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アップルが文化庁批判「私的録音録画補償金制度は即時撤廃すべき」

知財推進計画見直しについてのパブリックコメントで

 私的録音録画補償金制度において、iPodなどの携帯音楽プレーヤーを課金対象とする、いわゆる“iPod課金”について、アップルジャパンは「科学的かつ客観的証拠に基づかない理由による私的録音録画補償金制度は即時撤廃すべき」との意見を示した。この主張は、首相官邸が5月31日に公開した「『知的財産推進計画2006』の見直しに関する意見募集の結果について」という文書で、団体からの意見との一部として紹介されている。

 この文書によれば、同制度の抜本的な見直しを図るために、文化審議会著作権分科会に設けられた「私的録音録画小委員会」ではアップルジャパンを閉め出し、著作権者団体の意見のみをくみ取っていると指摘。消費者や機器メーカーの立場を無視した「欠席裁判」を進めているとして、「文化庁著作権課による一方的な行政運営には理解不能」と痛烈に批判している。


アップルジャパンが補償金制度撤廃を求める5つの理由

 こうした主張について、アップルジャパンでは5つの理由を挙げて説明している。

 1つ目は、私的複製により権利侵害を受けているとする著作権団体の主張に、科学的かつ客観的論拠が存在していないこと。アップルジャパンでは、同一家庭内で、家族が購入した著作物と全く同一の著作物をさらに購入することは非現実的で、このことについては音楽レーベルも事前に承知していることから、「私的複製からさらに料金の徴収を図るのは二重課金にあたる」ため、著作権者の要求は不合理であるとしている。

 2つ目は、私的複製によって権利侵害を受けたという主張の原因が、「複製防止技術を備えていない著作物パッケージを製造販売しているレーベルにある」とするものだ。レコード会社自らが販売する製品の不備を機器メーカーに責任するのは無責任であるとして、私的複製による権利侵害を主張し続けるのであれば、「即時に複製防止措置の付いた著作物パッケージを製造販売すべき」と訴えた。

 3つ目は、補償金制度を存続させる論理的根拠として、私的録音録画小委員会の委員2人がWIPOやベルヌ条約の「国際基準」を掲げていることだ。アップルジャパンによれば、この主張は「事実誤認」であり、補償金制度を携帯機器に対して導入しているのは、WIPO加盟184カ国のうち11カ国(6%)、ベルヌ条約批准163カ国のうち7カ国(4.3%)にとどまる。そのため、もし「国際基準」を日本に合致するのであれば、「約95%の国がとっている『補償金制度廃止』が『国際基準』である」とした。さらに、これらの事実を知りながら両委員を意図的に任命した文化庁著作権課に対して、責任を取るよう求めている。

 4つ目は、「iPodこそが有料かつ合法的なコンテンツ流通の最強の推進役となっている」という理由だ。同社は、iPodユーザーが一般的なネットユーザーよりも、3倍有料コンテンツを購入しているという国際レコード産業連盟(IFPI)の調査を引き合いに出し、iPodなどの携帯音楽プレーヤーが、違法コンテンツを流通させるP2Pサイトへの流れを防止していると指摘。そのため、「iPodなどのハードウェア機器が権利侵害の元凶」という日本レコード協会や日本芸能実演家団体協会などの主張は、事実無根であるとした。

 5つ目としては、米Appleが「世界最大のデジタルコンテンツ流通企業」であるという理由を挙げる。アップルジャパンによれば、iTunes Storeでは累計20億曲を販売したほか、音楽以外にも音楽ビデオや映画などを販売していることから、Appleは「世界で最も著作者に著作権料を納付している企業」とアピールしている。

 これら5つの理由の総括としてアップルジャパンは、「文化庁著作権課による一方的な行政運営には理解不能」との考えを提示。さらに、「もはや公平公正な著作権行政を運営する適切な省庁とは言い難い」として、文化庁は速やかに著作権行政を他の省庁に移管すべきと訴えている。


アップルジャパンは「現段階ではコメントできない」

 なお、アップルジャパンのiPod課金に対する見解としては、2007年3月に開催された私的録音補償金に関するイベントで、同社法務担当者と名乗る人物が「日本法人だけでなくワールドワイドで補償金制度を支持していない」と発言したが、公式にコメントを発表したことはなかった。

 今回発表された文書では、iPod課金だけでなく、私的録音録画補償金制度を見直すべきという主張が書かれているが、文書が提出された経緯について同社に取材したところ「現段階ではコメントできない」という回答しか得られなかった。


関連情報

URL
  「知的財産推進計画2006」の見直しに関する意見募集の結果について(PDF)
  http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/070531/iken1.pdf

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( 増田 覚 )
2007/06/05 18:58

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