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「ダウンロード違法化に反対」新団体MIAU設立で協力呼びかけ


 「違法サイトからのダウンロード違法化に反対します」――。都内で18日、インターネットやデジタル技術に対する利用者の意見をとりまとめることを目的とした団体「インターネット先進ユーザーの会(Movements for Internet Active Users : MIAU)」の設立発表会が開かれた。当日は、MIAU発起人であるIT・音楽ジャーナリストの津田大介氏やAV機器評論家の小寺信良氏らが活動方針を説明し、「ネット社会に存在する消費者の総意をまとめ、実社会に伝えていきたい」などと意気込みを示した。


まずはパブリックコメントで「ダウンロード違法化」への反対意見表明

IT・音楽ジャーナリストの津田大介氏
 津田氏によれば、消費者がネットワークを自由に使えるようになったことにより、著作権侵害をはじめとする法的な問題がクローズアップされてきたという。こうした問題を解決する際、現在のところ「(ネットワークの自由を)規制する方向でしか議論が進まない」が、それはネットワークの自由を主張し、擁護する組織的主体がなかったためとと指摘。ネットワークの発展がもたらすメリットとデメリットを冷静に議論する環境を作るためにMIAUを設立したという。小寺氏も、「これまでネットユーザーの意見が実社会に反映されなかった理由は、大多数のユーザーが匿名で活動していたから。MIAUでは、ネット社会の総意をまとめ、実社会に届けたい」と語る。

 MIAUの活動としては、1)デジタル技術と法制度に関する正確な知識の供給、2)技術発展や利用者の利便性に関わる法制度への対応、3)政府報告書のパブリックコメントに対する意見提出活動、4)インターネット利用者の情報リテラシー向上の支援――が挙げられている。津田氏は、「著作権問題に関するネットの書き込みでは、不正確な知識で全く関係ない権利者団体が誹謗中傷され、著作権者と国民の間に不要な対立が起こっている」と指摘。国民に対して正確な知識を提供することで、建設的な議論を行なえる環境を整えたいとの考えを示した。

 具体的には「違法サイトからのコンテンツダウンロード違法化」「コピーワンスおよびダビング10技術の採用」「著作権の保護期間延長」といった問題について、反対意見を表明する。12月までの活動としては、文化審議会著作権分科会の「法制問題小委員会」と「私的録音録画小委員会」において、「違法サイトからのコンテンツダウンロード違法化」などに関する議論をまとめた中間報告のパブリックコメント募集に対する活動に注力する。


MIAU設立の経緯 MIAUの具体的活動

「ダウンロード違法化」の結論は妥当性に欠く

AV機器評論家の小寺信良氏
 小寺氏は「私見である」と前置きした上で、現在議論されている「違法サイトからのコンテンツダウンロード違法化」について次のような見解を示す。

 「そもそも(これらの問題を議論した)私的録音録画小委員会は、補償金の徴収方法や対象機器の範囲などを見直すことが目的。しかし、中間報告の結論は『ダウンロード違法化』と、消費者の私的複製のよりどころになっている『著作権法30条の改正』で、当初の目的は来年度に先送り。インプットされた命題に対して、出てきたアウトプットがかみ合っていない。ものすごく単純な例に考えると、音を大きくするための回路を作ろうとした時、音を入力して出てきた結果がホカホカご飯だったというようなもの。これはどう考えても回路設計のミスだが、今回の問題もこれと全く同じだと思う。」

 小寺氏は、今回の議論では「アウトプットを誘導した人は世の中にはいる」と語り、最新の議会の議事録が公開されていないため、「このような『ウルトラC』に着地した経緯は、委員会の外からはわからない」と指摘。補償金問題を議論するという当初の目的を据え置いたままで、「ダウンロード違法化」という新たな制限を追加するのは、小委員会の本来の目的を逸脱しているとして、私的録音録画小委員会が出した結論に疑問を示した。

 このほか、「コピーワンスおよびダビング10技術の採用」についても、「孫コピーができないほか、ダビング10移行時にユーザーが負担するコストも不明確。そもそも、地上デジタル放送のコピー制御ルールが不透明なかたちで決定されようとしている」ことから、反対意見を表明するとしている。

 なお、MIAUのスタンスとしては、権利者、メーカー、放送事業者と敵対せず、「消費者とデジタルコンテンツの供給者の間にWin-Winの関係をもたらしたい」というが、「仮に戦う相手があるとするならば、『悪法も法』というような世相。現在のコンテンツ市場が陥る『ルールは決めたもの勝ち』というあり方には異を唱えたい」と語った。


業界団体の“声の大きさ”に負けないムーブメントを

法政大学社会学部准教授の白田秀彰氏
 「もっと自分の意見をネット上で表明してください」と呼びかけたのは、MIAU発起人である法政大学社会学部准教授の白田秀彰氏。白田氏は、インターネット関連の法制度に関するパブリックコメントでは、「ネットワークにいる一般人の声が無視され、“声の大きい”業界団体の組織票などによって政治が進められてきた」と述べ、インターネット利用者の意見を実社会に届けることでムーブメントを起こしたいと訴えた。

 「ネットワークでは匿名に固執する雰囲気がある。しかし、それでは責任ある主体として社会に声を届けることは困難。私は1995年頃から名前も顔もインターネット上にさらして活動している。今回、MIAU発起人として政治的活動に関与しても、普通に生きていけることを身をもって示すことで、名前や顔を出して自分の考えを表明する人が1人でも増えて欲しい。もちろん、MIAUに賛同してくれる人が匿名を希望するならば強制はしない。むしろ、我々が名無しさんたちの意見の内容の責任を負担し、実社会に伝えるための代弁者になりたい。」

 なお、MIAUでは公式サイトに一般ユーザーからの意見を受け付ける仕組みを設ける予定だ。集まった意見については、「こういうような一般的な意見があると整理して、これに納得できる人の数を集計するシステムを作る」。この仕組みで実名だけでなく匿名ユーザーの声も実数として集計することで、実社会に意見表明する際の影響力を高める考えだ。


関連情報

URL
  MIAU
  http://miau.jp/

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( 増田 覚 )
2007/10/18 21:37

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