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私的録音録画小委員会、9月13日に「中間整理(案)」提出へ


「私的録音録画小委員会」の2007年第11回会合
 私的録音録画補償金制度の抜本的な見直しを図るために、文化審議会著作権分科会に設けられた「私的録音録画小委員会」の2007年第11回会合が、5日に行なわれた。今回の会合では、前回に引き続きこれまでの議論を整理した資料が提出された。同小委員会では、前回と今回の会合で出た意見を踏まえて、9月13日に「中間整理(案)」を提出する。

 今回提出された「議論の整理メモ(2)」では、仮に補償の必要性があるとした場合における補償金制度のあり方について、「対象機器・記録媒体の範囲」「対象機器・記録媒体の決定方法」「補償金の支払い義務者」「補償金額の決定方法」「私的録音録画補償金管理協会」「共通目的事業のあり方」「補償金制度の広報のあり方」の7項目に関する議論を整理した。

 対象機器・記録媒体の範囲に関する基本的な考え方としては、「著作物等の録音録画が行なわれる可能性がある機器は原則として対象にすべき」と、「現行制度の考え方をそのまま踏襲すべき」という案を併記した。

 また、「HDD録画機器」や「携帯用オーディオ・レコーダー(原文ママ)」など、録音録画機能が付属機能でない機器のうち、記録媒体を内蔵したものについては、「私的録音録画を主たる用途としている機器である限りは、特に分離型専用機器と区別する必要はない」という理由から、対象機器とすることでおおむねの了承を得たと記載された。

 この記述については、電子情報技術産業協会(JEITA)の亀井正博氏が「携帯用オーディオ・レコーダーというものが、どのような機器を指しているかが不明」と指摘。対象機器・記録媒体の問題は、まだ議論し尽くされていないとして、「おおむね了承を得た」と記述することへの疑問を呈した。

 このほか、録音録画を含む複数の機能がある機器のうち、どの機能が主要機能であるかが不明確なものについては、意見の一致に至っていないと記載。小委員会では主に録音録画機能を有するPCを対象機器とするかが議論の焦点となっていたが、整理メモでは、音楽CDを録音したPCを経由して携帯用オーディオ・レコーダーにさらに録音されることも多く、「最後の機器のところで補償金の支払いがあれば事実上補償されているのではないか」という意見が記載されている。

 PCを対象機器に含めるかどうかについては、日本映画製作者連盟の華頂尚隆氏が「PCの秋冬商戦に関する新聞各紙を見ると、おしなべてデジタル放送チューナーを搭載し、録音録画が簡単にできることを宣伝していることがわかる」と述べ、PCを例外的に扱ってもよいものかと問題提起した。

 この意見に対してIT・音楽ジャーナリストの津田大介氏は、「個人的な話だが、自分はテレビを録画できるPCを2台持っているが、DVDレコーダーがあるのでPCの録画機能はほとんど使っていない」と反論。一般論としても、店頭販売されるデスクトップPCの大半にはテレビ録画機能が標準搭載されているとして、ユーザーにとっては選択の余地がないのが現状であると語った。


 対象機器・記録媒体の決定方法については、現行の政令指定方式を踏襲した上で、法令で定める基準に照らして公的な評価機関の審議を経て、文化庁が定めるという方向性が示された。評価機関は、権利者、製造業者、消費者、学識経験者で構成し、透明性が確保された決定プロセスにより審議を行なうという。なお、機器・記録媒体が発売されるごとに評価機関で審査することは不可能であることから、対象となるかどうか紛らわしいものなどが審査の対象となる制度設計が必要であるとした。

 公的な評価機関については津田氏が、「おそらくこの小委員会の構成と同じようなメンバーが選ばれると思うが、現在でもPCを対象機器に含めるかどうかについて意見が対立している状況」と述べ、公的な評価機関が発足しても、意見に合意が見られない場合はどうするのかと質問。これに対して文化庁著作権課の川瀬真氏は、「合意が見られれば、その機器・記録媒体は補償金制度の対象となり、合意に至らなければ対象外になる」と回答した。

 この答えを受けた津田氏は、対象機器・記録媒体になるかグレーなものについては、評価機関に参加する消費者やメーカーの代表者が「ノー」を言い続ければ対象外になるなど、評価機関が機能しないのではと指摘。一方川瀬氏は、「現行制度でも紛らわしい機器はあるが、メーカー担当者と補償金関係者との話し合いで解決した実績もある」として、公的な評価機関を設けることで議論の透明性を確保したい考えを示した。

 補償金の支払い義務者としては、「世界各国の制度と同様に私的録音録画に供される機器や記録媒体の販売によって利益を上げている製造業者等」とすべきという意見のほか、実際に私的録音録画を行なう消費者を支払い義務者とする現行制度の考え方を維持すべきという意見が併記された。

 また、補償金額の決定方法では、著作権保護技術の影響度を補償金額に反映できるようにすることで異論はなかったと記載。具体的な仕組みについては未定だが、いずれにしても権利者、製造業者、消費者など関係者の意見を十分反映する仕組みを考える必要があるとした。

 小委員会では、今回と前回の会合で出た意見を踏まえ、9月13日に中間整理(案)を提出する。中間整理(案)については、小委員会でさらなる議論が行なわれ、10月12日に文化審議会著作権分科会で報告・了承される予定だ。


関連情報

URL
  私的録音録画小委員会(第11回)の開催について
  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/kaisai/07082708.htm

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私的録音録画小委員会、これまでの議論を整理した資料提出(2007/08/24)


( 増田 覚 )
2007/09/05 18:36

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