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【連載】

電子メールマガジンの作り方




最終回:自分のメディアを持つということ

 いよいよ、最終回です! テクニックや業界事情などにつきましては、現時点で私の知っていることはほとんどすべて、前回までにお話したつもりです。あとは、皆さんがこれまでの人生の中で培われてきたことを、それに興味/関心のある人に対して発信していくだけです。
 こんなテーマじゃ、人は少ないだろうなぁ、と思うものであっても、聞きたい人は必ずいるはずです。是非頑張ってください。

 また、途中からこの連載を読み始めた方は、ぜひ通しでご覧ください。

 では、最終回はちょっと抽象的かもしれませんが、「自分のメディアを持つということ」の意味を考えてみたいと思います。

●自分でメディアを持つコストの比較

 '80年代まではミニコミ誌が全盛でした。小学校のクラス新聞や高校の部活の記録集(陸上部だったので記録集は相当厚いもので100部くらい刷っていました)などは謄写版印刷や流行り始めた10円コピーでよく作ったものでした。
趣味でミニコミ誌を発行していた人も結構いたと思うのですが、書き起こし・印刷・製本・紙折り・封入・郵送料と一連の流れを追っていくと、コストは一通送るごとに200円を越えたものです。
切手を趣味にしている人たちの世界でも、最初の内は、情報を発信したいという情熱があるため、赤字を抱え込もうともひたすら走ることができるのですが、徐々にマンネリ化してくると、遅刊が当たり前になり、いつのまにか発行されなくなってしまうミニコミも多数ありました。

 こういった昔と「メルマガ発行環境の整った」現代を比べてみて欲しいのです。

 確かに人気のあるメルマガを出すことはたやすいことではありません。しかし中身の充実だけを考えたくても、印刷や発送作業、お金の管理で集中しきれなかった昔に比べて、現在はコンテンツ作成にかなりの作業時間を割り振ることができるのです。これはたいへんな進歩です。加えて、ミニコミでは多くて1,000人。少ないと20~30人くらいにしか情報の伝達ができなかったのが、今や1,000人は当たり前。1万や10万を越える読者も集められ、しかも配送にかかるお金がほとんど無視できます。

 情報を出したいと願う人にとっては、まさに恵まれた時代だといえます。

●自分のメディアを持ってみませんか?

 私が言いたいことはただ一つです。こんなに恵まれている現代において、情報発信をしないのはもったいないのではないだろうか? ということです。
 INTERNET Watchをごらん頂いている皆さんの中には、メルマガというのは読むものだと決め付けている方はいらっしゃいませんか? メルマガは使い方によっては、あなたの想いや思考を実現化する手段になるのです。人には多かれ少なかれ「情報発信欲」という欲求があり、これを満たすことで自己実現が感じられると思います。

 たとえばプロ野球試合結果への感想、CGIに関すること、ネットビジネスについて…などなど、僕は切手以外にも色々と情報発信したい内容があるけれども、実現できなくて困っています。きっと皆さんもよくよく考えてみると、情報発信したい内容があるのではないでしょうか。そのときはぜひこの連載を思い出して読み返してみてください。

●メルマガ発行のきっかけを聞く! 読者にインタビュー その1

さて、今回は連載中にメールをいただいた読者の方にお話をお伺いすることにしました。まず、インタビューに応じてくださったのは、「げーむくりえいた になってみない?」というメルマガを以前から発行されている、たにぐちさんです。



キッテコム:たにぐちさんは、シェアウェアの開発も含めて知る人ぞ知るウェブマスターだと思いますが、メルマガを発行されたのはいつ頃ですか?
たにぐち:実は今年に入ってから始めました。'99年2月です。

キッテコム:連載の中で、どのあたりが参考になりましたか?

たにぐち:全体的にとても参考になったのですが、特に「人気のあるメールマガジンを作る」や「長く続けるコツ」のところは大変参考になりました。メールマガジンを奇麗に見せるコツや、奇麗な絵文字など表面的な講座はいろいろなところで行なわれていますが、やはり発行者にとって一番大変なのは、長く発行を続け、人気をキープすることだと思います。インタビューでは、実際に長く続けておられる方々や人気のあるメールマガジンの発行者の方々のとても重みのある言葉が聞け、発行作業で参考になりました。

キッテコム:僕にとってもたいへん刺激的な経験になりました(笑)。では、逆に、今回の連載で取り上げなかったテーマで、知りたかったことはありますか?

たにぐち:次は実際にメールマガジンを発行している皆さんが、マガジンの発行に際して工夫していることや、苦労したこと、原稿作りのやり方やネタ探しの方法など、入門書では学ぶことのできないようなことを知りたいですね。


キッテコム:今までに読者とのやりとり等で困ったことはありませんでしたか?

