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超電導デバイスを利用したネットワークシステム
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独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は19日、超電導を利用したネットワークシステムの動作実験に成功したと発表した。
今回発表したシステムは、NEDOと財団法人国際超電導産業技術研究センター(ISTEC)によって、ネットワーク関連機器の性能向上と消費電力の低減を目的として開発されたもの。ルータ用スイッチモジュールなどで、従来システムで利用される半導体のかわりに超電導デバイスを利用。超電導デバイスではSFQ素子を用いた演算回路を採用しており、半導体回路と異なる動作原理を持ちながらほぼ同様の配線が可能。また、基板上の電気抵抗が無いため、半導体の約100倍の演算能力を持ちながらも1,000分の1の消費電力で動作するという。
実験で使用する半導体デバイスには、-269度の極低温で動作するニオブ系低温超電導デバイスを採用しているため、極低温環境の構築に液体ヘリウムを使用する必要がある。このため、一部の研究者のみしか取り扱えないという問題があったことから、ボタン押下のみで極低温環境を構築できる冷凍機を搭載。19インチラックに収納できるシステムの開発を行なったという。
同システムを利用した実験では、ネットワーク内で接続されたPCでの画像ファイル転送に成功したほか、超電導デバイス自体のスループットも40Gbpsを確保。また、10Gbpsの信号を10マイナス13乗bps以下のエラーレートでスイッチング可能であるとしている。これにより、超電導を採用した大容量ルータが実現可能であることを実証したという。
今回の実験について、NEDO電子・情報技術開発部長の富田健介氏は「ネットワークトラフィックの増大により、ネットワーク機器の消費電力の増大が今後深刻化する」と説明。超電導デバイスを採用したネットワーク機器が実現化することで、超電導の知識を必要とせず、超電導デバイスの高速かつ低消費電力の特性を活用したシステムの構築が可能となるとしている。また、2015年には超電導のほか半導体素子や光通信を併用したハイブリットルータの実現を目指すとしているほか、酸化物系高温超電導デバイスの開発も行なうとしている。
ISTEC超電導工学研究所デバイス研究開発部低温デバイス開発室長の日高睦夫氏は、「超電導デバイスが実用化されれば、100Tbpsのデータ伝送に対応するルータの場合で、半導体採用では消費電力が320kWに、重量が22トンになるが、超電導デバイス採用時では冷凍機の消費電力を含めても10kW、200kgに低減できる」と実用化における利点を説明。「超電導は、半導体や光通信では行なえない細かいスイッチングが得意なので、細かいスイッチングの有効な活用法が発見できれば、実用化も早くなる」と期待を寄せた。
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研究開発の背景
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超電導デバイスの特性
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実験の成果と課題
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SEQ回路の概要
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大容量ルータ向けSFQスイッチの概要
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動作実験の概要
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NEDO電子・情報技術開発部長の富田健介氏
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ISTEC超電導工学研究所デバイス研究開発部の日高睦夫氏
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関連情報
■URL
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
http://www.nedo.go.jp/
財団法人国際超電導産業技術研究センター
http://www.istec.or.jp/
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( 大久保有規彦 )
2007/03/19 19:44
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