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IT市場での引きこもり脱出へ、夏野剛氏らが「超ガラパゴス研究会」


「超ガラパゴス」戦略のフレームワーク(IT国際競争力研究会副委員長・芦辺洋司氏のプレゼンテーション資料より)

検討の視点とアプローチの例(IT国際競争力研究会副委員長・芦辺洋司氏のプレゼンテーション資料より)
 NPO法人ブロードバンド・アソシエーションは、「IT国際競争力研究会(俗称:超ガラパゴス研究会)」を設立し、10日に第1回会合を開催して議論を開始した。委員長を慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏、副委員長を日立コンサルティング取締役の芦辺洋司氏が務め、有識者やIT業界関係者、アナリストらが参加して、日本のIT企業の国際競争力を強化するための提言をとりまとめる。

 「超ガラパゴス研究会」の設立趣意書において夏野氏は、日本の携帯電話は世界でも例を見ない高度なサービスが提供され、ブロードバンド普及率でも世界トップレベルである一方で、携帯端末メーカーのシェアなどでは「世界的に見たIT企業のプレゼンスは低い」と指摘。日本が世界市場に進出できない原因の1つとして、「日本だけの特異な進化を遂げすぎ、世界で通用しない」という「ガラパゴス論」を挙げている。しかし、「特異であるということはそれだけ差別化ができるということであり、見方によっては強みである」とも指摘する。

 芦辺氏は、こうした「ガラパゴス化」について、1)新市場において、企業は急成長する内需に対する拡販ばかりに目を向け、外需(グローバル市場)に対する展開を怠る、2)日本では、国内の高度なニーズばかり見て、商品・サービスを適合させていく結果、これらが進化しすぎる傾向がある、3)各企業が国内市場のシェア獲得を競っている間に、海外では日本とは異なったデファクトスタンダードが決まり、拡大・発展していく、4)気が付いた時には、日本は世界の市場構造(世界標準)から大きく取り残され、外需に目を向けた時には、すでに時期を逸している――との側面を挙げ、「このままでは、日本企業は日本市場にしか適合しなくなってしまう」と説明する。

 これに対して芦辺氏は、閉鎖的な環境で独自の進化を遂げてしまったという「ガラパゴス悲観論」ではなく、視点を180度変え、「日本は先進的な進化を遂げており、ガラパゴス化は、それを世界に発信する絶好のチャンス」とみる「超ガラパゴス」という考え方を提示。これを実行することで、世界に通用するICT産業を戦略的に生み出すことができると訴える。

 「超ガラパゴス研究会」では、国内市場における「引きこもり」からグローバル市場へ脱出するための方向性として、1)グローバル規格を抑える、2)日本の良さを世界で生かす、3)全く新しい市場を創造する、4)既存商品で優位性を発揮する――という4つの視点で、「超ガラパゴス」を実現するために求められる施策案を明確化し、政府や企業に提案することを目指す。夏野氏は、年内にも提言をとりまとめたい考えだが、具体的なスケジュールは、5月中旬開催の次回会合で詰める予定だ。


関連情報

URL
  ブロードバンド・アソシエーション
  http://www.npo-ba.org/

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( 永沢 茂 )
2009/04/13 19:15

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