米Googleが開発したブラウザ「Google Chrome」が、処理速度で他のブラウザを圧倒的に凌駕しているとの主張に対して、Mozilla関係者がブログで分析を公表した。
この議論に参加したのは、MozillaのJavaScriptエバンジェリストであるJohn Resig氏と、MozillaのCTOであるBrendan Eigh氏。両氏ともに、Google Chromeの性能に賛辞を贈りつつも、Google Chromeだけがずば抜けているわけではないことをデータで示そうとしている。
Google Chromeの開発チームは優位性を客観的に示すためにベンチマーク結果を公表し、Firefox、Safari、Operaに比べてChromeが圧倒的に優れているとの結果を示している。しかしこれについて、Resig氏はベンチマークテストの難しさを指摘した。
ChromeのJavaScriptエンジンである「V8」をテストするために新たに開発されたベンチマークテスト「V8 Benchmark」は、JavaScriptのパフォーマンスしかテストしない。しかも、再帰(recursive call)のパフォーマンステストに重きを置いているという特徴がある。
その他のベンチマークとしては、WebKit開発チームによって公開されている「SunSpider」があり、こちらもJavaScriptエンジンのパフォーマンスのみをテストする。また、Mozillaのベンチマークとしては、JavaScriptだけでなくDOMやJavaScriptライブラリのパフォーマンスを併せてテストする「Dromaeo」も存在する。
V8 Benchmarkでテストすると、確かにChromeのV8は、Firefox、Safari、Operaだけでなく、Firefoxの次期JavaScriptエンジンである「TraceMonkey」と比べても圧倒的に速い。しかしResig氏は、このデータはV8が再帰に関して非常に速いことを示してはいるが、全体的に速いわけではないことも指摘した。
例えば、最も一般的なベンチマークであるSunSpiderでテストした場合、Chromeは最速だったものの、Safari 4.0や、現在アルファテスト中のFirefox 3.1、現行のFirefox 3.0.1と比べて極端に速いというわけではなかった。
また、JavaScriptだけではなく、DOMやライブラリのパフォーマンスまで併せてテストするDoromaeoでテストした結果、最速だったのはSafari 3.1.2であり、 Chromeは2位。3位はTraceMonkeyで、4位にFirefox 3.0.1が続く結果となった。
Resig氏はMozillaよりもWebKitベースのエンジンが優れていることを指摘し、それでもChromeがSafariの後塵を拝していることも併せて指摘した。これはベータ版のChromeにまだ改良の余地があることを示していると思われる。
また、Eich氏は、ChromeのV8と現在開発中のTraceMonkeyをSunSpiderでテストした結果を公表した。
テストは、Mac mini上のWindows XPとMacBookPro上のWindows Vistaで行われた。その結果、TraceMonkeyがそれぞれChromeの1.28倍、1.19倍の速さで勝利したとしている。もっとも、SunSpiderはさまざまなテストから構成されており、特に再帰ではTraceMonkeyに比べてV8が10倍も速い結果をたたき出していることがわかる。
いずれにせよ、JavaScriptのパフォーマンス競争がMozillaとGoogleの競争によって一気に加速していることが表面化したのは明白だ。Google Chromeもまだベータ版であり、MozillaのTraceMonkeyもまだ開発開始から2カ月が経過したにすぎない。両者ともに今後の大幅な高速化が期待されるところだ。
関連情報
■URL
John Resig氏のブログ(英文)
http://ejohn.org/blog/javascript-performance-rundown/
Brendan Eich氏のブログ(英文)
http://weblogs.mozillazine.org/roadmap/archives/2008/09/tracemonkey_update.html
■関連記事
・ Googleが独自開発ブラウザ「Google Chrome」ベータ版をリリース(2008/09/03)
・ Firefox 3.1に搭載予定のJavaScriptエンジンがさらに高速化(2008/08/25)
( 青木大我 taiga@scientist.com )
2008/09/04 11:48
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