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ダウンロード違法化は「やむを得ない」、文化庁著作権課が見解示す


「私的録音録画小委員会」の2007年第15回会合
 私的録音録画補償金制度の抜本的な見直しを図るために、文化審議会著作権分科会に設けられた「私的録音録画小委員会」の2007年第15回会合が、18日に行なわれた。今回の会合では、文化庁著作権課の川瀬真氏から「違法複製物や違法配信からのダウンロード行為を違法化することはやむを得ない」との見解が示された。

 違法複製物や違法配信をめぐっては、ファイル交換ソフトや違法着うたサイトなどを使って、楽曲や映画、ゲームソフトなどのコンテンツを不特定多数に公開したり配信したことで、複数の逮捕者が出ている。しかし、そうした違法コンテンツであっても、ダウンロードする側は法的責任を問われることはなかった。

 これまでの小委員会では、権利者側が、違法サイトやファイル交換ソフトなどからのダウンロードによって経済的不利益が発生していると主張。これらのサイトやサービスからのダウンロード行為について、私的使用のための複製を認める著作権法第30条の適用範囲から除外し、違法行為とすることを求めていた。

 今回の会合では、権利者側から「2005年時点での映画の違法流通被害額は800億円、その大半はネット経由。動画共有サイトでは映画がアップロードされると賞賛の嵐。一目見るとネズミ小僧を賞賛する市井の人々だが、権利者は悪代官でも悪徳商人でもない、善良なクリエイター。非常に困っている」(日本映画製作者連盟・華頂尚隆氏)、「ネット上の違法流通がこのままいくと、レコード業界はビジネスが立ちゆかない。背筋が寒くなる状況に至っている」(日本レコード協会・生野秀年氏)などの意見が出た。

 こうした中、川瀬氏は「客観的に見ても、違法着うたサイトやファイル交換ソフトで、適法配信を凌駕するような複製が行なわれていることは事実」と指摘。これらの複製行為がなければ、ユーザーの購買につながるかどうかは定かではないとしながらも、権利者に対価を支払わない“フリーライド”の典型であると述べ、「総合的に判断すれば、30条改正はやむを得ない」との考えを示した。


文化庁「ダウンロード違法化に反対する意見は踏まえている」

 なお、文化庁では10月16日から11月15日まで、これまでの小委員会の議論をまとめた中間報告に関するパブリックコメントを募集した。その結果、7,500件の意見が集まった。文化庁によれば、意見の大半は違法サイトなどからのダウンロード行為の違法化について、著作権法第30条の適用範囲から除外することを懸念するもので、うち7割はインターネット上で公開されているテンプレートを利用して投稿されたものだったとしている。

 主婦連合会の河村真紀子氏は、「消費者として気になるのは、パブリックコメントで圧倒的多数の反対意見が集まったにもかかわらず、『それはそれ』として決めてしまっていいのかということ。パブリックコメントは多数決ではないことはわかっているが、意見を送った人に説明をしっかりすべきだし、数についても受け入れるべき。権利者に対して損害を与えているのは、どう考えても最初にアップロードした人。そこをもっと真剣に叩くべきだ」として、川瀬氏の見解に疑問を呈した。

 この発言に対して川瀬氏は、「違法ダウンロード問題については、反対・慎重意見が多数出ているのは十分踏まえて整理したつもり」と反論する。川瀬氏によれば、反対・慎重意見では利用者保護を求める声が多かったとしており、仮に法改正が行なわれた場合には、政府や権利者が法改正内容の周知徹底を図ったり、権利者が適法配信サイトであることを示すマークを普及させるなど、「政府や権利者側にも汗をかいてもらい」、利用者が著しく不安定な立場に置かれることがないようにすると述べた。

 IT・音楽ジャーナリストの津田大介氏はこれまでの小委員会で、コンテンツを違法アップロードしたユーザーを送信可能化権で取り締まれば、違法サイトやファイル交換ソフトからのダウンロードを違法とする必要がないと訴えてきた。今日の会合では、コンテンツビジネスを見てきた率直な印象として、「日本のユーザーが他国に比べると間違いなくコンテンツに対してきちんとお金を払っている」という見解を披露。その上で、「多少のコピーがされても、これだけ真面目に従順にコンテンツにお金を払う消費者をもうちょっと信頼してくださいよ」と、権利保護強化を求める権利者に呼びかける一幕もあった。

 イプシ・マーケティング研究所の野原佐和子氏は、違法サイトなどからのダウンロード違法化に反対はしないという立場をとりつつも、「新しいビジネスが生まれるときには、事業者が悪意を持っていなくても違法と判断される可能性もある」と指摘。現在の著作権法が過渡期であることを踏まえた上で、イノベーションが阻害されないような自由度のある法体制が必要であると訴えた。また、小委員会の議論の進め方について、「その時点で被害を受けるかもしれないという関係者が議論している」とし、近視眼的な議論にならないよう検討して欲しいと呼びかけた。


関連情報

URL
  私的録音録画小委員会(第15回)の開催について
  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/kaisai/07120705.htm

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( 増田 覚 )
2007/12/18 19:51

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