ソフトバンク・インベストメント(SBI)は24日、フジテレビジョンおよびニッポン放送との共同出資によるベンキャーキャピタルファンドに関する記者会見を開催した。会見ではソフトバンク・インベストメント代表取締役CEOの北尾吉孝氏が、今回のファンドの主旨について説明した。
● ソフトバンクは「すでに資本的に親子関係にない」と関与を否定
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カメラマンに囲まれながら会見を進めるソフトバンク・インベストメント代表取締役CEOの北尾吉孝氏
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SBIグループの概要
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記者会見の開催について北尾氏は「本来は行なう予定ではなかった」とコメント。「もし開催するならフジテレビやニッポン放送も含めた3社もやるのが筋だと思う」とした上で、「あまりにも今回のファンドに関して質問が多く、会見を開催すべきとの要望が多かったため、私なりに説明しておきたい」と語った。
続けて北尾氏は「今回の話に孫さん(ソフトバンク・グループの孫正義代表取締役兼CEO)がからんでいるのでは、という声が挙がっているが、私どもSBIはソフトバンクとは資本的に親子の関係にはない」と否定。「3月1日に行なった500億を超える時価発行増資により、ソフトバンクの100%子会社であるソフトバンク・ファイナンスが持つSBIの議決権比率は40%を割っている」と、ソフトバンクの関与はないことを強調した。
今回のファンド設立について北尾氏は、現在までのIT関連のファンドの経緯について説明。2000年春にIT分野を対象として行なった1,505億円のファンドはすでに回収期にあり、現在はブロードバンドを対象とした500億のファンドを現在募集中とした上で、「ブロードバンドは非常に大きくなる分野で、投資対象が山のようにある。それとは別に、放送やコンテンツの世界とブロードバンド関連事業を結びつけるような世界を作り出したい」との考えを示した。
一方で北尾氏は「ファンド事業はお金を出せば済むものではなく、さまざまな形で支援体制を整えていく必要がある。インターネット分野ならその体制は十分だが、放送の分野では我々は十分なノウハウを持っていない」とコメント。「フジテレビとニッポン放送はまさにそういうノウハウをもった企業。このファンドはお金だけではなく、全面的な協力をお願いするもの」とした上で、「企業公開までの財務や法務、マネジメントといった、“ベンチャーインフラ”というべき面と放送のノウハウを組み合わせることで、大変すばらしいパフォーマンスが期待できるのではないか」との考えを示した。
● 孫正義氏には「連絡はしていないが以心伝心伝わっている」
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SBIとソフトバンクグループの資本関係
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ニッポン放送保有のフジテレビ株式の株券消費貸借については「株をお互いに持ち合う、もしくは資本提携は会社の関係を密にするためにはポピュラーな手法だ」と説明。ただし、「株式の売買は、ライブドアの件などいろいろと難しい事情がある。株は実質的にお金を介在して売買しない方がいい」との考えから消費貸借に至ったとした。
消費貸借では、株式の名義や議決権はSBIに移るが「あくまでパートナーシップ重視であり、我々からすれば“資金の負担はいらないよ”ということ(北尾氏)」。また、ファンドの運用期間である5年以降は「延長はできるがファンドを返すこともできる」と説明、売買との違いを強調した。
孫正義氏が本件についてすでに知っているのかという質問が記者から寄せられると「電話した時にいなかったので、結局一度も話していない。この発表で知るのではないか」とした上で、「メディアでは孫さんと仲が悪いように取りざたされているが、実際にはお互い同志と思っている。孫さんは資本金を出した後は一言も口を挟まないほど度量の大きい経営者で、私は大変感謝している」と説明。「なんらかの形でソフトバンクに協力できれば、とは考えているが、それは孫さんと話すまでもなく、以心伝心で伝わっているだろう」と述べた。
自社による時価発行増資により、ソフトバンクとの“親子の縁”を切った理由について北尾氏は「ソフトバンクグループの過去3年に渡る膨大なブロードバンド事業への投資のため、我々が資金が必要でも銀行の借入額や社債発行枠はグループで全部抑えられている。社債の格付けもソフトバンクに準じてしまう」と説明。SBIのさらなる成長のための資金調達が目的だとした。
また、ソフトバンクグループでは金融の世界に限って事業展開しているが「今後は金融の世界で培ったインターネットのノウハウが非金融分野で生かせるのでは」との考えもあるという。北尾氏は「ヤフーもオークションやショッピング決済で銀行業務に進出しているが、それに比べて私はもう少し義理堅い」とコメント、「資本関係が切れた段階で、非金融分野も含めた壮大なグループとして成長していきたい」との考えを示した。
● ライブドアについては「基本は当事者の問題だがアドバイスはできる」
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ファンドの概要
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ライブドアのニッポン放送株式取得については「テレビを見ている限り、他人の家に土足で上がってきて『仲良くしようや』と言っているように見える」と個人的な感想を示した上で、「敵対的買収はアメリカでも10年前に起こったが、お互いにメリットがないためにほとんどが失敗したという結論が過去の経験から出ている」と指摘。堀江氏に対しては「もう少しうまいやり方があったのではないか」との感想を述べた。
続けて北尾氏は「すでに50%を超えて議決権を持つ水準まで株式を持っている以上、あとはフジテレビとニッポン放送の問題」と前置いた上で、「そうはいいながらも、縁あって当事者との関係が生まれた中でアドバイスはできるのではないか」とコメント。「野村證券の役員を担当していた頃から数多くのM&Aを手がけており、民間企業で私以上にM&Aの経験を持っている人間はいないだろう。テレビでは評論家がいろいろな意見を出しているが、私にしてみれば“M&Aをやってもいない人がよくそこまで話せるな”とも思う」と自信を見せた。
今回のファンドについては3、4カ月前からさまざまな会社を訪問する中で進めており、フジテレビ以外のテレビ局にも話をしているという。ライブドアの買収防衛意図については「まったくない、あくまで放送業界の目利きの人材としての協力」と否定したが、ファンドの最終的な形が決まった時期は、ライブドアの買収報道がすでに活発化している中旬であり、契約書にサインした時期も会見当日である3月24日であるとした。
フジテレビにとってホワイトナイトの役割を果たすのかという質問には「そういう言葉が流行っているが、望まれるのであれば専門家としての意見はアドバイスはするし、この件に関して“大人の解決方法”も頭の中にはある」とコメント。また、ライブドアが訴訟を起こすのではとの考えには「社内にも相当のエキスパートを有しており、法務面での人的ネットワークもある。そういった部分も検討済み」と自信を示した。
「大人の解決方法」の具体的な内容について質問が飛ぶと、北尾氏は韓非子の「事は密を以って成り、語は泄るるを以って敗る」という言葉を引用。「ペラペラしゃべってはなんにもならなくなる」と詳細を伏せた上で「テレビを見ていて思うのは、なぜお互い手の内をこんなにも明かしているのか。(専門家として)M&Aを知らない人だな、と思ってしまう」と厳しい指摘を見せた。
関連情報
■URL
ニュースリリース
http://www.sbinvestment.co.jp/news/html/050324_a.html
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・ ソフトバンク・インベストメントが株の貸借でフジテレビの筆頭株主に(2005/03/24)
( 甲斐祐樹 )
2005/03/24 21:36
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