たにぐち:幸い、私の読者の皆さんは親切で良い人ばかりで、問題が起こったことはありません。作業的な問題ですが、読者にも積極的に参加していただけるようなマガジン作りを心がけているため、投稿などを常時さまざまな形で募集しています。大変嬉しいことに多くのメールをいただけるのですが、それらのメールを整理したり返信したりといったことがままならず、メールマガジンへの掲載を忘れてしまったり、返信を忘れてしまうことがありました。今まではこれほど多くのメールをやり取りしたことがなかったので、とても戸惑うとともに、自分が情報発信者になったということを初めて実感しました。しっかり整理して管理していかないといけませんね。


キッテコム:うーん、僕にとっても実は結構耳の痛い指摘ですね。ところで、たにぐちさんのメルマガの内容は専門的ですが、どういう気持ちで現在の内容の発信をしていこうと思われたのですか?

たにぐち:専門学校と現在市販されている入門書への反感というのが、発行の動機です。クリエイターを目指す人たちにとって最大の難関は、プログラム言語です。幸い、私は勉強を始めたのが早かったので、専門学校に入学する頃には殆ど不自由はなかったのですが、学校に来て初めてプログラム言語に触れる友人で理解できる人は0に近いくらいでした。独学で授業に追いつくために入門書を買うのですが、これも似たり寄ったり。何が彼らをこんなに苦しめるのかというのを考えてみると、説明が足りないことだったのです。苦労して習得していくことが理想なのも分かってはいますが、それよりももっと多くの人が自分の考えたゲームを形にしてもらいたい、もっと自由に作ってもらいたいと思っています。そこで、書籍で何冊になろうが何十冊になろうが、他の入門書が1ページで済ませている説明を、10ページでも100ページでもやろうじゃないか。特に、命令を紹介するだけでなくどうやって使うのか、なぜそんな命令があるのか、どうして便利なのかなど、「なぜ、どうして」を徹底的に説明する形を取ろうと思いたちました。それには、メールマガジンというメディアがぴったりだったのです。


キッテコム:最初に既存のものへの反感ありきですね。結構僕がキッテコムを出したときに似てるかもしれません。既存メディアのやりかたに失望したのが僕がキッテコムをはじめた動機です。ところで、たにぐちさんは5年後、どんなメルマガを出していきたいですか?

たにぐち:この8月から、「げーむくりえいた になってみない? 第2期」という新しいマガジンを発行し始めました。私のマガジンは連載形式なので、最初から読まないと内容についていけません。しかし、すでに2月から始めた連載は70回を越え、バックナンバーでも追いつけないほどの量になってしまったため、もう一度連載の第1回から読めるように発行しています。通常は1期と2期で発行されるマガジンは違うのですが、週に2回、1期にも2期にも同じマガジンが発行されます。1期生の皆さんと2期生の皆さんがメッセージをやり取りできるような場になっており、今後も、連載を続けて第2期も付いてこれないほどの量になったら 第3期、第4期と続けていくつもりです。そして、5年後には一つのメールマガジンの中に 1期生から3期生、4期生までいて、この交流の場で5期生が分からないことを質問すると、1期生や2期生がサポートに回るなど、先輩と後輩がコミュニケーションをとれる、本当の学校みたいな場が提供できればいいなと思っています。


キッテコム:そんな使い方もあるんですね! ありがとうございました。

<<上でご紹介したメールマガジン>>

誌名  :げーむくりえいた になってみない?
発行部数:1,800部
配送方法:まぐまぐ
http://park.coconet.ne.jp/xyz/create/index.asp

誌名  :げーむくりえいた になってみない? 第2期
発行部数:150部
配送方法:Pubzine

●「メルマガの発行は手強い相手」 読者にインタビュー その2

 この連載を読んでメールマガジンの発行を決意された方がいたら、ぜひいろいろとお話をうかがってみたいと思っていました。コンサルティング会社を経営されている綾田さんは、まさにこの連載を見てメルマガ発行を決意された方とのこと。さっそくお話を伺うことにしました。



キッテコム:綾田さんはインターネットで情報発信(Webなども含む)をされてどれくらいですか?
綾田:ちょうどネットに登場してから3カ月になります。メルマガ発行のきっかけは、必要に迫られてと言った方がよいかもしれません。自分のホームページを開設するまでに相当苦闘があったのですが、未知なる方々とのコミュニケーションができると言う夢が叶うのだという思いで頑張りました。ところが、開設してみると、頭で描いていたようなような展開ではなく、ほとんど反応がないのです。これは何かしないとダメだと思ったのがきっかけです。


キッテコム:確かにWebというのは、作ることも利用者への告知もパワーがいりますね。メルマガだと両方がある程度まではいっぺんにできます。そこを考えると、むしろWebでのコミュニケーションの方が難易度は高いかもしれませんね。

綾田:私の経験でもそうでした。

キッテコム:綾田さんが一番訴えていきたいことはなんでしょう?

綾田:自分のライフワークとして「自分づくり工房」を3年かけて手作りで建築してきましたので、その思いや生き方を伝えたいのが最初の目標でした。しかし、メルマガを発行させていただいて、コミュニケーションする中で、若い人たちの痛みやもがきが肌で少し解ってきました。社会・市場で自分の存在や価値を創って行かなくてはならない時に、過去の企業論理一辺倒の生き方から見ると、落ちこぼれ同然だった私の生き様や、ノウハウをメッセージさせていただくことによって、少しは戸惑いや不安を解消するのに、役立てるのではないかという思いがしています。「独立自尊を求める人の応援歌」をキャッチフレーズにして、メッセージしていこうと思っています。

キッテコム:情報発信するときに、つまずいたことはありましたか?

