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MicrosoftからYahoo!への手紙などに見る、買収提案の経緯と行方


 米Microsoftによる米Yahoo!の買収提案に関連する資料が、米証券取引委員会(SEC)に提出されており、Microsoftが米Yahoo!取締役会に宛てた手紙が公開されている。

 MicrosoftがYahoo!に対して買収を提案しているとの情報は、2007年5月に米大手経済紙のウォールストリート・ジャーナルが取り上げたことで広く知られるところとなった。それまでにもこの2年ほどの間に、Microsoftの幹部がYahoo!の幹部と秘密会談を行なったとの未確認情報が何度も飛び交っており、この噂は消えることがなかった。

 1日に公開されたYahoo!取締役会への手紙によると、2006年後半から2007年初めにかけて、両社が断続的に話し合いを持っていたことが明らかにされた。その内容としては、提携関係を結ぶことから買収の提案まで、さまざまな内容に及んだとされているが、いずれもYahoo!側に拒否されたようだ。そして、「ある時期には提携関係が道理にかなっていると思われたかもしれないが、Microsoftは、現在とれる唯一の選択肢が、我々が提案しているMicrosoftとYahoo!のコンビネーションである」と説明している。

 2007年2月に買収交渉が頓挫した理由として、Yahoo!取締役会の議長からMicrosoftに送られた手紙があったことを挙げている。その手紙には買収を拒否する理由として、Yahoo!取締役会が、同社が潜在的に業績が上昇傾向にあると考えていたことを挙げている。そのためにYahoo!は「プロジェクトパナマ」を成功させ、組織的なリストラクチャリングを行なうとしていたという。しかし、この考え方についてもMicrosoftは「1年が過ぎたが、状況は改善していない」と、はっきりと切り捨て、今回の買収提案に至った理由を説明している。

 折しも、1月31日付で米Yahoo!の前CEOで会長のテリー・セメル氏が会長職を辞任した。同氏は数カ月前から後任が決まれば退任することが明らかになっていたため、辞任自体は驚くべきことではない。しかし、今回明らかになった資料によれば、両社の話し合いが頓挫したのは、セメル氏が共同CEOとして在任していた頃だった。セメル氏が退任すると同時に、2月1日付でMicrosoftが買収提案を発表したことは極めて興味深い。


スティーブ・バルマーCEO、社員宛メールで熱弁

 巨大企業同士の買収が非常に難しいことは、歴史が示しているところだ。バランスシートや技術の統合はうまくいくとしても、企業文化の統合や、複雑な人間関係をうまく進展させていくことは並大抵のことではない。

 これに関連してSECに提出された1通のメールがある。これは、Yahoo!の買収提案に関して、Microsoftのスティーブ・バルマーCEOが従業員に2月1日付で送信したメールだ。

 この中でバルマー氏は、両社が統合することのメリットについて熱心に説明している。その文面は、あたかも買収が既に完了しているかのような口調にも受け取れる。例えば、Microsoftのインターネット分野の取り組みが進展したことについて述べた後で、「Yahoo!と一緒になり、我々は次のステップに向かうことができる」と述べたり、「一緒になることで我々は、この市場でますます独占的なプレイヤーとなりつつある相手に対して、より良いポジションに位置づける会社を作るのだ」、また「MicrosoftとYahoo!のリーダーは、統合プロセスにも密接に働くことになる」、さらには「移行期間の間、自分の役割やチームのゴールに焦点を合わせることを強く求める」などの言葉が見られる。

 Yahoo!は今のところ、今回の買収提案に対して否定的なニュアンスのコメントを発表するにとどまっている。非常に微妙な時期にこのような文書が発表されることが買収提案の成否に影響を与えるかどうかは、今後注目していかなければならないだろう。

 また、1日に開かれたMicrosoftの電話会見で、Microsoftチーフソフトウェアアーキテクトのレイ・オジー氏が、Yahoo!に対する「リスペクト」という言葉を何度も述べたのが印象的だ。例えば同氏は、「初期の頃からYahoo!は、Webの成長と進化に重要な役割を果たしてきた。我々は、そのエンジニアリングチームと彼らが成し遂げてきた仕事に対してとてつもないリスペクトを抱いている」と述べるなど、Yahoo!のエンジニアリングチームに対して最大級の賛辞を贈っている。これに対してバルマー氏は、リスペクトという言葉を同じように用いてはいるものの、オジー氏ほどの感情は感じられなかった。

 こうしたことは両氏の経営者としての立場や、性格に関わるわずかな問題ではあるが、Yahoo!の重要な立場にいるエンジニアや従業員に対しては影響を与える可能性もあるだろう。


関連情報

URL
  Microsoftのニュースリリース(英文)
  http://www.microsoft.com/presspass/press/2008/feb08/02-01CorpNewsPR.mspx
  スティーブ・バルマーCEOの従業員宛メール(英文)
  http://www.sec.gov/Archives/edgar/data/789019/000095012308001043/y47867be425.htm

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( 青木大我 taiga@scientist.com )
2008/02/04 15:25

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