドビではAcrobatのアクセシビリティ機能などを広く認知・普及させるために情報を発信することにした。

 アドビシステムズマーケティング部フィールドプロダクトマネージャの千田斎氏によると、WebコンテンツJISでは基本的要件として、1)視覚を用いないでWebコンテンツを操作・利用できること、2)視力が低い、または視野が狭い場合でもWebコンテンツが操作・利用できること、3)色の識別が難しい、またはできない場合でもWebコンテンツが操作・利用できること、4)マウスなど特定の身体部位を想定した入力方法に限定しないで、Webコンテンツを操作・利用できること──などが示されているという。

 これに対してAcrobatでは、1)については、WindowsあるいはMicrosoft Officeのテキスト読み上げ機能や、サードパーティ製の読み上げソフトとの連携が可能。また、Microsft WordをPDFに変換する場合に、Word文書内の構造情報をPDF文書に“タグ”として埋め込めるようになっているため、PDF化されても適切な順序でテキストを読み上げることができるとしている。2)や3)については、ズーム機能やハイコントラスト機能を用意。4)については、キーボートショートカットや自動スクロールによる文書内の移動が可能だ。

 さらにWebコンテンツJISでは、アクセシブルなコンテンツを制作するための方法として、非テキスト情報の扱いについても示されている。Acrobatでは、Word文書内の各画像に設定された代替テキストをPDFにも取り込むことができるほか、Acrobat 6.0の「Professional版」を使えば、Acrobat側で代替テキストを追加することも可能だ。例えば、グラフなどの画像に対しては、項目や数値をすべてテキストで入力しておくことで、音声読み上げでも内容が伝わるようになる。

 なお、WebコンテンツJISの付随書では、非テキスト情報の扱いについて「PDFファイルを用いるときは、PDFのアクセシビリティ機能を最大限に用いる」ことと示されているという。


Acrobatの設定で、「タグ付きPDFでアクセシビリティと折り返しを有効にする」をチェックすることで、文章構造や代替テキストの情報を持つPDF文書が作成できる Professional版には、作成したPDF文書に対してアクセシビリティ上の問題がないかチェックする機能も備える。結果レポートがHTMLファイルとして出力され、問題箇所や対応方法のヒントが示される

 千田氏によると、全国の自治体のWebサイトのPDFの利用状況を調べたところ、広報誌や議会報告などの情報については47都道府県すべてでPDFが利用されていたほか、申請書をPDF形式で提供している自治体も44都道府県あったという。

 ただし、「タグが付いているPDFは、あまり多くないのが現状」(アドビシステムズインテリジェントドキュメント部部長の市川孝氏)。Webアクセシビリティに関する情報を提供することで、「自治体のPDFがアクセシブルになっていくことを期待したい」(同氏)としている。

 システムソリューションとちぎテスティング事業部の大塚雅永氏も、アクセシビリティに対応した機能を用意しているとはいっても、Acrobatはツールに過ぎないとした上で、「コンテンツ制作者がアクセシビリティに配慮したコンテンツを作ることではじめて、XP Readerで読み上げることができるようになる」と指摘。アクセシブルなWebコンテンツの普及を訴えている。


(左から)アドビシステムズの市川孝氏、同じく千田斎氏、システムソリューションとちぎの大塚雅永氏。1日に東京都内で開かれた報道関係者向けの説明会で

関連情報

URL
  access.adobe.comの日本語サイト
  http://www.adobe.co.jp/enterprise/accessibility/main.html

関連記事
日本規格協会、Webアクセシビリティを規定する「WebコンテンツJIS」制定(2004/06/22)
アドビ、PDFの標準化やアクセシビリティについて説明(2004/05/14)


( 永沢 茂 )
2004/07/01 19:29

- ページの先頭へ-

Internet Watch ホームページ
Copyright (c) 2004 Impress Corporation All rights reserved.