米Microsoftは4日、Windows Vista Service Pack 1(SP1)で認証方法に変更を加えると発表した。海賊版の横行を阻止するために、2つの主要な抜け穴を防ぐほか、正当でないシステムを利用しているユーザーに対する罰則がより緩やかなものになる。
この変更は、2007年8月に発生したアクティベーションプログラムのサービスダウンによって、多くの正当なユーザーが認証手続きを完了できなかったトラブルを念頭に置いていると考えられる。したがって、特にハードウェアを頻繁に変更するユーザーにとって、今回の発表は朗報といえるかもしれない。
まず重要なこととして、Microsoftは海賊版との戦いで手を緩めるつもりはない姿勢を明確に示している。Windows Vistaの海賊版を流通させるために、犯罪者がしばしば使用する2つの方法があり、Windows Vista SP1ではこの2つの抜け穴がふさがれることになった。
1つは「OEM BIOSエクスプロイト」と呼ばれるもので、マザーボードのBIOSとシステムファイルを改変し、プリインストール版として出荷されているOEM版Windowsを真似る手法だ。もう1つは「Grace Timeエクスプロイト」と呼ばれる方法で、インストールからアクティベーションを行なうまでの猶予期間として設けられている「Grace Time」を悪用し、この期間を意図的に拡大して2099年までアクティベーションを行なわなくて済むようにする手法をとるものだ。Windows Vista SP1では、この2つの手法を無効にするためのアップデートが含まれることになっている。
もう1つの大きな変更点は、正当なユーザーではないとWindowsが判断した場合にとられる罰則が緩やかになるということだ。この変更は、Windows VistaとWindows Serverに適用される。
これまで、海賊版防止プログラム「Windows Genuine Advantage(WGA)」などの仕組みによって、Windowsが正当に購入されたものではないと判断された場合、料金を支払うまでWindows Vistaの一部機能が利用できなくなっていた。これは2006年以降に出荷されたWindows Vistaでとられている処置で、使用できない機能にはAeroやWindows Defenderの一部機能などが含まれている。
今回、Microsoftは方針を転換し、一部機能の停止という罰則をやめる。その代わり、そのようなユーザーに対しては、利用しているWindows Vistaが海賊版であり、正当なWindowsを購入する必要があることを繰り返し目立つ仕方で通知することになった。
Microsoftはこの方針転換によって海賊版に対する方針が変わったわけではないことを明確に主張している。しかしその一方で、これは8月に発生したWGAのサービスダウンと関連があるものと考えられる。
WGA公式ブログでは、8月に発生したサービスダウンに関して謝罪しており、11月20日にはサービスの見直しに全力を傾けていることが説明された。WGAでは、Windows Vistaが正当にインストールされているPCのハードウェアを一部交換しただけでも、正当なWindowsを購入したとみなされなくなることがあり、その場合、アクティベーションが完了できなくなるという問題がある。特にハードウェアを頻繁に交換するユーザーの間で極めて不評な機能の1つだ。
ユーザーにとっては、正当なWindowsを購入しているのにもかかわらず、海賊版を利用しているとみなされ、かつ、機能の一部を停止されるのは耐え難いことであり、今回Microsoftが方針転換したのは、こうしたユーザーの声に耳を傾けたからと考えられる。
関連情報
■URL
ニュースリリース(英文)
http://www.microsoft.com/presspass/features/2007/dec07/12-03wga.mspx
WGA公式ブログの該当記事(英文)
http://blogs.msdn.com/wga/archive/2007/11/20/learning-and-improving.aspx
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( 青木大我 taiga@scientist.com )
2007/12/05 13:32
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