英国の知的財産に関する戦略諮問機関(SABIP)は5月29日、「Copycats? Digital Consumers in the on-line age」と題する報告書を発表した。ユニバーシティカレッジロンドン(UCL)の情報行動評価研究センター(CIBER)との共同調査によるもので、違法ダウンロードによる経済損失の影響などを指摘している。
この調査は、英国におけるインターネットユーザーの行動とその潜在的影響を、ビジネスの側面および政府の政策に対する側面から分析したもの。この種の調査として、著作権について全年齢にわたるものとしては初であるとしている。
報告書ではまず、近年ブロードバンドネットワークが普及した結果、例えばMP3ファイル200個を5分で送信できるようになったり、DVDのコンテンツでも3分で送受信が可能になったほか、英国の代表的作家であるチャールズ・ディケンズの全作品が10分未満で送受信できることなど、時代の変化を指摘している。
そのような状況の中、報告書に対して英国の知的財産担当大臣のDavid Lammy氏は、違法ダウンロードで毎年数百万ポンドもの経済的な損失を生じさせ、ビジネス上深刻な問題となっており、イノベーションにもダメージを与えていると指摘。政府も、何らかの対策が必要だとして検討していることを明らかにした。
他方で、違法ダウンロードの問題は国内の問題にとどまらず、国際的な問題であり、国家間の協力が必要であるとも指摘。居住地にかかわらず罰則を科すことができる制度などを導入することも検討すべきとの考えを明らかにした。また、未成年者に対する教育は当然行うとしても、成人に対する啓発活動を重視すべきことも指摘している。
報告書によれば、あるP2Pネットワークでは、平日の昼間の時間帯において、130万ユーザーがコンテンツ共有状態にあるという。仮に各ユーザーが1日に1個のファイルをダウンロードしたとすると、年間で47億3000万ファイルがダウンロードされる計算になり、金額に換算すると120億ポンドになるという。
経済界だけの問題ではなく政府の政策レベルの問題となっていると調査は指摘しており、今後の政府の対策が注目されるところだ。
関連情報
■URL
ニュースリリース(英文)
http://www.sabip.org.uk/home/pressrelease/2009/pressrelease-20090529.htm
( Gana Hiyoshi )
2009/06/01 14:26
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