ノルウェーのOpera Software A.S.Aが7月29日に公開した「Opera 8.10 Preview 2」に大きな変更が加えられた。デフォルトのUser Agent(UA)を「Opera」に設定したことである。このことはOperaの戦略上大きな意味を持つ可能性がある。
UAとは、HTTP接続を開始するときにブラウザがサーバーに送信しなければならない文字列の1つだ。自身がどのようなブラウザであるかを特定できる文字列をここに記入する。例えばInternet Explorer(IE)の場合は「Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1)」などというUA文字列を送信する。
これまでOperaのデフォルト設定では、UAを偽って申告することによって自身をIEであると見せかけていた。それがOpera 8.10 Preview 2では、デフォルト設定を「Opera」と認識するように変更した。もちろんユーザーがUAを後から変更することはこれまで通り可能だ。
UAが「Opera」に設定されると、どのような変化が起こるのだろうか。一般的にはブラウザシェアの調査結果に影響を与え、Operaのシェアが上昇するのではないかとの見方があるが、それは必ずしも正しいとは言えないだろう。多くのアクセスログ解析ソフトはすでに、UAでIEと偽っているをOperaを正しく「Opera」と認識している。もちろんこれを認識できなかった一部のアクセスログ解析ソフトでブラウザシェアが変化することは当然あるだろう。
それよりも大きな影響があるのは、Opera自身が自らのレンダリングエンジンに専念できることである。今までOperaがIEと偽って申告していた結果、HTTPサーバーはIE向けのコンテンツを送信していた。IEにはDOM関連部分などに独自のバグの多い実装があることから、Operaは開発する際にIEの挙動を把握し、そのバグを再現することによってページを表示しなければならなかった。しかしOperaが「Opera」と認識されるようになれば、Webページ制作者がIEのバグに依存しない標準規格に則ったページを作成するようになる圧力となり、結果的にOperaに適切に表示されるページを送信することが可能になるだろう。
MozillaプロジェクトのFirefoxは初めからUAを「Firefox」としている。このFirefoxのシェアが10%近くあるため、Webページ制作者にとってIEだけに合わせたページを作らなければならないという圧力はすでに若干弱まっている。このようなシェアの変化はOperaにとって追い風となるだろう。
Operaが今回公開したOpera 8.10 Preview 2はその名の通りプレビュー版であり、P2Pダウンロードプロトコル「BitTorrent」のテストなど、正式バージョンで実装されるかわからない機能に関するテストを行なっている。Operaでは、UAの変更によって表示できなくなったページ、特にホットスポットのゲートウェイページなどサーバーサイドスクリプトによってブラウザを認識しているページに関する情報提供を求めている。
この件に関してOperaのコミュニケーションディレクターであるTor Odland氏は「一般的に我々はいつでも内部では異なる設定のテストを行なっている。今回は単に、一層多くの情報を集めるためのテストを外部のベータテスターにお願いしたに過ぎない。我々は今のところ、この問題に関するポリシーの変更を行なったわけではない」と回答している。正式バージョンでもデフォルトUAをOperaと設定するかどうかはまだ未定のようだ。
関連情報
■URL
Opera 8.10 Preview 2 for Windows(英文)
http://snapshot.opera.com/windows/w810p2.html
( 青木大我 taiga@scientist.com )
2005/08/02 13:48
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