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MozillaのCEO来日、「ライセンス問題でiPhoneには対応できない」


 Mozilla Japanは25日、「Firefox 3」に関する説明会を開催した。Mozilla CorporationのCEOを務めるJohn Lilly氏が来日し、Firefox 3公開後の状況や、今後の方針について説明した。


パフォーマンスの向上がWebブラウザの重要な要素に

Mozilla CorporationのCEOを務めるJohn Lilly氏
 Lilly氏は、「公開後はとても忙しい1週間だった」と語り、Firefox 3のダウンロード状況を紹介。24時間のダウンロード数で世界記録に挑戦する「Download Day」については、200カ国以上から800万件を超えるダウンロードがあり、トラフィック合計では83テラバイト、ピーク時には1分あたり1万7000ダウンロードを超えるなど、予想を超える成功を収めたと語った。

 また、6月25日の時点では日本でのダウンロード数も100万件を超えるなど、ダウンロード数は順調に伸びている。ただし、Lilly氏は「数自体が重要だということではない」とした上で、「Firefoxは、インターネットの使い方に関しては、みなさんに選択肢があるのだということを啓蒙できるということが重要なポイント」とコメントした。

 Firefox 3の特徴としてはパフォーマンスの向上を挙げ、「JavaScriptのパフォーマンスではInternet Explorer(IE)と比べてほぼ10倍となったが、今後もさらに改良を続けていく」と説明。「ここ数年でWebは大きく変わってきており、Web自体がアプリケーション化している中で、Webブラウザにも求められるものが変わってきている」として、JavaScriptを多用するWebの増加に伴って、パフォーマンスがWebブラウザにとって重要な要素となっているとした。

 また、パフォーマンスの向上は、今後Firefoxがモバイルに対応していくという意味でも重要だと説明。性能ではPCに劣るモバイルデバイス上で快適にWebアプリケーションを動作させるためにも、Webブラウザのパフォーマンス向上が重要だとした。


「Download Day」では24時間に800万件以上のダウンロード JavaScriptではIEの9.3倍高速に

Firefox 3.1は2008年後半にリリース

 今後のFirefoxの活動としては、2008年後半にリリースを予定している「Firefox 3.1」、2009年以降にリリース予定の「Firefox 4」、モバイルデバイスへの対応を目指す「Firefox Mobile」、Mozilla Labsで進めている「Weave」などのオンラインサービスの4つを挙げ、それぞれ取り組みを進めているとした。

 Firefox 3.1については、さらなるパフォーマンスの向上を目指すと説明。CSS関連の向上などにより、Web開発者の生産性を高めていきたいとした。また、ユーザーインターフェイスの面でも、プライバシー機能やタブ管理、履歴管理などにおいて改善していくとした。

 また、Lilly氏はFirefox 3.1のコードネームには「Shiretoko(知床)」という日本の地名が付けられていることを紹介。Firefoxのコードネームには世界各地の国立公園の名前が付けられており、Firefox 2はカナダの「Bon Echo」、Firefox 3はイタリアの「Gran Paradiso」という名前だったが、今回はアジアから名前が選ばれたと説明した。


「Firefox 3.1」「Firefox Mobile」は2008年後半に登場の予定 Firefox 3.1の開発コードネームは「Shiretoko」

 モバイルデバイスに対応する「Mobile Firefox」も開発を進めており、2008年中には早期バージョンが公開予定だという。対象となるOSとしてはWindowsとLinuxを想定しており、「それ以外のOSについても潜在的な選択肢としてはある」と説明。「既にNokia 810にはMozillaベースのWebブラウザが搭載されているが、さらなる努力が必要だ」とした。

 Lilly氏は、Mobile Firefoxで想定しているユーザーインターフェイスのデモを行なった。モバイルデバイスでは画面が狭いため、基本的にはWebページを全画面で表示し、ナビゲーション時にのみメニューやボタンを表示するといった形式で、タッチ式のスクリーンを想定したデモを披露し、「iPhoneが究極のインターフェイスというわけではなく、選択肢があるのだということを打ち出したい」と説明。ただし、ユーザーインターフェイスについてはいくつも案があり、現時点ではまだアイディア段階だとした。

 研究部門のMozilla Labsの取り組みとしては、ブックマークや履歴などのデータをネットワーク上に保管するオンラインサービス「Weave」と、Webアプリケーションをデスクトップアプリケーションのように利用できる「Prism」を紹介。こうした取り組みはまだ実験段階だが、将来的にはFirefoxの標準機能となっていくだろうと説明した。

 Lilly氏は、Firefoxの今後の普及については、「ヨーロッパでは30%のシェアを獲得しており、オープンソースの素晴らしさを伝えることができていると思う。米国やその他の地域では10%~20%程度だが、ユーザーに対してはブルーの『e』だけがインターネットではないということを伝えていきたい」とコメントした。


Mobile Firefoxの概要 説明会ではユーザーインターフェイスのデモも披露された

Mobile Firefoxはハイエンド端末を想定、iPhoneには「対応できない」

 質疑応答では、モバイルデバイス向けの「Mobile Firefox」について質問が集中した。Mobile Firefoxのターゲットについてはハイエンド端末を想定しているとして、「我々はモバイルデバイス上でもすべてのWeb体験ができることをターゲットとしており、ローエンドの端末では対応できない」と説明。Nokiaの端末「N810」に搭載されているMozillaベースのブラウザ「MicroB」がFlashに対応しているように、Mobile Firefoxでも通常のWebアプリケーションが動作する環境を目指すとした。

 また、デモではタッチスクリーンによるユーザーインターフェイスが披露されたことから、iPhoneとの関係について質問が寄せられたが、Lilly氏は「iPhoneはクローズドな環境であり、SDKの制約によりiPhone上でFirefoxを動作させることはできない」と説明した。

 iPhone 3Gでは「App Store」という形でアプリケーションが配信できるようになるとされているが、Lilly氏は「アップルという1つの会社がコントロールしており、オープンではない。Webでは誰もが自由にアプリケーションを開発できるが、iPhoneはそうではない」と説明。「iPhoneは自分でも使っているし、気に入っているが、iPhoneはWebではない」とコメントした。

 Firefox 3.1でのパフォーマンスを向上については、JavaScriptにはまだ改善の余地があると説明。JavaScriptをさらに速くすることで、より洗練されたアプリケーションが出てくるだろうとした。また、パフォーマンスの面では、Firefoxの「Gecko」とSafariの「WebKit」が激しく争っており、こうした争いもユーザーにとって良い結果をもたらすだろうとした。

 次世代のブラウザでは、IEなども標準技術への準拠を目指すとしており、標準化が進めば最終的にはブラウザはパフォーマンス競争になるのかという質問に対しては、「そうは思わないし、標準化にもいろいろある。例えば、我々はcanvasやSVGがスタンダードだと考えているが、マイクロソフトにとってこれらは高い優先順位にはならないと思う。パフォーマンスも重要な要素だが、それ以上に重要なのはユーザーインターフェイスであり、ブラウザでどのように自分の情報を管理するのかということだと思う」とコメントした。


関連情報

URL
  Firefox
  http://mozilla.jp/firefox/

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( 三柳英樹 )
2008/06/26 20:21

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