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「JEITAはコピーワンス緩和合意を破棄するのか」権利者団体が公開質問状


公開質問状を送る封筒を手にする実演家著作隣接権センターの椎名和夫氏
 音楽や映像などに関する28の権利者団体で構成される「デジタル私的録画問題に関する権利者会議」(以下権利者会議)は9日、コピーワンスと補償金制度に関する問題について、電子情報技術産業協会(JEITA)に公開質問状を送ることを明らかにした。コピーワンス緩和の前提条件という「私的録画補償金制度」を否定するJEITAに対して、その真意を問いただす考えだ。質問状の回答期限は、12月7日としている。


当初から補償金制度の必要性をめぐり、JEITAと権利者側は対立

 デジタル放送の録画ルールは現在「コピーワンス」ルールで運用されているが、ムーブの失敗など使い勝手の悪さを指摘されていた。このことからJEITAでは、ネットワークを通じたコンテンツの再配布を防ぐ一方、対応機器であればDVDなどへのダビングは自由で、コピー回数やコピー世代制限を設けない「EPN」方式を主張。一方、権利者と放送事業者はEPNによる経済的不利益を主張したため、緩和策が議論されていた。

 こうした中、8月の総務省情報通信審議会では、録画した1番組を9回までのコピー、10回目でムーブという新方式を認める第4次中間答申を提出。JEITAでも10月2日、この新方式の名称を「コピー9回+ムーブ1回(ダビング10)」に統一することを発表した。

 総務省の第4次中間答申について権利者会議は、「消費者、メーカー、放送事業者、権利者による長期間にわたる議論と、苦渋の選択ながらも相互の立場の尊重と理解があったからこそもたらされた4者の合意」と評価。ただし、コピー可能な枚数が増えれば、それだけ権利者側が被る不利益も増えるため、コピーワンスの緩和にあたっては「私的録画補償金制度による補償があくまでも必須」と訴えている。

 その一方でJEITAは5月31日、デジタル放送の録画について「どのようにコンテンツが利用されるか、想定が可能であるので、回数にかかわらず補償は不要である」とする公式見解を発表。さらに10月16日には、私的録音録画小委員会の中間整理が公表されたことを受け、「技術的にコピー制限されているデジタルコンテンツの複製は、著作権者等に重大な経済的損失を与えるとは言えず、補償の必要はない」と、あらためて私的録画補償金制度が不要であることを主張した。


権利者側「ダビング10は私的録画補償金制度が前提」

 コピーワンスと補償金制度に関するJEITAの見解について、権利者会議は「合意に関わった関係者の努力を無にするだけでなく、いたずらに消費者を混乱に陥れるもの」とし、断じて許されるものではないと批判。権利者会議に参加する実演家著作隣接権センター(CRPA)の椎名和夫氏も、「権利者と消費者が『ダビング10』ということで落としどころを見つける中、最後までEPNにこだわるJEITAの真意がわからない」。また、権利者側では補償金制度ありきで議論してきたが、「JEITAの主張はコピーワンス緩和の議論を振り出しに戻しかねない」として、真意を伺うために公開質問状を出すことになったと述べた。

 公開質問状では、JEITAが「クリエーターへの適正な対価の還元が早急に措置されることが必要」というコピーワンス緩和の前提条件に合意していたことを指摘。また、現在では私的録画に関するクリエイターへの還元制度は私的録画補償金以外には存在しないとして、JEITAが補償金制度を否定するリリースを出したことは、「コピーワンスの緩和に関する合意を破棄されるものと理解してよろしいですか」と質問した。

 さらに、このようなかたちで合意を破棄することについて、「(コピーワンス)緩和を待ち望んでいる消費者に対して、いったいどのように説明されるおつもりですか」としている。私的録画補償金を否定したJEITAの主張については、総務省の中間答申案が策定される時点で主張しなかった理由を尋ねている。


椎名和夫氏、JEITAの姿勢は「駄目だと思う」

日本映画製作者連盟の華頂尚隆氏
 9日に開かれた会見で、JEITAの姿勢を端的に表わすとどうなるかと聞かれた椎名氏は、「駄目だと思う」と回答。その理由については、「コピーワンス緩和の議論において、膝詰めで(コピー回数を)何枚にするかとなったときでもEPNを主張して参加しなかった。非常に観念的に原理原則が先行している。コンテンツ大国実現のために協力関係を作るべきだが、一年半の議論の中で中身のあることを言ってきただろうか。権利者側は真剣に考えているが、それに付いてきていただけていないというのが正直なところ」と話した。

 また、日本映画製作者連盟の華頂尚隆氏は、「映画製作者は、第三者の複製を原則禁止するコピーネバーという立場。仮に複製行為が行なわれるのであれば、補償金を徴収するのが生命線である」と主張。私的録画補償金は、権利者保護と消費者の利便性を保つ究極のバランスであると訴えた。

 「作家の立場として、ユーザー以上にコピーの重要性を認識している」という日本音楽作家団体協議会の小六禮次郎氏は、補償金制度で権利者を保護しながらコピーの自由を確保すべきと語る。ただし、現状の補償金制度では、課金対象にiPodが対象となっていない点や、補償金の分配制度が整備されていないなど現状にそぐわない部分があるとして、制度改正の必要性を訴えた。JEITAが「『補償』の必要性に関する議論が尽くされていない」という見解を示したことについては、「フェアではない」と批判した。

 日本音楽著作権協会(JASRAC)の菅原瑞夫氏は、「コピーできる機械を販売して利益を得ている責任は大きい」として、メーカーが補償金制度を負担すべきであるという考えを示した。また、日本のメーカーがヨーロッパで販売している機器については補償金を支払っていることを指摘し、「ヨーロッパでは自分の商売をするのに必要だから補償金制度に応じているが、母国の日本ではなぜ拒むのか大変不可解」と疑問を呈した。

 質疑応答では、「なぜEPNでは駄目なのか」という質問が寄せられた。これに対して椎名氏は、「EPNによりコピーが大量に作成されてしまうことで、DVD化される番組の販売が妨げられる。権利者や実演家は、DVD化されるたびに二次的な対価を得るビジネスモデルがあるからだ」と答えた。また、デジタル放送の録画で孫コピーができない状況については、「今回のコピー10回は暫定措置である」(椎名氏)と回答。今後は、2世代までのコピーを許可するかどうかなど、消費者の声を検討する余地はあると話した。


日本音楽作家団体協議会の小六禮次郎氏 日本音楽著作権協会(JASRAC)の菅原瑞夫氏

関連情報

URL
  私的録音録画問題に関するJEITAの見解(PDF)
  http://www.jeita.or.jp/japanese/hot/2007/1016/071016.pdf

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( 増田 覚 )
2007/11/09 21:58

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