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Microsoftの「Zune」はiPodだけでなく、YouTube的サービスも視野に

同社幹部が証券アナリストとの会合で説明

 Microsoftが計画中の音楽製品サービス「Zune」について、同社幹部のRobert Bach氏が27日、証券アナリストとの会合において、これが単なる“iPodキラー”サービスではないことをさまざまな観点から明らかにした。Zuneには“YouTubeキラー”となる可能性すらある。


製品コンセプトは「コミュニティ」と「ディスカバリー」

 Zuneは、音楽を再生するデジタルガジェットと音楽配信サービスというiPodと似た視点で語られることが多いが、Bach氏は「我々は、他の人々がやっていることと同じことをするためにZuneを紹介しているわけではないことを指摘しておきたい」とはっきりコメントした。Bach氏は、Zuneが提供する製品コンセプトとして「コミュニティ」と「ディスカバリー」を挙げる。

 例えば今時の音楽ダウンロードサイトに行くと、確かに音楽を買うことができるが、そこで友人と会ったり、音楽や音楽に関係する体験を共有したり、自分の好きなバンドの情報を見つけ出してそのバンドが今どんな活動をしていて次のコンサートがいつかといった情報を得ることは難しい。MicrosoftはXbox Liveですでにコミュニティの視点からビジネスを展開しており、Windows LiveやMSNでは「ソーシャルネットワーク」という観点からコミュニティ機能を生かし始めている。そのため、Zune戦略の枠組みでもコミュニティが重要な基盤となると考えているという。

 ディスカバリーの観点では、Bach氏は新しいコンテンツを発見する難しさについて指摘した。もちろん好みの音楽を新しく見つけるのは難しいことで、そこにもZuneは力を注いでいくが、Bach氏は「ビデオではそれがより一層重要になる」と指摘した。Bach氏は「今やビデオはハリウッドで生産される一群の物ではなくて、世界中の人々によって生産されるものだ。それは家族のビデオであり友人のビデオであり、おもしろいコミュニティビデオである。これはユーザーによって作り出されたコンテンツである」と説明した。世界中のユーザーによって作り出されたコンテンツを発見するためのサービスという観点は、まさにWeb 2.0的世界のYouTubeなどの動画共有サービスと趣を同じくしていることが注目される。

 続けてBach氏は「従って、人々が欲しい物の世界をどのようにして発見できるようにするか、そしてそれを友人たちと共有できるようにするか、その方法を見つけだすことは同じコインの裏と表にあたることであり、それは我々がZuneとそこで提供しようとしているサービスで何をしようとしているかという秘密の部分なのだ」と何かを匂わせるような口調でコメントしている。


ハード、ソフト、サービスを提供するビジネスモデルはXboxと似ている

 今回の証券アナリストとの会合でZuneの戦略について説明を行なったBach氏は、新たに設立されたエンターテイメント&デバイス部門を担当するプレジデントである。以前はホーム&エンターテイメントと呼ばれていた部門で、「デバイス」という名前が付いたことに大きな変更点がある。この部門は音楽、ビデオ、テレビというMicrosoftが担当するエンターテイメント、Xbox関係、Windows Mobileデバイスの推進、キーボード/マウス部門、Macintosh部門なども含まれている。

 Bach氏は説明の中で、Zuneプロジェクトが単なるハードでもソフトでもなく「Microsoftはハードウェア、ソフトウェア、サービスに関わっていく」と説明。同じエンターテイメント&デバイス部門が抱えるXboxと似たビジネスモデル、戦略であることを明らかにした。つまりXboxでは、Xboxというハードとその上で動作するゲームソフト、そしてXbox Liveという多様なサービスを提供しているからだ。

 ビジネスモデルがXboxと似ている一方で、Zuneへの投資戦略は多額の初期投資を行なったXboxとは大きく異なる。「3年、4年、5年程度をかけて」市場シェアを確保していく計画だという。その具体的な方向性として、まず米国で今年秋に1つの製品を発表し、その後丸1年をかけて製品ラインを拡張すると同時に、提供する地域を広げていくという戦略を明らかにした。

 もう1つ重要な点として、Zuneは単に1つのポータブルデバイスとサービスではなく、Microsoftの大きな戦略の中で位置付けられている。Microsoftが発売を準備しているWindows Vistaとすでに発売されているMedia Centerは家中の音楽、ビデオをすべて保存し配信できるという意味で非常に重要な戦略的商品となる。そのほかにMicrosoftはXbox 360、Xbox Live、MSN、Windows Liveなどの商品群をすでに展開しており、その中にZuneの戦略的商品としての位置付けがある。Bach氏が担当する部門はWindows Mobileを推進し、Windows MobileをOEM供給し、組み込みのWindows CEやWindows XP Embedded、車載用ソフトウェア事業を行なっているということも無視できないだろう。


関連情報

URL
  Robert Bach氏による説明(英文)
  http://www.microsoft.com/msft/speech/FY06/BachFAM2006.mspx

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Microsoftが音楽製品ブランド「Zune」を公表、年内に製品リリースも(2006/07/24)


( 青木大我 taiga@scientist.com )
2006/07/31 13:05

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