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著作権分科会、「ダウンロード違法化」などについて16日から意見募集

法制問題小委と私的録音録画小委が中間報告を提出

 文化庁の文化審議会著作権分科会は12日、第23回会合を開催した。分科会では、法的課題について議論してきた「法制問題小委員会」と、私的録音録画補償金制度などについて議論してきた「私的録音録画小委員会」から中間報告が行なわれ、10月16日からそれぞれの中間報告に対してパブリックコメントを募集することが確認された。


著作権法違反の「非親告罪化」については慎重な検討が必要

文化審議会著作権分科会の第23回会合
 法制問題小委員会では、インターネット上でより多くのコンテンツを流通させるための促進法制や、海賊版の拡大防止のための告知行為の防止策や親告罪の範囲見直し、障害者福祉関係などの用途に対する権利制限の見直しなどについて、法制面での課題を検討。今回、小委員会でのこれらの議論が「中間まとめ」として報告された。

 このうち、海賊版の拡大防止のための措置として、現在、著作権法違反については告訴が必要とされる「親告罪」が採用されているが、重大・悪質な犯罪に対処するため、告訴を必要としない「非親告罪」とすることが可能かについて議論が行なわれてきた。

 中間まとめでは、著作権等の侵害を一律に非親告罪化することは不適当であり、また一部の犯罪類型を新たに非親告罪化することについても、社会的な影響等を見て慎重に検討することが適当であるとしており、非親告罪化については慎重な見解を示している。

 小委員会の座長を務めた東京大学教授の中山信弘氏はこの問題について、「特許法などは既に非親告罪となっているが、特許権は一部のプロだけが関係するものであるのに対して、著作権は日本国民全体の問題になってきている。語弊があるかもしれないが、厳密に言えば著作権侵害をしたことがない人はおそらくいないだろう。国民のすべてが何らかの形で侵害に関与しているという状況で、著作権侵害を非親告罪として良いのかといった点については、これから慎重に議論していきたい」とコメントした。

 この他の問題では、ネットオークションなどに美術品や写真等を出品する際に、その商品の画像を掲載することが著作権との関係で問題となるのではないかという指摘に対して、商品の紹介のために行なう画像掲載は売主の義務として必要不可欠なものであり、許諾なしに利用できるようにすることが適当であると委員会ではまとめている。これに対して出席した委員からは、「販売目的という名目で作品を大量にネット上に公開するといったことのないように、条件や範囲を検討してほしい」という要望が挙がった。

 また、検索エンジンでWebページを収集する行為が著作権侵害となる恐れがあるという指摘については、何らかの権利制限を講じることが適当であるとまとめており、権利制限の対象範囲や、権利者が検索対象となることを拒否した場合の対応、収集したコンテンツがそもそも違法複製物であった場合の対応などの論点について、早急に結論を得るとともに具体的な立法措置のあり方を明らかにすることが必要だとしている。


「違法サイトからのダウンロード違法化」などが中間整理として報告

 私的録音録画小委員会では、補償金制度全体の見直しや、著作権法第30条の見直しについて行なわれてきた議論が「中間整理」として分科会に報告された。

 中間整理では、ファイル交換ソフトや違法サイトからのダウンロードは、権利者側としては容認できない利用形態であり、違法サイトからのダウンロードを違法化することで利用が抑制される等の効果があると思われるといった意見が挙がり、「違法化することが適当であるとする意見が大勢であった」とまとめている。

 ただし、利用者保護の観点からは、違法とするのはユーザーが違法録音録画物や違法サイトと承知の上で行なう場合に限定するとともに、罰則は設けないとしている。また、この問題については、送信可能化権や自動公衆送信の違法性を追求すれば十分であり、ダウンロードまで違法とするのは行き過ぎであり、利用者保護の観点から反対だという意見が挙がったことが紹介されている。

 また、私的録音録画補償金制度についても、補償の必要性などについて委員の意見が一致していないため、補償金制度のあり方については「仮に補償の必要性があるとした場合」というカッコ書きが付いた形となっている。対象となる機器については、基本的な考え方としては「利用実態などを踏まえ、対象機器・記録媒体の範囲を適切に見直す必要あり」とした上で、HDDレコーダーや携帯用オーディオレコーダーなどについては対象に追加すべきとする意見が大勢であったものの、PCや携帯電話など汎用的な機能を有する機器については意見が一致しなかったとしている。


 報告を受けて、分科会に出席した委員のうち権利者側からは、「数年前からいわゆる違法着うたサイトが急増しており、既に正規の配信を上回っているとも推定されている。違法サイトからの私的録音録画を著作権法第30条の範囲から除外すべく、ぜひ法改正をお願いしたい」(日本レコード協会・石坂敬一氏)、「2年前の委員会では、iPodのような機器についての指定が先送りされるという残念な結果に終わった。その時に『権利者は霞を食べて生きていけということなのか』と発言したことを覚えている。1日遅れればそれだけ不利益が拡大する。迅速な措置をお願いしたい」(作詞家・岡田冨美子氏)といった声が挙がった。

 また、日本コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)理事長の辻本憲三氏は、「適用除外の範囲については、不利益が顕在化している録音録画のみとされているが、我々の調査では音楽映像だけでなくソフトウェアもかなりの大きさに上る」とした上で、適用除外の範囲については「すべての著作物を対象とするところから議論を進めるべきだ」と訴えた。

 これに対して、イプシ・マーケティング研究所代表取締役社長の野原佐和子氏は、「補償金制度がないと権利者が不利益を被るというのが大前提となっている点について、消費者の立場からは非常に違和感がある」と発言。「たとえば、昔買ったレコードが聴けなくなり、同じ曲を聴くためにCDを買い、さらに携帯音楽プレーヤーで聴くためにまたダウンロード購入したりといったように、消費者は自分で視聴するために何度もお金を支払っているという側面もある。そうした話はなされずに、補償金の必要性だけが強調されており、消費者軽視ではないかと感じている」と述べた。

 また、主婦連合会の河村真紀子氏も、「補償金制度などの話をするときには、権利者側は諸外国や欧米の話をするが、たとえばコピーワンスの話をするときにはそういうことは言わない。広告ベースの無料放送にコピーワンスのような制限をかけているのは、世界でも日本だけ。諸外国ではそのような制限をかけなくても、権利者は十分にビジネスとして利益を上げている」とコメント。分科会の場でも、権利者側と利用者側の意見の対立が目立った。


著作権保護期間の延長については報告のみ。意見募集は16日から

 著作権分科会では、著作権保護期間の延長問題などについて議論を行なっている「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」も設置されているが、こちらの小委員会での議論はまだ途中であり、中間報告といった形でまとめられる状況にはないとして、これまでの議論の経過などが報告されるにとどまった。

 分科会では、法制問題小委員会と私的録音録画小委員会の中間報告を受け、10月16日から1カ月間、これらの中間報告に対して広く意見を募集するパブリックコメントを実施することが確認された。


関連情報

URL
  文化審議会著作権分科会(第23回)
  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/010/07101103.htm

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( 三柳英樹 )
2007/10/12 20:24

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