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YouTubeの著作権対策、人力チェックよりも技術的解決を重視

「今秋」の導入に向けてフィンガープリント技術を開発中

米Googleコンテンツ担当副社長のDavid Eun氏

YouTubeのミッション
 グーグルは2日、「YouTube」日本版の報道関係者向けの事業説明会を開催した。米Googleのコンテンツ担当副社長であるDavid Eun氏が、著作権対策の進捗状況などを説明した。

 著作権対策について「YouTubeは誤解されているといってもいい」と指摘するEun氏は、権利者らと情報共有しながら対応していくのが重要だと強調する。Googleでは現在、権利者が自分のコンテンツを特定し、YouTubeに削除を要請するツールを提供していることを紹介し、「権利者がすべての動画を洗い出すのは不可能。拡張性や効率を意識しながら電子的ツールを提供していくのが重要」とした。

 そこで今後は、フィンガープリントによる動画や音声の識別技術を提供し、権利者に選択肢を提供していく予定だ。これらの技術によってコンテンツを識別し、「アップロードをブロックするのか、あるいはアップロードを許可してプロモーションに利用するのか、あくまでも権利者に選択肢がある」と述べ、コンテンツホルダーに対して「ネガティブな面が強調されているが、ポジティブな面もある。(YouTubeの活用を)真剣に検討していただければ」とした。

 Eun氏は、YouTubeの著作権対策が不十分との指摘がある点について、「インターネット動画は初期の段階で、コンテンツを保護する技術も初期の段階にある。最低限のレベルのテクノロジーでさえまだない状態」と認める。そのような中で「100%完璧とは考えていないが、最高の努力をしていきたい」とし、現状ではフィンガープリントがベストだとの考えを示した。

 なお、フィンガープリント技術の導入時期については、「今は『秋』という言い方しかできない」と述べるにとどまった。「完成したらすぐに導入し、当初はトライアルでコンテンツホルダーに提供する」。なお、音声のフィンガープリント技術についてはすでに開発が完了しているとし、動画についても開発を急ぐという。ただし、他社で同様の技術があれば、それを利用することも考えられるとした。


YouTubeの利用状況 YouTubeの著作権対策


JASRACらとの協議「ご満足いただけていないことは認識」

グーグル代表取締役社長の村上憲郎氏
 日本音楽著作権協会(JASRAC)やテレビ局など24社・団体と続けている協議については、Eun氏は「著作権の理念などいろいろなテーマをカバーし、どのような協力関係が可能なのか、どのような懸念を持っているのかについて多くの時間をかけて聞くのが重要」と述べるとともに、インターネットによる動画共有が「新しいメディア、新しいビヘイビアである」ことから、テクノロジーだけでなく、ビジネスのルールを確立できていないことも背景にあると説明し、時間をかけて協力関係を推進していきたいとした。

 この協議について、日本法人のグーグル代表取締役社長の村上憲郎氏は、「2月以降、定期的に著作権対策の進捗状況をお知らせしている。その間、けっしてご満足いただけるかたちにはたどりついていないことは率直に認めざざるをえないが、少なくとも進捗しつつあるということは理解していただいている」と述べた。7月31日には24社・団体と2回目の会合を持ち、フィンガープリント技術の進捗状況について説明したという。

 村上氏はまた、著作権対策への同社のアプローチとして、2つの点があると説明する。1つは、アップロードされた動画の権利者が誰なのかを、YouTube側で完璧には掌握できていない状況にあるのが正直なところだという。したがって、YouTubeが動画をチェックをして削除するという方法自体が「正しいようで正しくない」と表現した。

 そこで2つめとして、「Googleとしては、人力を使うかたちではなく、この事態を技術的な点で解決するめどを我々自身が作り出していくことのほうが、より最終的な解決に向けての大きな貢献ではないか」と強調した。



YouTubeをビジネスチャンスととらえるコンテンツ事業者も

 事業説明会ではGoogleのほか、YouTube日本版のパートナー企業であるスカイパーフェクト・コミュニケーションズ(スカパー!)や東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)、GDH、吉本興業も出席し、動画共有サイトの活用意図などを説明した。

 スカパー!執行役員専務の田中晃氏は、視聴者のコンテンツの楽しみ方が多様化しており、YouTubeとの提携もその流れだとした。「この流れは止められるものではない」として、多様なコンテンツで対応していくという。YouTubeにおいては、スカパー!は現状、プロモーション用のショートクリップの提供にとどまっているが、今後はYouTubeを活用したコラボレーション番組も展開していく。また、ドラマの第1話をYouTubeで見せたいという番組事業者もいるとして、「新しいコンテンツの見方を提供することで、多チャンネルサービスの見方を提供していきたい」とした。


スカイパーフェクト・コミュニケーションズの執行役員専務の田中晃氏 スカパー!がYouTube上で行なうコラボレーション企画「ジャパン・ダンスアイドル」の概要

 TOKYO MX取締役・技術局長兼総合デジタル局の田沼純氏は、テレビの電波ではエリアが限定されることから、同社のコンテンツを広く紹介するためにYouTubeが活用できるのではないかという判断を下したという。「民放はYouTubeのネガティブな部分を気にしてお付き合いされないようだが、ポジティブな部分に着目して出せるものは出そう」というのが同社のスタンスだとした。今後はインディーズアーティストの番組や、競馬中継などもYouTubeで公開することを予定している。また、テレビ局の強みとして、ワンセグとYouTubeの組み合わせの可能性も検討していきたいという。

 GDH取締役副社長兼COOの内田康史氏は、「日本のアニメがYouTubeに違法アップロードされることが多かったが、逆にビジネスチャンスと考えている。海外を含めた視聴者に見ていただく機会をYouTubeが作ってくれた。そこに視聴者がいるということを重要に考えている」という。世界同時配信のビジネスチャンスをYouTubeと開発していきたいとの意気込みを語った。


東京メトロポリタンテレビジョン取締役・技術局長兼総合デジタル局の田沼純氏 GDH取締役副社長兼COOの内田康史氏


関連情報

URL
  YouTube日本版
  http://jp.youtube.com/
  関連記事:GDH、YouTube日本語版に公式チャンネルを開設。アニメプロモなどを配信[Broadband Watch]
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/19006.html

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( 永沢 茂 )
2007/08/02 22:02

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