米Sun Microsystemsは16日、スウェーデンに本拠を置くMySQL ABを総額約10億ドルで買収することで最終合意に達したと発表した。SunはMySQLの未公開株式を8億ドルの現金で取得、オプションを2億ドルで取得するとしている。この取り引きは、2008年第3四半期の終わり頃から第4四半期の初め頃までに終了する計画だ。
MySQL ABは、オープンソースデータベース「MySQL」の開発元として知られている。MySQLはインターネットの基幹部分で使用されるソフトウェアプラットフォーム“LAMP”のうちの“M”にあたる。LAMPとは、Linux、Apache、MySQL、PHPおよびPerlの略である。さらにMySQLは米Google、米Facebook、フィンランドのNokia、中国のBaiduやSina.comなど、インターネットの著名企業の基幹部分で数多く採用されている。また、個人レベルでも、Movable Typeなどのコンテンツ管理システムなどでもしばしば利用されるなじみ深いソフトウェアだ。これまでにMySQLは1億コピーが配布され、現在でも毎日5万回ダウンロードされているという。
Sunは、MySQLを買収することによって、いわゆるWeb企業だけでなく、伝統的な大企業にもMySQLの採用を推し進める考えだ。SunのJonathan Scwartz CEOは同氏の公式ブログの中で、スタートアップ企業やWeb企業のCTOは、無料でオープンソースのソフトウェアしか使用を許可しないのに対して、伝統的な企業のCIOは、サポート契約を受けられない製品の使用を許可しない傾向があると指摘しており、Sunとしてはこの相反する要求に答えたい考えだ。
そのためにSunは、MySQLに対するサポート業務をグローバルに展開する計画だ。今回の買収は2008年第4四半期初め頃までに完了予定だが、それよりも前に大企業向けのサポート業務を開始できるよう作業を進めているとしている。
Sunは、この買収によってMySQLのこれまでの成功を損なうことはないと考えている。Sunには、これまでJavaやOpenOffice.org、OpenSolarisなどオープンソースのビジネスモデルに取り組んで成功し、コミュニティを成長させ、ユーザーと開発者に投資してきたという自負がある。
これに関しては、買収される側のMySQLもよく認識しているようだ。MySQLのMarten Mickos CEOは同氏の公式ブログの中で、「Sunはオープンソースを理解している」とコメント。Sunが雇用しているフリーソフトウェアやオープンソースソフトウェアに深い関わりを持つ人たちの名前、例えばSunのチーフオープンソースオフィサーであるSimon Phipps氏、Debianのファウンダーで現在SunのチーフOSストラテジストであるIan Murdock氏、PostgreSQLのリードであるJosh Berkus氏らを挙げた。こうしたオープンソースやフリーソフトウェア文化への理解がこの買収の成功には不可欠といえる。
MySQLが買収されることによって、特に特定のOSや開発言語、開発環境が恩恵を受けるなどの不公平が生じることはないと両社は説明する。しかしMySQLが開発当初からSolarisで開発を行なっていたことは指摘した。この買収によって、MySQLはSolarisとJavaの専門家にアクセスできるようになり、両者のユーザーが恩恵を受けることになることは否定していない。しかしそれでもLinuxやWindowsなどの他のOSや、PHPやPerl、Pythonなどの開発言語がその犠牲になることは「考えていない」とも説明している。
買収後、MySQLはSunの組織に統合されることになり、MySQLのCEOはSunの上級幹部となる予定だ。両社は今後統合作業を行なうにあたって密接に協力していく。また、MySQLの従業員は引き続きSunに雇用され、これまで多くのエンジニアが行なってきたような在宅勤務もできるようになる予定だ。
関連情報
■URL
Sun Microsystemsのニュースリリース(英文)
http://www.sun.com/aboutsun/pr/2008-01/sunflash.20080116.1.xml
Jonathan Schwartz氏公式ブログの該当記事(英文)
http://blogs.sun.com/jonathan/entry/winds_of_change_are_blowing
Marten Mickos氏公式ブログの該当記事(英文)
http://blogs.mysql.com/kaj/2008/01/16/sun-acquires-mysql/
( 青木大我 taiga@scientist.com )
2008/01/17 11:53
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