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NTT東西、「不採算部分のみ固定電話へ迂回は困る」~IP電話研究会


 総務省は20日、「IP電話のネットワーク/サービス供給に関する研究会」第3回を開催した。年内の研究会は今回で終了し、これまでの議論の内容を整理した上で2005年3月に第4回会合が開催される。


IP電話の市場支配力は「現状は存在しない」が将来的な懸念も

第3回会合の様子
 第3回会合は、第2回会合で研究会委員から出された指摘や質問に対し、第2回会合で意見を述べた事業者の回答から始まった。話題の中心となったのはIP電話市場における「市場支配力」の存在に関する質問で、「すでに多くの事業者がサービスを提供しているため市場支配によるボトルネックはない(NTT Com)」「IP電話は発展途上で市場も明確に確立されておらず、明確な市場支配力もない(NTT-ME)」「現状ではIP電話市場に限定した市場支配力は存在しない(ソフトバンクBB)」との意見が多数を占めた。

 これに対してケイ・オプティコムは「IP電話単独では圧倒的なシェアを独占する事業者はいない」「IP電話のインフラとなる電話回線や光ファイバは開放されているためボトルネック設備も存在しない」と前置いた上で、「IP電話はブロードバンド前提のサービスのため、IP電話市場の競争はブロードバンド市場にもつながる」と指摘。「0AB~J番号のIP電話はFTTHと密接に結びついており、固定電話で圧倒的なシェアを有するNTTがIP電話事業を展開することはFTTH事業にも強力な影響をもたらすことになる」との懸念を示した。日本テレコムも同様に、「0AB~J番号のIP電話は固定電話と同一市場との認識から、顧客情報に基づく営業といった、固定電話の基本料部分独占による影響があると考える」と語った。

 IP電話の相互接続に関しては「事業者同士の協議で問題なく進められている(NTT-ME)」「PSTN網の経由で迅速かつ安価な相互接続が行なわれている(NTT Com)」など、事業者間で実現すべき問題との意見が多く見られた。また、ソフトバンクBBは「現状、050番号のIP電話だけを利用しているユーザーはまだ少なく、限られたユーザーのために相互接続を義務化すべきではない」との考えを示した。

 ケイ・オプティコムは相互接続に関して、第2回会合でも指摘したKDDIのDODサービスを例に挙げ「IP電話など固定電話以外のサービスと新たに接続する場合、システム回収が必要で接続拒否されるケースがある」とコメント。「接続拒否自体は法律違反ではないが、ユーザーが電話サービスを選択する上でのマイナス要因となり、IP電話の普及を妨げる要因となる。また、システム費用を分担する際の方法も問題だ」と語った。


「採算の取れない部分を固定電話へ迂回するのは困る」とNTT東西

 ISPが担当する上位レイヤと、その土台となるネットワークレイヤとの関係については「事業者の経営努力(NTT Com)」「水平分業と垂直統合が併存しており、水平分業も接続料などでインフラコストを負担している(日本テレコム)」など問題はないとする意見の一方で、NTT-MEが「ISPの競争激化でネットワークレイヤへの値下げ圧力が強まれば、インフラの投資が滞って安定を脅かす可能性もある」と指摘。さらにNTT西日本は「日常的な通信はIP電話で、緊急通報のみ既存の固定電話サービスで、という利用が増加している現状では、固定電話網への設備投資が困難になるといったインフラの安定が脅かされる恐れもある」との意見を示した。

 NTT西日本には、東京大学社会科学研究所の松村助教授から「電話の基本料金だけでは維持できないほど深刻な問題か」との質問も投げかけられた。これに対してNTT東日本は「通話料が無料で採算が取れない緊急通話や電話の輻輳時だけNTTへ迂回するのでは困る。電話の基本料金だけでコストを解消できても電話交換機という設備の問題もある」と補足。「IP電話の相互接続に一般加入電話網が使われているが、現状は接続料が発生するので不満はないものの、それを永遠に維持するかは疑問だ」と語った。

 このほかIP電話が地理的に一律に普及していないという質問については、「IP電話はブロードバンドに依存するサービスであり、地理的普及は競争の中で実現されるべき」との意見でIP電話事業者はほぼ一致した。


委員からは「IP電話の相互接続に電話網を介するのは不満」との声も

 第3回会合では、前回に意見を発表していないNTT東日本、KDDI、フュージョンが、第2回会合の指摘や質問を踏まえながら意見発表を行なった。NTT東日本は「IP電話サービスは開始が遅く、挑戦者の立場にあるだろう」と前置いた上で、「今後は固定と移動体の融合といった新たなコミュニケーションサービスがIP電話で生まれる可能性がある」とコメント。NTT東日本が取り組む0AB~J番号のIP電話サービスやテレビ電話サービスを紹介したのち、「IP化やブロードバンド化によって県内・県間といった規制になじまないサービスが多く登場しており、業務範囲規制を緩和して欲しい」との意見を表明。また、IP電話やドライカッパによる直収電話などの登場で固定電話の需要が減少しているものの、固定電話の必要性はなくならないために、いかに固定電話を維持するかも重要な問題とした。

 KDDIは、050番号と0AB~J番号どちらのIP電話サービスも提供しているが、050番号については「(地域の確認できる0AB~J番号と比べて)着信を受けている場所を相手先に通知せずに済むというニーズも生まれているが、基本的には完全な代替にはなっていない」とコメント。0AB~J番号のサービスについては「固定電話や直収電話と同一市場であり、一部の接続は実現できていないがほぼ固定電話がなくても不便がないレベルになっている」と自信を見せた。

 第2回会合で出された質問のうち、市場支配力に関してKDDIは「アクセス回線の提供条件に大きく左右されるため、ADSLや直収電話はメタル回線の開放ルール整備、FTTHでは光ファイバ開放ルールの更なる整備が課題」と指摘。営業面でも「NTT東西が固定電話のために構築した営業リソースを新サービスに使用すべきではない」との意見を示した。また、相互接続に関しては「現状特に紛争は起きていないが、固定電話回線のようなボトルネックとなる設備を持つ事業者との相互接続には一定のルールが必要と考える」との意見を述べた。

 フュージョン・コミュニケーションズは、IP電話普及の課題として「安定した接続品質」「ネットワーク間の相互接続の実現」などが必要とコメント。また、0AB~J番号のIP電話では、「緊急通報や重要通信の確保」「FTTHに関する技術制度の検討」が課題とした。

 事業者からの回答や意見を踏まえて、研究会委員からの感想も述べられた。奈良先端科学技術大学院大学の砂原秀樹教授はIP電話の相互接続について「一般加入電話網での相互接続は非常に不満」とコメント。「IPであるからこそ実現できるサービスの中で、なぜ途中に電話網を入れてIPのサービスが切れなければいけないのか。相互接続に技術が及んでいないなら、その技術を開発するための共同の場を作るべきではないか」と指摘した。

 京都大学大学院の依田助教授は、「FTTHはまだ敷設率が低く、これから敷設していく段階であるのにユニバーサルサービスの考えがもう始まっている」と指摘。「都市部では電話を解約して光ファイバに移行する一方で地方は固定電話が残っており、固定電話を維持すべきか、維持することに社会的合理性があるのかは非常に難しい問題だが、議論する時間は残っていないのかもしれない」との意見を示した。


関連情報

URL
  総務省 報道資料
  http://www.soumu.go.jp/s-news/2004/041007_4.html

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IP電話研究会の第2回、IP電話と固定電話の市場区分で意見が分かれる(2004/11/25)


( 甲斐祐樹 )
2004/12/20 20:50

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