米Amazonは3日、同社が運用しているAmazon顧客向けの決済サービスを外部の開発者が利用できるようにする決済サービスAPI「Amazon Flexible Payment Service(Amazon FPS)」を公開した。現在ベータテストとして公開しており、申し込みが一定数に達した段階でいったん受付を締切り、徐々に利用者を増やしていく計画だ。
Amazon FPSを使用すると、開発者は自前で決済システムを用意する必要がない。Amazonが用意したAPIを使って強力で安全な決済システムを顧客に提供できるという。特に顧客がAmazonアカウント保有者である場合は、即座に利用を始められる。さらに支払期限の範囲を柔軟に設定したり、1セントからの超少額決済に対応するなど、名称の通り非常に柔軟な決済サービスを顧客に提供できるというメリットがある。
Amazon FPSはクレジットカード、銀行デビット、銀行口座振替、Amazon Payment口座振替に対応している。特に興味深いのは支払方法を柔軟に設定できることにある。
例えば1つの決済に関して「1カ月に50ドル以内または5回の決済を許可する」といったルールや、「8月1日以降の支払をすべて拒否する」といったルールを設定できる。ルールの対象となるのは決済金額の量、決済を行なう日付、支払限度額、決済内容の受取関係者、支払方法、Amazon FPSの決済費用を担当する関係者などである。
また、複数の少額決済をまとめて事前あるいは事後に決済することで、決済費用を割安にし、実質的な少額決済を実現できる。決済で最も重要な安全性に関しても注意が払われており、Amazonがこれまで培ってきた決済に関するノウハウを生かし、詐欺的取引を防ぐ仕組みなど、関連するリスクを最大限に減らす方策が採られているという。
Amazon FPSには利用料がかかる。例えば米国内の顧客に対する決済であれば、10ドル以上の取引の場合、クレジットカードでは決済額の2.9%および1取引あたり0.3ドル、同じく10ドル以下の場合は決済額の5.0%および1取引あたり0.05ドルとなっている。米国外の顧客に対して決済サービスを提供する場合には、さらに決済額の1%が上乗せされる。この利用料は、銀行デビットや銀行振込など他の決済方法では異なる料金が設定されている。
Amazon FPSは非常に柔軟なシステムであり、詳細を記したドキュメントは約250ページという分量だ。Amazon FPSのページには、そのドキュメントや入門ガイドのほか、C#やJava、PHP、Rubyによるサンプルコード、開発者向けフォーラムなどが用意されている。
Amazonはこれまで、Amazonアソシエイトと開発者向けのWebサービス「Amazon ECS」、人海戦術を要するタスクを外部委託する仕組みをWebサービスとして提供する「Amazon Mechanical Turk」、APIとして公開されたストレージサービスの「Amazon S3」、スケーラブルにCPUパワーを提供できる「Amazon EC2」を提供している。今回の決済サービスをWebサービスとして提供する動きはその延長線上にある。これらのサービスがそろったことで、ほぼAmazonのシステムだけで大規模なネットショッピングの仕組みを顧客に提供できるインフラが整ったと言うこともできる。
関連情報
■URL
Amazon Flexible Payment Service(英文)
http://www.amazon.com/b/ref=sc_fe_c_1_3435361_1/104-9066604-5529567?ie=UTF8&node=342430011
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( 青木大我 taiga@scientist.com )
2007/08/06 12:44
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