Internet Watch logo
記事検索
最新ニュース

MSの著名科学者がヨットで行方不明、衛星画像による捜索に参加呼びかけ


Amazon Mechanical Turkによる捜索参加募集ページ
 米Microsoftの著名計算機科学者Jim Gray氏がサンフランシスコ湾を自分のヨットで出港した後行方不明になっている事件で、最新の人工衛星画像を使用した人海戦術による前代未聞の捜索活動が始まった。

 これには米AmazonのWebサービスの1つである「Amazon Mechanical Turk」が使用されており、日本からもアカウントを取得して無料で参加することが可能だ。

 Gray氏が所属するMicrosoft Researchの発表によると、Gray氏は1月28日に自分の所有する40フィートのヨット「Tenacious号」でサンフランシスコを出港。その晩に帰宅予定だったにもかかわらず帰宅しなかったことから、家族により捜索願いが出された。米国沿岸警備隊が地元のカリフォルニア州だけでなくオレゴン州やワシントン州からの支援を受けながら、好天候の中で合計13万2,000平方マイルを捜索したにもかかわらず、今のところ何の手掛りも得られていない。

 この状況を受けて友人たちが力を結集し、最新の衛星画像を使って人海戦術によりTenacious号を探し出す前代未聞の試みが始まった。人工衛星画像を米Googleや米Microsoftに提供しているDigital Globeの協力を受け、同社の人工衛星を2月1日午前にサンフランシスコ沖に移動させて最新の衛星画像を撮影。Digital Globeはこの衛星画像を一般公開することに同意した。また、2月3日にはNASA ER-2による画像も加えられた。計算機科学者たちはこれらの画像を小さく分割してAmazonの「Amazon S3ストレージサービス」に保存。人海戦術によってTenacious号を発見するために「Amazon Mechanical Turk」サービスを使用することにした。

 Amazon Mechanical Turkとは、単純作業を誰かに依頼したい時に企業やプロジェクトが利用できるWebサービスのための仕組みだ。参加者は無料でアカウントを取得すれば自分の作業量に応じて報酬を得ることができる。今回の作業に関しては報酬は支払われず、参加者はボランティアとして参加することになる。

 一般にGoogle EarthやMicrosoft Virtual Earthに公開されている衛星画像や航空写真は人間が見やすいようにかなり加工されているものだ。しかしやっかいなことに今回公開された画像は加工されていない生の画像だ。そのため波しぶきや雲に阻まれることもあり、非常に見にくい画像となっている。参加者はこの中からTenacious号を発見することを目指すことになる。

 Amazon Mechanical Turkの参加ページにはTenacious号がどれぐらいの大きさで画像に映るかを示すサンプル画像が掲載されており、これを参考にできる。実際にどのように写るかは定かではないが、Tenacious号がそのままの状態で浮かんでいれば幅4ピクセル、長さ10ピクセルの物体として写っているはずだという。

 参加者は1枚の衛星画像を与えられ、もし何かが写っていればそれに印を付けて報告することが求められる。人命がかかっており、保守的に作業を行なう必要があるため、疑わしいと思った画像にはすべて印を付けるよう求められている。この作業は人海戦術による捜索を依頼しているが、参加者の中にはさまざまな画像処理的工夫を行なって捜索しようという動きも出てきつつある。


 現在のところ米国沿岸警備隊による捜索はこう着状態にあるが、サンフランシスコ群沿岸警備隊副司令官のDavid Swatland大佐は「捜索は一時中止しているが、もし新しい情報が浮上すれば、捜索されることになる」とコメントしている。

 Jim Gray氏はMicrosoftの研究機関であるMicrosoft ResearchのeScienceグループに所属する著名な計算機科学者だ。専門は大規模データベースとトランザクション処理システムで、最近では天文学者と協力してこれまでに撮影されたすべての宇宙の天体画像をつなぎ合わせて巨大な天体データベースを作成するというプロジェクトに携わっている。また、計算機科学分野でのノーベル賞と称されるACMチューリング賞の受賞者でもある。Gray氏は人工衛星画像を使用した地図サービスに大きな影響を与えた人物としても知られている。


関連情報

URL
  Amazon Mechanical Turkによる捜索参加募集ページ(英文)
  http://www.mturk.com/mturk/preview?groupId=J0XZ58STDWJZ5QY4F9M0
  Microsoft Researchによる捜索状況に関する情報ページ(英文)
  http://research.microsoft.com/news/featurestories/publish/Gray.aspx
  Jim Gray氏のホームページ(英文)
  http://research.microsoft.com/~Gray/


( 青木大我 taiga@scientist.com )
2007/02/05 12:28

- ページの先頭へ-

INTERNET Watch ホームページ
Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.