NASAは18日、「ディープスペースネットワーク」の最初の実験に成功したと発表した。ディープスペースネットワークとは、NASAが深宇宙での利用を目的に設計した、インターネットに似たネットワークの総称だ。
惑星間通信や探査機との間の通信では、信号の大きな遅延、中断、切断といったことがしばしば発生する。例えば探査機が惑星の裏側に入ってしまったり、太陽風の発生や長期間にわたる通信の遅れといった問題が起こるからだ。火星からの通信の場合、このような遅れは光の速さで通信しても、3分半から20分にも及ぶとされる。
このような状況でも通信できるように、NASAと米GoogleのバイスプレジデントであるVint Cerf氏が10年前に協力し、ソフトウェアプロトコル「Disruption-Tolerant Networking(DTN)」を開発した。
今回NASAでは、10月から1カ月にわたってDTNの実験を行い、成功した。データは、NASAのディープスペースネットワークで週に2回送信された。NASAは現在、ハートレイ2彗星への探査ミッションの途上にあるEpoxi探査機を火星へのデータ中継に利用し、そのほかに9つのノードをNASAのJPL(Jet Propulsion Laboratory)、火星着陸探査機、火星周回探査機に見立て、地上に設置して実験を行ったとしている。
DTNではインターネットとは違い、連続的な接続状態を想定していない。経路が見つからなかった場合にもパケットは破棄されず、それぞれのノードが次のノードと通信できるまでパケットを保持する。安全に通信できるようになった時点で、ノードはパケットを次のノードへと引き渡すことになり、最終的に情報が目的地に届くことになる。
これまで宇宙における通信は、データをいつどこへどのように送るかといった手順を手動で行っていた。しかしDTNが標準化されたことによって、すべて自動で行うことが可能になるという。
数年後、このような惑星間インターネットによってさまざまな宇宙ミッションが想定される。複数の惑星地上探査機、周回探査機、月面上の宇宙飛行士との信頼できる通信回線の確保や支援ができるようになると説明している。
関連情報
■URL
ニュースリリース(英文)
http://www.nasa.gov/home/hqnews/2008/nov/HQ_08-298_Deep_space_internet.html
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( 青木大我 taiga@scientist.com )
2008/11/19 11:37
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