総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」の第8回会合が26日に開かれた。今回は、検討会のもとに設置された4つのワーキンググループ(WG)で検討された内容を報告。プロバイダーや掲示板管理者のみならず、広く国民が違法・有害情報対策に参画できるような「国民運動」も検討項目に挙がっていることが示された。
● 「自主憲章」を設定し、誰もが参画できる仕組みを
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「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」第8回会合
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検討会では7月以降、「基本的枠組WG」「自主的取組WG」「親子のICTメディアリテラシーWG」というワーキンググループに分かれ検討を進めている。
このうち自主的取組WGは、法規制ではなく、企業の利用規約や業界のガイドラインといった民間の自主的取り組みによって、違法・有害情報対策などのインターネット利用環境の整備を推進する方策を検討するものだ。
すでに通信業界4団体からなる「違法情報等対応連絡会」では、プライバシーや著作権にかかわる権利侵害情報などへの対応についてガイドラインやモデル約款などを策定し、各団体に所属する事業者がこれに基づいた対応を推進するといった取り組みを展開している。さらに9月12日からは、硫化水素自殺やネット上の殺人予告などについて、ガイドラインの改定・新規策定の可能性について検討を開始したという。
また、こうした取り組みを行うプレイヤーを拡大する必要性も指摘している。4団体に所属している電気通信事業者はその一部に過ぎないとしており、「特に、『電子掲示板等の管理者』への自主的取組への参画を実質的に拡大することと、そのことを可視化するための手法の検討が必要」だという。なお、「可視化」とは、取り組みに積極的なプレイヤーかどうかを判別できるようにすることだ。
さらには、プロバイダーなどの狭い意味でのインターネット関連事業者だけでなく、自社サイトを持つ一般企業をはじめ、ブロガーや電子掲示板の利用者など、「誰もがインターネットの利用環境整備の責任の一端を担うことを明らかにしなければいけないのではないか」とも述べている。
そのために「自主憲章」的な目標を宣言し、誰もが参画できる仕組みを提案している。具体的には、地球温暖化防止のための国民運動として2005年4月から行われている「チーム・マイナス6%」のような展開を想定している。
● 硫化水素自殺はマスコミが広めた、事件の冷静な原因分析が必要
親子のICTメディアリテラシーWGの報告では、違法・有害情報対策の基礎になる調査の必要性を訴えている。「ネット犯罪」が社会問題化する中で、違法・有害情報の流通を規制する方向に向かう流れに対して、本質的な解決策にはならないと指摘。問題の真の原因の究明のために、客観的な影響分析が必要としている。
検討会のメンバーである楠正憲氏(マイクロソフト技術統括室CTO補佐)は、「何か事件が起きると、その原因が冷静・客観的に分析されていない」として、硫化水素自殺の事例を挙げた。楠氏によると、硫化水素自殺に関する情報はすでに昨年の初めごろからネット上にあったにもかかわらず、同社が保有する検索クエリのデータを見る限り、検索件数は少なかったという。それが、テレビで報道されるや否や急増したとしている。同じく検討会メンバーの桑子博行氏(テレコムサービス協会サービス倫理委員会委員長、AT&Tジャパン通信渉外部長)からは、「報道のあり方についても連携して検討する必要があるのではないか」との意見も出た。
関連情報
■URL
インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/internet_illegal/index.html
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( 永沢 茂 )
2008/09/26 19:37
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