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日本文藝家協会、「Googleブック検索」の和解案に抗議声明


日本文藝家協会は「Googleブック検索」の米訴訟和解案に抗議声明を発表した
 日本文藝家協会は15日、米Googleの書籍検索サービス「Google Book Search(Googleブック検索)」を巡る訴訟の和解の結果、権利者が何らかの措置を講じなければ著作権侵害行為が公然と続けられてしまうとして、米Googleに対する抗議声明を発表した。

 Googleでは、世界各国の図書館や出版社などと提携し、スキャンした書籍を閲覧できる「Google Book Search」サービスを展開している。図書館から提供を受けた書籍については、著作権保護期間内の書籍は本文の一部のみが検索結果として表示されるだけだが、保護期間が切れた書籍については内容の全文閲覧が可能となっている。

 米Googleでは、図書館からスキャンした書籍のうち、著作権保護期間内であっても絶版または市販されていない書籍である場合には、全文閲覧を可能とする計画を打ち出したが、米国出版社協会(Association of American Publishers)などがこれに反対。同協会などが2005年にGoogleに対して集団訴訟を起こしたが、2008年10月に和解に合意した。

 和解により、著作権の保護期間内である書籍についても、絶版または市販されていない書籍であれば閲覧可能となり、Googleは著作権保護期間内の書籍の使用により得た全収益の63%を権利者に支払うことなどが決められた。また、この和解は「米国著作権を有するすべての人物が含まれる」とされている。著作権に関する国際条約の「ベルヌ条約」により、加盟国で出版された書籍は米国でも著作権が発生するため、日本の著作権者にも影響がある。これに伴い、米国訴訟の和解管理者は日本の著作権者に対して、2月24日に新聞広告などで通知を行い、和解に同意するかどうかの意思表示を5月5日までに行うよう求めている。

 日本文藝家協会では米国訴訟の和解案について、「米国内においては一定の評価を与えられるかもしれないが、私たち、外国の著作権者らにとっては、その手続きおよび内容はまったく承服できないものである」と抗議。権利者への通知も一部の新聞・雑誌に各1回広告が掲載されたのみで、何もしないままであれば和解に同意したと見なされるという手続きなどに対して、「私たちの権利は、今や米Googleの違法行為によって踏みつぶされそうになっている」と訴えている。

 また、和解案は米国の法律・訴訟手続き上は有効なものであっても、和解案の影響は世界各国に及び、各国の著作権者を米国の法律・手続きによって一方的に拘束する極めて不当なものだと指摘。当該書籍が絶版であるかどうかの判断も米Googleが決定し、著作権者が異議を申し出なければ覆らないということも、日本の著作権者には不当そのものだとしている。


 日本文藝家協会としては、書籍をデジタル化して検索可能な状態にすることに反対しているわけではなく、デジタル化・データベース化への対応は急務となるだろうと認識しているが、今回の和解案は米国外の著作権者が協力できるような性質のものではないとして、強く反対するとしている。

 一方、和解案については強い反対意見を有しているものの、現状のままでは日本の著作権者が不利益を蒙ることが懸念されるとして、当面の最低限の防衛策として、Googleから提示された和解案に応じた上で、個々のデータを削除する要求を選択するように勧めることにしたとしている。ただし、これは米Googleの姿勢を容認するものではなく、Googleの日本法人に対しても日本での書籍デジタル化にあたっては、日本の著作権法を遵守することを求めるとしている。


関連情報

URL
  グーグル・ブック検索についての声明(PDF)
  http://www.bungeika.or.jp/pdf/statement_for_google.pdf
  日本文藝家協会
  http://www.bungeika.or.jp/

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( 三柳英樹 )
2009/04/16 12:52

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