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「タマネギをむくように街の変化を表示」Google Earth最新版

プロダクトマネージャーが新機能を紹介

 グーグルは3日、3D地図ソフトの新バージョン「Google Earth 5.0」についての説明会を開催し、米Googleで同ソフトのプロダクトマネージャーを務めるピーター・バーチ氏、グーグルで地図製品のプロダクトマネージャーを務める河合敬一氏が新機能について解説した。


1997年末の六本木ヒルズ付近の様子も閲覧可能に

ピーター・バーチ氏(手前)と河合敬一氏(奥)。説明は、サンフランシスコからテレビ会議を使って行われた
 バーチ氏はまず、「歴史的イメージ機能」を紹介した。これは、最新の衛星画像・航空写真だけでなく、過去の画像・写真もレイヤーとして表示できる機能。Google Earthのタイムスライダーを操作することで切り替えられ、その地域の経時的な変化を確認できる。

 「氷河が消えゆくさまや街が発展していくさまを、まるでタマネギをむいていくように表示できる」(バーチ氏)。デモでは、実際にGoogle Earthを使い、モンタナ州のグリンネル氷河が後退していく様子やサンフランシスコの街並みの変化、東京の六本木ヒルズが建設されていく前の様子が紹介された。

 これらの画像は、Googleがすでに収集していたデータのほか、政府やパートナー企業の協力で提供されたという。バーチ氏によれば、最も古いものは、カリフォルニアのごく一部の地域で撮影された1940年代の航空写真があるとしている。

 前述のサンフランシスコのデモでは1946年7月の航空写真が表示され、高速道路が建設されていない数十年前の画像があることを示した。このほか、日本を含め世界的に見ると、最古のものは1990年代のものになるという。


1997年12月31日、六本木ヒルズができる前の付近の航空写真 2002年6月2日、六本木ヒルズ建設中の様子 2007年12月31日、六本木ヒルズ完成後の状態

地球の表面の3分の2を占める海もカバー

「Ocean機能」による海底の地形表示
 続いて紹介したのは、海中を探索できる「Ocean機能」。バーチ氏は、海洋科学者のシルビア・アール氏に「現状のGoogle Earthは、地球と言ってはいるが、『Google 土』にとどまっている。地球の表面の3分の2は海なのに、Google Earthには海の情報が何もない」と指摘されたエピソードを紹介。「これまで地形を表示できたが、3分の1をカバーしているに過ぎなかった。Googleも海のことはよく知らなかった」と思い知らされたことが、開発のきっかけになったことを明かした。

 今回、海底の地形や海面を表現できるようにしたほか、「ナショナルジオグラフィック」の写真や解説、クイズなど海に関するコンテンツも用意した。なお、ナショナルジオグラフィックについては日本語コンテンツも用意しているが、多くは英語のままだという。ただし、テキスト情報だけでなく、BBCのコンテンツではYouTubeに掲載している動画も参照できるようになっており、英語がわからなくても海中の様子などを楽しめるとしている。

 なお、バーチ氏によれば、Google Earthを開発した当初は標高0メートルから下をカバーすることは想定していなかったのだという。今回、「Ocean機能」を搭載するにあたっては、「家を建てた後になって、地下室を作る必要が出てきたようなもの」と表現。コードベースでデータを整理していくことが最もたいへんな作業だったことを明かした。

 また、海底の地形データは今のところ海域の数パーセント分しか整備していないため、現状では遠洋ではかなりラフな地形になっているという。



泳いでいるサメからの眺めを体験

 「Ocean機能」では、魚が泳いでいるときに見える眺めを楽しめるのも特徴だとして、サメに付けたGPSから収集したデータをもとに、そのサメが泳いだルートを再現する様子をデモした。これは、スタンフォード大学の生物追尾チームが取得したデータを活用したもので、クジラやセイウチ、マグロなどのデータもあるという。

 データ自体はすでに公開されていたものだが、Google Earthを使って誰でも体験できるようにした。実際に海の中の雰囲気を感じることで、海に興味を持ってもらうきっかけになればいいとしており、教育にも役立つとした。

 なお、サメからの眺めは、新バージョンに搭載された「ツアー機能」によるものだという。この機能は、Google Earthを操作している状態をそのまま記録して、KML形式のファイルで保存できるものだ。ツールバーの「記録」ボタンを押すことで、地図を拡大・縮小したり、別の場所にジャンプする様子などを、ナレーション入りで記録し、独自の「ツアー」として作成できる。動画ファイルのように容量が大きくないため、メールで送信するなどして共有しやすいのも特徴だ。説明会では、ミュージシャンのジミー・バフェット氏が、同氏のハワイ公演に合わせて作成したというハワイのツアーも紹介された。

 このほか、新バージョンでは「Google Mars 3D機能」によって、「火星もサポートした」(バーチ氏)。火星の風景を同様に3Dで楽しめるもので、火星探査機(Mars Rovers)や火星着陸機(Mars Landers)の軌跡や降りた場所をたどれるほか、探査機から撮影されたパノラマ写真も見られるようになっている。


サメの追尾データも公開。KMLファイルをダウンロードすることで「ツアー」を再生可能 「Google Mars 3D機能」で火星探査機の軌跡を表示 同じく「Google Mars 3D機能」で探査機から撮影されたパノラマ写真を表示

海について知ることで、環境問題など考えるきっかけに

ブロードメディア代表取締役社長の橋本太郎氏

財団法人日本水路協会海洋情報研究センター研究開発部長の鈴木亨氏
 説明会には、ナショナルジオグラフィックの公式日本語サイトを運営しているブロードメディアの代表取締役社長である橋本太郎氏も出席。ナショナルジオグラフィックでは地理学の普及と向上を目指して、「多くの人々が地球に関心を持つこと」をミッションに活動していると説明。同社のコンテンツを多くの人に利用してもらうためのショウケースとしてGoogle Earthが優れていることを強調した。

 さらに海の存在は、地球環境や気候変動、大気汚染、雇用、食料供給などの要因であるとともに、人々の美意識にも欠かせないものだと指摘。また、「環境問題は、それ自体を掘り下げると気持ちが暗くなる。ナショナルジオグラフィックでは、地球における美しものを徹底的に見ていただいて、それによって環境問題を考えていただきたい。Google Earthというショウケースを使って提供していきたい」とコメントした。日本周辺のコンテンツも今後、充実させていくという。

 財団法人日本水路協会の海洋情報研究センターからは、研究開発部長の鈴木亨氏が出席した。同センターでは、日本近海の緯度・経度30秒(約1km)ごとに水深データをグリッド化した「JTOPO30」を保有しており、これがGoogle Earthに提供された。

 鈴木氏によると、JTOPO30のデジタルデータ自体はすでに整備されていたものだが、視覚的に表示するためには専門的な知識が必要だったという。今回、Google Earthのレイヤーとして誰でも見ることができるようになったことは画期的であり、「地球のまさにデータベース、プラットフォームとして有益なツールに進化した」と評価した。


関連情報

URL
  Google Earthダウンロードページ
  http://earth.google.co.jp/
  Google Japan公式ブログの該当記事
  http://googlejapan.blogspot.com/2009/02/google-earth.html

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「Google Earth 5.0」公開、海底探検や過去の画像の閲覧が可能に(2009/02/03)


( 永沢 茂 )
2009/02/03 19:31

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