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MIAUが青少年ネット規制法案を批判、「情報の検閲」など懸念表明


 インターネット先進ユーザーの会(MIAU)は9日、自民党および民主党において、青少年がインターネット上の有害情報にアクセスできないようにする法案を検討していることに対して、「情報の検閲にあたるのではないか」などと批判した。運用の実効性にも問題があるとして、法案に懸念を示した。

 この法案は、自民党では「青少年の健全な育成のためのインターネットの利用による青少年有害情報の閲覧の防止等に関する法律案」、民主党では「子どもが安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案」というもの。

 一部報道によれば、自民党の青少年特別委員会では3月19日、出会い系や自殺関連などの有害情報から18歳未満の青少年を守るため、これらのサイトの閲覧を制限する議員立法案を内閣部会に提示したという。

 この法案では、有害情報を「著しく残虐性を助長する情報」「著しく犯罪、自殺及び売春を誘発する情報」などと定義。内閣府に新設する行政委員会が、サイトの有害性を審査すると報じている。

 また、有害と判断された情報は、携帯電話各社やネットカフェ業者などにフィルタリングを義務化。サイト管理者やISPに対しては、有害サイトの閲覧を18歳以上の会員制にしたり、有害情報を削除させ、従わない場合は罰金や懲役を科すとしている。同様の法案は、民主党でも検討しているという。


有害情報の基準を国が決めるのは「情報の検閲」

 MIAUでは、これらの法案の原文を入手したとして、以下の7つの問題点を提示した。1)有害基準の問題、2)個人サイトなど非商業的運営者が対象になっている点、3)プロバイダーの講ずべき範囲が不明確かつ広範囲である点、4)フィルタリングの技術上の問題点、5)知る権利の侵害、6)教育という視点の欠如、7)経済的な問題点――。

 1)については、内閣府に新設する行政委員会がサイトの有害性を審査する点を挙げ、少人数の委員会が独占的に決定することには大きな問題があると指摘。実際にコンテンツのフィルタリングを実行する業務を民間事業者に委託したとしても、有害情報の基準を国が決めることは、情報の検閲に当たるのではないかと疑問を呈した。

 また、2)については、「有害」と判断された情報を発信する個人サイトが、商業サイトと同様に会員制サイトへの移行を義務づけられるとした場合、個人が自由に情報を発信する行為自体を阻害しかねないと批判した。


不完全なフィルタリング技術の義務化はおかしい

 4)については、携帯電話用のフィルタリングソフトが自民党のサイトを遮断したことを挙げ、「フィルタリングはいまだ不完全な技術」と指摘。その上で、フィルタリングの有効性が実証されていない段階で義務化することは、誤りであると非難した。

 さらに、5)について、フィルタリング技術は有害情報のみをピンポイントでブロックすることは困難で、有益な情報も一緒に遮断されるという懸念を提示。特にコミュニティサイトでは、サイト単位でまとめて規制される可能性が高いことから、「同世代とのコミュニティによって精神的平衡を保っている青少年に対しては、有害な対策となりかねない」と訴えた。

 今回、両党が検討している法案についてMIAUは、「言論規制という意味でも、実際の運用という意味でも、多くの懸念がある法案。このような懸念についてきちんと解決を行なってから、法案を国会に提出すべき」とコメント。今後は、法案について検討するとともに、議員へのロビー活動、法案の問題点の一般への周知などを行なうとしている。なお、この法案に関するイベントを5月1日に都内で開催する予定だという。


関連情報

URL
  ニュースリリース
  http://miau.jp/1207693923.phtml


( 増田 覚 )
2008/04/09 15:45

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