東京都北区にある東京成徳大学中学校の入学準備説明会で15日、インターネット先進ユーザーの会(MIAU)代表の小寺信良氏が子供のケータイのトラブルに関して講演した。MIAUによると、保護者が一堂に会する場で、学校外の組織が携帯電話についての講演をするのは、おそらく全国で初の試みではないかとしている。
なお、MIAUは2008年10月、同校の中学1年生を対象にネットリテラシーの授業を行った実績がある。
● メリットもデメリットもある携帯電話
|
インターネット先進ユーザーの会(MIAU)代表の小寺信良氏
|
説明会ではまず、情報科主任であり、中学の技術・家庭担当教諭の増澤文徳氏が、同校の携帯電話に関する状況を説明した。文部科学省の通達により学校から携帯電話を排除する方向に進んでいるが、同校では携帯電話を持ってきてもいいことになっており、例年、男子85%、女子95%以上が携帯電話を所持しているという。「携帯電話を持つ前提で、どういう危険があり、どう対処すればいいのかが本日のテーマ」とした。
MIAUの小寺氏は、携帯電話にはメリットとデメリットがあり、メリットとしては「学校外での連絡、大人との折衝、友達を励ます、お礼などが言いやすい、口下手でも意思表示ができる、学習に利用できる、時刻表などの情報・ルート検索」など、デメリットには「コミュニケーション依存症、ネットいじめ(学校裏サイト)、サービス利用料の使いすぎ、個人情報漏洩、架空請求、売春・暴行」などがあると説明。「一見、メリットに比べてデメリットが大きく見えるが、デメリットはみんなが巻き込まれるわけではない。一方、メリットはどんな子供にもあるもの」と指摘した。
● 保護者が問題意識を共有することが大切
小寺氏は「子供から携帯電話を取り上げるだけでは抜本的問題解決にはならない」と語る。例えば、携帯電話を学校に持ち込まなければネットいじめが解決するとは限らない。ネットいじめの背景には必ずリアルないじめがある。そのリアルないじめを解決しなければネットいじめも解決できないという。「ネットいじめは家に帰ってからするものなので、携帯電話を学校に持っていくかどうかはあまり関係ない」。
具体的に保護者がやるべきこととして小寺氏は、「子供の利用実態を把握すること、携帯電話で何ができるかを知ること、なぜ子供がはまるのかを考えること。つまり、問題意識を共有することが大切」と提言。また、「携帯電話には必ず相手が存在するので、一家庭だけが対策しても意味がない」という。子供のルールはリテラシーの低い方にそろってしまうため、今回のように「保護者が一同に集まる機会にいっぺんに話させていただく機会はとても大切」とした。
● ネットで被害者・加害者になる子供たち
子供の利用したがる主なサービスには、プロフ、SNS、匿名掲示板、携帯ホムペなどがある。「子供たちはネット上のサービスを友達しか見られないと思って利用しているが、実際は世界中から誰でも見られる。それをわからずに利用し始めてトラブルになることがある」。例えばプロフでは、ゲストブックでユーザー同士がメッセージをやりとりすることができる。小寺氏が調査のために女子中学生のふりをしてプロフを作ったところ、宣伝もしないのに3カ月で95人からメッセージが来たが、大半は援助交際や架空請求に関するものだったという。さらに同校の生徒のプロフを見つける方法も紹介し、「膨大な数のプロフが見つかる」とした。
また、子供たちが2ちゃんねるに犯行予告などを書き込んで逮捕・書類送検された事例を紹介。子供たちはネットでは誰が書いたかわからないと思って書いているが、実際は掲示板でログデータが保存しあるので、個人が特定されてしまい逮捕につながるという。
● もっとペアレンタルコントロールを
最後に小寺氏は、保護者ができることとして「情報リテラシー教育、フィルタリングの導入、ペアレンタルコントロール」を挙げた。どれにも共通して、子供が相談しやすい雰囲気作りが重要という。「親が子供の利用実態を把握する、いわゆる“ペアレンタルコントロール”は、日本でいちばん進んでいない状態であり、反抗期に入ってからでは難しいのでその前から対処するとよい」とした。また、「入学を機に約束ごとを決めるのは有効であり、子供と利用に関する契約書を作っておくことが大事」とアドバイスした。その際、サインをしてはんこや割り印を押すくらい正式にやるのがお勧めという。
小寺氏は具体的な例として、自分の子供の携帯電話利用料金の推移グラフを示した。パケット定額制に入っているのでパケット利用料金は一定だが、着メロなどのコンテンツ利用料金が膨らみ、一時は1万円に届く勢いだったという。「子供は自分で出していないので金銭感覚は非常に薄い」からだ。そこで小寺氏は、お小遣いに1万円という上限を付け、そこから携帯電話利用料金を引くことにした。携帯電話利用料金がかさむと、その分、実際に手渡されるお小遣いが減るという仕組みだ。「子供はリアルなお小遣いが欲しいので、有料サービスを減らして節約するようになった」。
また、子供宛に架空請求などの迷惑メールが来るが、小寺氏は、知らないメールが来たら必ず自分に転送するように言っているという。「架空請求などは、ネットで調べると全く同じ文面で送られた被害が見つかるので、必ず調べるようにすれば被害に遭わずに済むだろう」。
● 「親も勉強しなければ」と保護者ら
説明会に来場していた、男の子を持つある母親は「小学校1年生のころから安易に持たせていた。フィルタリングも気にしていなかったし、プロフも知らなかった。書き込みのできるサイトなどを見て勉強しなければと思った」と語っていた。
また、女の子を持つある母親は「以前からこの学校には携帯電話を持ち込んでいいとは知っていたが、今回のような講演があるなど、しっかり指導してくれるのでよい学校だと思った。これからもっと子供の使い方を注意して見ていきたい」という。
男の子が入学するという父親は「小学生のころからフィルタリングはかけており、親としては細心の注意を払っているつもりだったが、この講演を聴いてさらに注意しなければと感じた。プロフの存在は知っていたが、中学生にもそんなに浸透しているとは驚いた」と語った。
関連情報
■URL
インターネット先進ユーザーの会
http://miau.jp/
東京成徳大学中学校・高等学校
http://www.tokyoseitoku.jp/js/
■関連記事
・ MIAUが中学生に教える、携帯メールとの付き合い方(2008/10/30)
( 高橋暁子 )
2009/02/16 19:03
- ページの先頭へ-
|