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音楽配信の権利処理作業を一元化、JASRACなどが第三者機関を設立


「著作権情報集中処理機構(CDC)」のロゴマークを持つ、NMRCの佐々木隆一氏
 日本音楽著作権協会(JASRAC)やネットワーク音楽著作権連絡協議会(NMRC)などは6日、楽曲のデジタルコンテンツ配信に関する権利処理作業を軽減する目的で、非営利の一般社団法人「著作権情報集中処理機構(CDC)」を設立すると発表した。

 CDCは、JASRACなどの著作権管理団体と、楽曲のダウンロード販売などを行っているコンテンツ配信事業者などが、楽曲の権利処理に関して行っている共通の作業を集約し、コストと作業負荷を軽減する目的で設立。権利処理に関する情報を共同で扱う第三者機関として、フィンガープリント技術を活用した楽曲特定システムの開発や、利用曲目の報告データ作成、権利関係に関する情報のハブとなるデータベースの構築などを行う。

 CDCでは、5月に実験システムを稼働するとともに、本システムの競争見積もりを実施。2010年4月の本格運用開始を目指す。

 CDCの設立発起人にはJASRACとNMRCのほか、慶應義塾大学大学院教授の岸博幸氏、ジャーナリストでCommunity SimulRadio Alliance代表の木村太郎氏、に・よん・なな・みゅーじっく代表取締役会長の丸山茂雄氏、渡辺プロダクション代表取締役会長の渡辺美佐氏が参加。幹事候補として、第一興商やドワンゴなどの配信事業者や、イーライセンス、ジャパン・ライツ・クリアランスなどの著作権管理団体が予定されている。


JASRAC常務理事の菅原瑞夫氏

設立発起人として参加する木村太郎氏
 6日に行われた設立記者会見では、NMRCの佐々木隆一代表世話人がCRC設立の目的を説明。日本でも音楽の配信事業が急成長する中で、膨大な数の権利処理作業が問題となっており、双方のデータ処理を一元化することで作業負荷を軽減できるとした。また、利用者団体と権利者団体が、共同でこのような第三者機関を作るのは「世界初の試み」だとして、「CRCが日本のコンテンツビジネスモデルを大きく成長させるための礎になることに期待している」と語った。

 JASRACの菅原瑞夫常務理事は、「CDCを一般社団法人としたのは、この事業自体で営利を目的とするのではなく、各社や団体の処理を円滑にすることが目的」と説明。CDCが設立されることのメリットについては、「配信事業者は1000社、1万以上のサイトがあり、各社が同じ作業をしている。新曲を配信しようと思うと、まずその曲がどの著作権管理団体で管理されているのかを調べて、さらにそれぞれの団体のデータベースで楽曲のIDなどを調べる必要がある。こうした作業を、1カ所で調べられるようにすることでコストや手間が軽減できる」と語った。

 菅原氏は「こうした処理が進まないから、配信ビジネスが進んでいないといった報道があったが、音楽の配信ビジネスは順調に伸びており、むしろ進んでいるからこそ実務面でこうした取り組みが必要になった」と説明。また、「将来は映像の権利処理も目指すといった報道もあったが、映像については考えていない」とし、「大きな流れとしては同じ方向かもしれないが、映像についてはその分野の方たちが検討すべきこと。ただ、こうした取り組みはCDCが初めてなので、パイロットケースとしては参考になると思う」と語った。

 発起人として参加した木村太郎氏は、「発起人の顔ぶれを見ると、よくこれだけうるさい人たちを集めたなという印象」と語り、自身は「ジャーナリストという肩書きだが、コミュニティ放送の関係者として参加していると認識している」と説明。コミュニティ放送でも1日に300曲程度の曲を放送しており、これを全曲報告するとなると専任のスタッフが必要となるため、フィンガープリントなどの技術的な処理ができないかと考えたが、億単位の費用がかかるため断念したというエピソードを紹介。「こういう機構ができるのは大歓迎。全曲報告にいずれなるというのは時代の趨勢で、小さなラジオ曲もこれによって助かる」とコメントした。


関連情報

URL
  日本音楽著作権協会(JASRAC)
  http://www.jasrac.or.jp/
  ネットワーク音楽著作権連絡協議会(NMRC)
  http://www.nmrc.jp/


( 三柳英樹 )
2009/03/06 15:16

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