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iPodなど「録音録画が主用途」の機器を補償金制度の対象に、文化庁が試案


私的録音録画小委員会2008年度第2回会合
 私的録音録画補償金制度の見直しについて検討している、文化審議会著作権分科会の私的録音録画小委員会の2008年度第2回会合が8日に開催された。

 会合では、事務局の文化庁著作権課から今後の補償金制度についての試案が提出された。今後の補償金制度の基本的な考え方としては、補償金制度の縮小を前提としつつ、当面は経過措置として「音楽CDからの録音」と「無料デジタル放送からの録画」の分野について補償金制度での対応を検討するとしている。

 その上で、補償金制度の対象となる機器については、「録音録画を主たる用途としている機器」とすることが適当であると説明。iPodやハードディスクレコーダーなど、録音録画が主な用途となっている機器や媒体は補償金制度の対象となるが、パソコンなどの汎用的な機器・媒体は対象外だと考えられるとした。

 また、補償金制度の対象となるかどうかについて議論のある機器については、関係者間での協議によって解消しない場合には、権利者や製造者、消費者、学識経験者などから構成される評価機関により判断を行なうことが必要だとしている。

 補償金額の決定方法については、指定管理団体から文化庁への申請に基づき、文化審議会での審議を経て、文化庁の認可を受けるという現行法の手続きを維持することが適当として、金額の決定にあたっては機器や媒体がどのように利用されているかの実態調査が不可欠と説明。また、補償金管理団体については、現在は録画と録音で2団体に分かれているが、合理化などの観点から1団体にまとめることが適当だとしている。


JEITAは対象範囲の拡大に懸念、津田大介氏は説明責任を果たすよう求める

 試案に対して、電子情報技術産業協会(JEITA)の長谷川英一氏は、「補償金制度は縮小する方向と言っているが、この案では縮小・廃止への方向性が見えない。このまま制度の範囲が拡大していくのではないかという懸念がある」とコメント。また、同じくJEITAの亀井正博氏は、試案ではデジタル放送の新しい著作権保護ルールであるダビング10について、権利者からの要請に基づいて策定されたものではないため補償金制度の検討が必要だとされている点について、「権利者からの要請であるかないかといったことはどこで判断するのか」として、基準の明確化を求めた。

 主婦連合会の河村真紀子氏は、「試案をそのまま読めば、音楽CDからの録画と無料デジタル放送からの録画だけが対象だとしており、さらに新しい技術や制度が普及するまでの間の暫定的な話だと解釈できる。そうであればかなり話が整理されたと思う」として、試案には一定の評価を示した。ただし、補償金の額などについては、「音楽CDと無料放送のみが対象となるのなら、従来の機器についても下がるのではないか」として見直しを求めるとともに、地上波の放送については「公共性の高さなどを考えれば、補償金が無くなることよりもユーザーが自由に利用できることが確保されることが必要ではないか」と述べた。

 ジャーナリストの津田大介氏は、「ここ数日の報道を受けてユーザーの反応を見たが、iPodなどへの課金には少なくない消費者が抵抗を感じている」とコメント。「価格が上乗せされるということへの抵抗もあるが、消費者は合理的な理由を求めている。補償金がどのようなプロセスを経て誰の手に渡っているのかが、現状では見えていない」として、補償金制度についての説明責任を果たすことが必要だと主張。「補償金制度を維持するというのなら、きちんとした情報公開が必須で、それを行なった上でなければ対象機器を増やすといった話は消費者の理解が得られない」として、補償金制度について消費者に対する説明責任を果たすよう求めた。

 実演家著作権隣接センターの椎名和夫氏は、「試案はひとまず議論を収束させるための段階的な結論として評価している」として、補償金制度の見直しにはこれまで時間がかかっており、この段階で一旦結論を得るべきだとの考えを示した。

 小委員会の主査を務める中山信弘氏は、「補償金制度は縮小する方向としているが、現状は過渡期的な『中2階』の状態であり、そのことを踏まえた議論が必要」とコメント。文化庁では、7月頃をめどに小委員会での議論をまとめ、著作権法の改正案を国会にする予定としている。


関連情報

URL
  文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会(第2回)の開催について
  http://www.bunka.go.jp/oshirase_kaigi/2008/chosaku_rokuon_080423.html

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( 三柳英樹 )
2008/05/08 11:29

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