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KDDIが提唱する「ウルトラ3G」、その実力は?~モバイルWiMAX実証実験


PCカード型のモバイルWiMAX端末(サムスン製)。サービス開始当初は主にパソコン向けとして登場する見込み
 KDDIが掲げる「ウルトラ3G」構想。同構想の中で重要な役割を担うモバイルWiMAXの実証実験の模様が報道関係者向けに公開された。

 ウルトラ3G構想は、現在提供されているCDMA2000 1x/1xEV-DO、WiFiといった無線通信方式、ADSLやFTTHといった有線通信方式に加え、モバイルWiMAXなどの新しい無線通信方式をシームレスに利用できるようにしようというものだ。これらの通信方式はIPv6ベースのコアネットワーク上にまとめられ、3GPP2が標準化を進める「MMD(Multimedia Domain)」アーキテクチャにより統合される。

 同社の代表取締役執行役員 副社長の伊藤泰彦氏は「4Gの前のケータイじゃないかと言われるが、固定も、移動も、放送も全てIPの上に統合されるというのがウルトラ3Gだ」と語る。単に高速化を実現するのが目的ではなく、多種多様なアクセス手段をシームレスに組み合わせて、コミュニケーションの質を高めるという狙いが根底にある。そのため、今回の公開実験は、モバイルWiMAXの威力だけでなく、MMDにより統合されたコミュニケーションサービスのイメージを具体的に示す内容のものとなった。


モバイルWiMAXの威力

左から技術統轄本部 技術開発本部長の渡辺文夫氏、代表取締役執行役員 副社長の伊藤泰彦氏、執行役員 技術統轄本部長の安田豊氏
 モバイルWiMAXは、時速120kmでの高速移動時にも接続を維持でき、最大数十Mbpsの通信が可能とされる無線通信技術。今回の実験では、10MHz幅を使用し、下り19Mbps、上り7Mbpsというピークレートを実現。1つの基地局で半径数kmのエリアをカバー可能で、実験では大阪市内に3つの基地局を用意してテストしているという。

 サービスエリア内をバスに乗って移動するデモでは、異なる周波数によるハンドオーバーと同じ周波数によるハンドオーバーの模様が確認できた。また、屋内では、モバイルWiMAX、CDMA2000 1xEV-DO、W-CDMAの3つのアクセスラインで、同じ内容の動画(ただし、モバイルWiMAXは1Mbps、他の2つが500kbpsというビットレート)をストリーミング配信するデモも用意され、その圧倒的な速さを見せつけた。

 同社では、商用化の時期は未定としながらも、「やるつもりがあるかどうかと聞かれれば、やるつもりだと答える。免許の問題もあるため、まだ数年はかかるだろう」(伊藤氏)としている。

 執行役員 技術統轄本部長の安田豊氏によれば、当初はPCカード型の端末を使ったサービスや、通信モジュールを内蔵したパソコンやPDAでの利用が想定されるとのことで、携帯電話にモバイルWiMAXの機能が搭載されるのはさらにその先の話だという。


エリアカバレッジの状況。1つの基地局で1km弱をカバーしていることがわかる デモ走行のルート。途中、異なる周波数での「Inter FA HO」、同じ周波数での「Intra FA HO」の2つのハンドオーバーがデモされた

スループットは下り2.5~2.8Mbps、上り600~700kbpsを示していた ハンドオーバーの場面。一旦回線を切断し、再度繋ぎ直すという仕組みだが、概ね200msで切り替わるため、さほど問題にはならないという

デモ走行のバス車内の様子 複数のストリーミング動画が途切れることなく再生されていた

左からW-CDMA、CDMA2000 1xEV-DO、モバイルWiMAX。500kbpsの動画ということもあり、最大384kbpsではかなり厳しい。EV-DOも環境によっては映像が止まる。モバイルWiMAXは1Mbpsの映像も問題なく再生できた HDD/DVDレコーダーを遠隔操作できるユニットを利用したデモ。モバイルWiMAXカードを装着したPDAから映像を参照したり、レコーダーをコントロールしたりできる

MMDでシームレスに

MMDサービスの例
 モバイルWiMAXの魅力は、速さだけではない。CDMA2000 1xEV-DOなど、他の無線方式と組み合わせやすいところが、通信事業者にとっては大きな魅力となる。

 モバイルWiMAXとCDMA2000 1xEV-DOの間でシームレス・ハンドオーバーするデモも披露された。デモでは、IP電話やテレビ電話の会話や映像が、ハンドオーバー中も途切れることなく利用できることが確認できた。

 さらに興味深いのは、MMDアーキテクチャを利用したサービスのデモだ。MMDは、回線交換ネットワークでいう交換機に相当するもので、アプリケーションサーバーと連携して、ユーザーの通信やデバイスの環境(プレゼンス)に応じてサービスの提供レベルをコントロールする。

 モバイル端末には画質や音質などの点で制約が大きい。一方の固定ブロードバンド環境は、クオリティの面では問題ないが、そもそも固定というだけに、モビリティという発想はない。双方の利点をうまく引き出し、利便性を高めようというのがMMDの役割だ。

 現状でも、例えばテレビ電話のようなサービスはそれぞれ提供されている。ところが、それらは別々に提供されており、ユーザーは意識して利用するサービスを選び、切り替えなくてはならない。

 MMDの導入により実現されるのは、屋外でモバイル端末を使って利用していたテレビ電話の接続を維持したまま、帰宅後に家庭の大画面テレビやAV機器にその接続を渡す、というような使い勝手だ。

 また、通話できない電車の中ではテキストでメッセージをやりとりし、降りたところでテレビ電話に切り替える、といった風に、接続を維持したままアプリケーションを変更することもできる。こうした考え方は、同社が昨年末から提供を開始した「Hello Messenger」の延長線上にあるとも言えるだろう。

 もちろん、課題もある。広く普及させるとなると、他の事業者やデバイスメーカーとの連携が必要になる。MMDは3GPP2(CDMA2000陣営)が標準化しているが、3GPP(W-CDMA陣営)もIMS(IP Multimedia Subsystems)という名称で同様の規格の標準化を進めている。「(MMDとIMSの)中身は99%同じ」(開発スタッフ)とのことだが、異なるデバイス間を移動していくユーザー情報をどのように管理し、受け渡しするかなど、調整が必要な部分も多い。

 伊藤氏は「かなり広範囲に話をしていかないと便利なサービスにはならないので、メーカー、キャリアの両者ともに話をしているところ」と述べ、実用化に向けて努力していく姿勢を見せている。


外出先でPDAでテレビ電話 家に帰って大きな画面で映像を確認。この間、接続は保たれたままになっている。映像だけでなく、音声はAVスピーカーに、カメラも備え付けの高画素カメラに切り替えられる

モバイルWiMAX、CDMA2000 1xEV-DO、WiFiの3つのアクセスラインをシームレスに切り替えるデモ モバイルWiMAXの強度が下がると、CDMA2000 1xEV-DOが準備を始め、やがて切り替わる

テレビ電話中にアクセスラインをCDMA2000 1xEV-DOからモバイルWiMAXに切り替えるデモ モバイルWiMAXに切り替わったところ。ビットレートやフレームレートが自動的に上がっているのがわかる

関連情報

URL
  ニュースリリース
  http://www.kddi.com/corporate/news_release/2006/0216a/

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( 湯野康隆 )
2006/02/20 13:43

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