ドリームボートは、P2P技術を活用したコンテンツ配信システム「SkeedCast」を開発した。P2Pファイル共有ソフト「Winny」の開発者である金子勇氏も技術顧問として開発に参画した。配信事業者やコンテンツホルダー向けに5月中にも試験運用を開始する。
● Windows MediaによるDRMも実装可能
SkeedCastは、Internet Explorerベースのインターフェイスを備え、企業などの既存サイトからコンテンツを配信できるシステム。P2P技術を基にしているため、回線やサーバーなどインフラへの大きな投資が不要だという。また、Windows MediaによるDRMを実装することも可能で、コンテンツの料金、再生回数や再生期限、コピー制限などを設定できる。
エンドユーザーはまず、ダウンロードを受け付けるツール「レシーバ」とFlashベースのコンテンツ再生ツール「コンテンツナビゲーター」をインストールする必要がある。レシーバとコンテンツナビゲーターは当初、Windows XPのみをサポートするが、Windows 2000やMac OS Xなどのプラットフォームでも利用できるようにする方針。また、コンテンツナビゲーターを作るためのインターフェイスはオープン化する予定で、配信事業者ごとにカスタマイズできるようにする。
SkeedCastの提供パッケージは、コンテンツ配信のみの最小限パッケージ、DRM機能を実装した標準パッケージ、クレジットカードや電子マネーによる課金代行までをドリームボートが行なうフルパッケージの3種類。利用料金は月額5万円~100万円で、コンテンツの容量やアクセス数に応じて設定するという。
なお、SkeedCastは開発段階では「OZ TECH」というコードネームで呼ばれていた。ドリームボートによれば「OZ TECHは開発途中の暫定的な名前」とコメント。SkeedCastの「Skeed」とは「ある物語に登場した、どこにでも行ける神の舟の名前がSkeedだった。また、古英語でSkeedとは港の岸壁と船が直接接触しないようにする緩衝材の意味もある。配信の自由度と権利を守るという両方の意味を込めた」と説明した。
● 管理サーバーで「意図せぬ流出」や「悪意のある混入」を排除
ドリームボートでは、SkeedCastを構成するコア技術を「SkeedTech」と呼ぶ。これはP2P技術をサーバーサイドに応用したもので、SkeedCastを利用する配信事業者が認めた複数のノードによってコンテンツの共有や配信を行なう。また、セキュアなP2Pを実現するために管理サーバー(コントロールサーバー)を設置した。
Winnyと異なる点は、ファイル共有と配信は配信事業者に認められたノードのみに限られ、エンドユーザー側の一般ノードはファイルのダウンロードだけしかできないこと、管理サーバーが流通経路とコンテンツを監視すること――などだ。このため「意図せぬ流出」や「悪意のある混入」を排除できるという。この技術はすでに特許も出願中で、出願番号は「2005-276239」となっている。
なお、コア技術であるSkeedTechのうち、特に「SecureP2P」技術は、Winnyの開発者で、ドリームボートの技術顧問である金子勇氏が開発に携わった。
● 5月中に試験運用を開始
SkeedCastでは登録ノードによる閉じられたP2Pネットワークを構築してコンテンツを配信するが、このネットワークなどのインフラはインターネットイニシアティブ(IIJ)が提供する。ドリームボートでは、新規技術への展開など発展的な協業関係を築くため、IIJとデジタルスケープの2社と資本提携を含めた包括的な提携を行なっており、すでに3月末に第三者割当増資を完了している。
なお、IIJによれば、従来のCDN(Contents Delivery Network)との違いについて「CDNではキャッシュサーバーが1台数百万円だったが、SkeedCashの登録ノードはひと桁安い価格で導入できる」という。
SkeedCastは5月中に試験運用を開始。本格的なサービス開始は8月を予定しており、当初は動画ファイル配信での普及を目指す。さらにその後はデジタル家電、カーナビ、携帯電話、ゲーム機などに対応機器を拡大する方針で、グループウェアなどBtoB市場への普及も狙う。
関連情報
■URL
ニュースリリース(PDF)
http://www.dreamboat.co.jp/press/pdf/press_060417.pdf
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( 鷹木 創 )
2006/04/18 14:03
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