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AppleがRealNetworksのDRM変換技術「Harmony」を非難する声明を発表


 米Appleは29日、米RealNetworksが27日に発表した複数のDRMを変換する技術「Harmony」について、同社の方法が違法行為であると強く非難する声明文を発表した。

 声明の中でAppleは「我々はRealNetworksの取ったハッカーのような行動に呆然としており、彼らの行動に対してDMCA(デジタルミレニアム著作権法)やその他の法律を調査している。また、iPodのソフトウェアアップデートにより、HarmonyテクノロジーがiPodで動作しなくなる確率が極めて高いことを、RealNetworksとその顧客に対して強く警告する」と述べている。

 Appleが採用している独自のDRM技術「FairPlay」は、同社が運営している音楽ダウンロード販売サイトのiTunes Music Storeで購入した音楽コンテンツを同社が販売する携帯音楽プレーヤ「iPod」でのみ再生できるように作られており、このことによってApple社はビジネス戦略的に顧客の「囲い込み」を行なおうとしている。

 RealNetworks社が開発したHarmonyテクノロジーは、AppleのiTunes Music Storeで購入した音楽しか保存することができなかったiPodに、RealNetworksが運営する音楽ダウンロード販売サイト「RealPlayer Music Store」の音楽コンテンツも保存再生できるようにするものだ。これによりiPod利用者がiTunes Music Storeで音楽を購入しなければならない特段の理由はなくなり、Appleのビジネスモデルが大きく脅かされていることが同社が激怒するゆえんである。

 RealNetworksはこれに関連して29日に声明を発表し、「Harmonyは互換性を達成するために全く合法的で独立して開発された伝統的な方法を採った」と説明。その上で「Harmonyテクノロジーはどのシステムからもデジタル著作権管理機能を取り除いたり、機能停止したりはしていない。AppleはDMCAのような新しい法律がこの法的な問題に適用されると示唆している。しかし実際にはDMCAはコンテンツに鍵をかけるための新しい方法を創ることを防ぐ目的で立法されたわけではなく、明らかに変換ソフトウェアの創造を許可している」と同社の主張を述べた。

 デジタルミレニアム著作権法はとかく議論の的となる法律ではあるが、同法ではソフトウェアの保護機能の回避や除去、保護機能を弱めたり機能しないようにすることなどを禁止している。RealNetworksはこの法律の解釈として、RealPlayer Music Storeで採用されているHelixDRMで保護されたコンテンツを、iPodで採用しているFairPlayDRMに変換することで音楽コンテンツを保護しているにすぎない、と主張していることになる。


 RealNetworksは2000年に米Streamboxを提訴した時にDMCAを適用したことがある。StreamboxはRealNetworksのストリーミング放送をリアルメディアファイルとして保存するソフトウェアを開発販売していた。ストリーミング放送はダウンロードと異なり保存できないことが大きなメリットであり、そのためにストリーミング放送に仕掛けを施して保存できないようにしていた。Streamboxのリッパーソフトはこの仕掛けを回避するものだった。その訴訟の根拠がまさにこのDMCAのソフトウェア保護機能を回避することを禁ずる項目であったのだ。このとき両社は結局和解したが、こうした経緯を考えるとRealNetworksはDMCAの「回避」問題について十分理解した上で、Harmonyをリリースしたと考えられる。

 Appleは、RealNetworksをDMCAのもとで提訴すると現段階で述べているわけではないが、裁判になればこの法律の解釈に注目が集まることになるだろう。現実的には、Harmonyの発表時に音楽コンテンツを保有するレコード会社の多くが、RealNetworksに賛同のコメントを発表している。AppleにはDMCAに基づいて提訴する根拠はあるが、iTunes Music Storeを運営して多くのレコード会社と提携している立場としては、難しい状況に置かれていると言えるだろう。音楽の著作権者、ソフトウェアの著作権者、そして音楽販売のビジネスモデル、の3つが複雑に絡み合っている状況だ。

 RealNetworksは声明の中で、Harmonyが「AppleのiPodを含むポータブル音楽プレーヤーを保有する何百万もの消費者に選択と互換性を与える」とコメントしている。その一方で、RealNetworksが私企業であることから当然ではあるが、HarmonyはあくまでRealPlayer Music Storeの売り上げを最大化することを目的としており、例えばWindowsMedia DRMをiPodのFairPlayDRMに変換する機能などはない。つまり、iPod利用者がWindowsMedia DRM音楽を購入することはできないことは注目に値する。


関連情報

URL
  RealNetworksの声明文(英文)
  http://www.realnetworks.com/company/press/releases/2004/harmony_statement.html
  Appleの声明文(英文)
  http://www.prnewswire.com/cgi-bin/stories.pl?ACCT=104&STORY=/www/story/07-29-2004/0002221065&EDATE=
  Streamboxとの和解に関するプレスリリース
  http://www.jp.realnetworks.com/company/press/releases/2000/streambox.html
  Streamboxに対する差し止め請求の判決文(英文)
  http://www.law.uh.edu/faculty/cjoyce/copyright/release10/Real.html

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RealNetworks、音楽の著作権保護技術を相互変換する「Harmony」(2004/07/26)


( 青木大我 taiga@scientist.com )
2004/07/30 12:37

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