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Mozilla CorporationのMitchell Baker CEOが「Microsoftとの違い」を語る

6,000万人のユーザーひとりひとりがFirefoxを“選択”している

 米Mozilla CorporationのCEOであるMitchell Baker氏と、Mozilla Japanの代表理事を務める瀧田佐登子氏が9月29日に記者会見し、Mozillaの活動方針やMicrosoftに対するスタンスなどを語った。


Mozilla Corporationの年間売上は数千万ドル

Mozilla CorporationのCEOであるMitchell Baker氏(左)と、Mozilla Japanの代表理事を務める瀧田佐登子氏(右)
 Mozilla Corporationは、営利活動を目的として2005年に設立された組織だ。その経緯についてBaker氏は次のように説明する。

 Mozilla Projectは長い間、何十万もの人によってボランティアベースで活動してきたが、2003年に財団のMozilla Foundationが設立。AOLが保有していたMozillaの名称などの資産や、当初の資金200万ドルがMozilla Foundationに提供された。Baker氏によれば、「我々はMozilla Foundationを通して、公的なメリットを提供するというMozilla Projectの魂を伝えていこうと考えた」という。Mozilla Projectの魂とは、インターネット上でいろいろな選択肢を提供し、人々にとって使いやすい環境を提供することだ。

 こういった組織を作ることは、プロジェクトに携わってきた人にとって大きな願いだったが、法的な観点から見ると、非営利団体であるためにさまざまな制限もあった。税金を払わない反面、資産はあくまでも「公的なメリット」のために使うものであり、個人のためにこれらの資産を使うのは不可能だったと説明する。

 これを解決するために作られたのが、営利組織のMozilla Corporationだ。製品自体はMozilla Corporationからリリースするが、資産はMozilla Foundationが所有しており、その資産をMozilla Corporationが使用するという仕組みだ。これにより、「Mozillaの本来の目的を達成しつつ、法的な問題にも対処できるようになった」。

 Mozilla Corporationでは、Firefoxをメインとした製品で売上を上げている。具体的には、Firefoxを立ち上げると表示されるページの検索ボックスや、検索バーに含まれるサーチプロバイダーとパートナーシップを結んでおり、その広告から収益を得ている。年間では数千万ドルに上るという。

 なお、Mozilla JapanやMozilla Europeは、それぞれ独自の組織構成となっているが、やはり「公的なメリットを提供する」ことがポイントであり、Mozilla Corporationと密接に協力しながら製品を提供しているとした。


多くの人が積極的に関与していることが、Microsoftとの違い

 MicrosoftのInternet Explorer(IE)が依然として大きなシェアを占めるブラウザ市場においてシェアを拡大しているFirefoxだが、Baker氏は「我々の立場は、Microsoftと競合することにはない」と語る。Mozillaの目的は「人が使いやすいツールを提供するということ、人とネットワークに焦点を置くということにある」。その結果、どの企業も積極的に参入しようとはしない「Microsoftが興味を持っている分野」に、「しかし我々は、インターネットに対する目的を考えると、その場に居ざるを得ない状況にある」のだという。

 一方でMozillaが現在まで発展したきた理由は「人々が積極的に関与してくださっていること」だとし、それがMicrosoftとの違いだと説明する。「Mozilla Projectでは、何百万人もの人たちがFirefoxに関与し、同時に彼ら自身が他のユーザーにもFirefoxをダウンロードしてあげるといった経験をしている。こういうかたちで6,000万人というユーザーひとりひとりがFirefoxを選択し、それを使っている」。

 人々の関与ということに関連して、Baker氏はSNSを例に挙げる。10年前には存在しなかったSNSによって現在、人々がインターネットを介して関与することによる力が生まれていると指摘。「こういった関与の仕方が、まさに我々Mozillaがやっていることだ」と述べる。
 
 Mozilla Japanの瀧田氏も、人々の関与という点について、オープンソースという手法で開発されてきた背景を挙げた。元々はMozillaの製品もNetscapeというクローズドな世界で作り続けられていたものだったが、それがオープンソース化され、ブラウザのあるべき姿、アプリケーションのあるべき姿について、インターネット上の多くの人がディスカッションするなどして関与してきた結果、Firefoxが作り上げられたと説明する。

 瀧田氏は「Netscapeという会社が今までやり続けて、果たしてFirefoxというものを作り上げられただろうか? 多分、クローズドな世界ではここまでは行かなかっただろう。6,000万というユーザーがアイディアマンでもある。一企業が真似のできる組織ではない」とも語った。


「Thunderbird」のマスコットキャラ展開は未定

フォクすけ
 Mozilla Japanでは最近、Firefoxのプロモーションのための日本独自のマスコットキャラクター「フォクすけ」を投入した。この経緯について瀧田氏は、「Firefoxはまさにコンシューマの方々に幅広く使っていただける製品だが、Mozillaのメッセージを伝えるにも難しい言葉になってしまい、なかなか理解されない」と説明。日本独自の文化的な背景もあり、文字で語るより「ああいうかわいいキャラクターに語らせると、少しは入りやすくなってくるのかな」と説明した。

 瀧田氏によれば、フォクすけは、Mozillaの歴史など、さまざまなことをみんなに教えるという位置付けだ。実際、「FirefoxとMozilla関連組織の歩み」という年表ポスターでは、「英語版」と日本語の「通常版」に加えて、「フォクすけ版」が用意されている。フォクすけ版では、重要なポイントにおいて、フォクすけが「IEのご先祖様もMosaic。実はIEも親戚なんだね。」「インターネットといえばネットスケープ!っていうくらいの大人気だったんだ。」などと説明するイラストが追加されている。いずれも、「フォクすけ*ブログ」などのサイトからPDFデータでダウンロード可能だ。

 Baker氏は「グローバルでも、どうやって人々にMozillaをわかりやすく説明すればいいのかという課題がある。我々としては、日本におけるフォクすけの動向を見守って、学べることがあれば吸収したい」とコメントした。

 なお、Mozilla Japanによれば、メールソフトの「Thunderbird」で同様にマスコットキャラクターを投入するかどうかは未定だという。


関連情報

URL
  Mozilla Corporation(英文)
  http://www.mozilla.com/
  Mozilla Japan
  http://www.mozilla-japan.org/
  フォクすけ*ブログ
  http://spreadfirefox.jp/foxkeh/
  関連記事:MozillaプロジェクトがAOLから独立、新財団「Mozilla Foundation」を設立
  http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0716/mozi.htm

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( 永沢 茂 )
2006/10/04 20:32

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