綾田:これはもう大変でした。初心者なら多くの人が経験することかもしれませんが、発行したいと言う気持ちがあっても、ノウハウがあまりに少ないのです。私の場合、すでに提供されている情報がまったく自分の悩み解決に役立ちませんでした。ですから私にとって、メルマガの発行はなかなか手強い相手で、いったんはあきらめてしまいました。そんなとき、ふらふらとインターネット上でWebを見ていたらこの連載に出会ったのです。「お気に入り」に追加して読んでいくうちになぜか、「よしやるぞ」という挑戦心がわいてきて、このメッセージに付いていけばうまくいくのではないかという思いが、発行決意につながりました。
取り組んでみると、もやもやしていたことが嘘のようにできるんです。思いかえすと、テクニックではなく、発行する魅力を色々な切り口で実際のメルマガ紹介を通してメッセージしてくれたと言うことが非常によかったと思います。発行したいと思っている人、すでに発行している人も学びたいことではないでしようか。


キッテコム:軌道にのってくると、新たな課題や問題もでてくると思います。なにか読者とのやりとりなどで困ったことはありますか?

綾田:まだ、発行部数が少ないので困ったことはあまりありません。ただ、メールで購読者が相談をしてきてくれたとき、返信してもなにも返ってこないことがあり、それはちょっとこたえますね。とはいえ、キッテコムさんが書かれているように、この活動を継続していかなければいけないと言う責任は、徐々に重くなってきますが、新しい私の励みになっています。


キッテコム:現在、困っていること、また連載で取り上げなかったこんな内容を知りたいことなどはありますか?

綾田:これからメルマガを発行したいと思って迷っている人はどんどん増えてくると思います。私のとしては、今後継続して行く上で大事と思われるマンネリ対策・インタビュー人脈の作り方・コンテンツのフレッシュアップ法・メルマガのコミュニケーション作法などを知りたいですね。一般社会とは違った手法やルールが必要な気がしていますが、まだ私には解りません。

キッテコム:最後に、5年後、綾田さんはどんなメルマガにしていきたいか聞かせてください。

綾田:技術の進歩は、私たちの想像を超えるでしょうが、生涯現役を目指す私としては、今の気持ちを持続させ独立自尊の生き方の魅力と、その壁を乗り越えるお手伝いをしていきたいと思います。


キッテコム:ありがとうございました。

<<上でご紹介したメールマガジン>>

誌名  :自分マーケティング論【時間は人生!】
発行部数:900部
配送方法:まぐまぐ
http://www.bii.ne.jp/~tops/

誌名  :「自分づくり工房」奮闘記
発行部数:320部
配送方法:まぐまぐ

誌名  :週刊スピリット通信
発行部数:130部
配送方法:Macky!・CocodeMail・Pubuzine

●最後に

 連載を書きながら勉強した点も多かったですが、現時点で自分の知る限りのことは書き留めたつもりでいます。インタビューに応じてくださいました各メルマガ発行者の方のおかげで、よりリアルな誌面にもなったと思います。永らく連載をご愛読くださり、ありがとうございました。

●ライター略歴

吉田敬(よしだたかし)

 新宿区四谷在住・都内の出版社に勤めるサラリーマン・31歳
 大学の専攻は法律ながら、CGIやインターネットが大好きなため、土日曜大工感
 覚で趣味の切手のホームページ「キッテコム」を1995年に立ち上げる。切手と
 いう限定的なテーマにもかかわらず、郵便を出すときに貼れる綺麗な切手の発
 売日を漏らさず知りたいという人々のニーズの元、HPへのアクセス、メルマガ
 の会員数(1万5千人超)ともに増えつづけている。

 ベンチャー企業を立ち上げている友人の「切手以外のテーマもやってみなよ」
 の一言にのせられて、1999年は一般的なテーマを主題にしたホームページも作
 成して力試し中。今後ともご支援ください。

 切手のHP「キッテコム」 http://kitte.com/
 まいぺーじ(スケジュール管理) http://www.mypage.ne.jp/
 広告付きアクセスカウンター http://www.count.ne.jp/

[Reported by webmaster@kitte.com]

(99年8月12日)


バックナンバー

第1回:あなたも、電子メールマガジンのオーナーになろう!('99/0527)

第2回:どれが人気!? 電子メールマガジンの発行サービス比較('99/0603)

第3回:人気のある「メールマガジン」を作る秘訣('99/0610)

第4回:長く発行を続けるための作業テクニック(その1)('99/0617)

第5回:長く発行を続けるための作業テクニック(その2)('99/0624)

第6回:「メールマガジン」のインターフェイスを考えよう(その1)('99/0701)

第7回:「メールマガジン」のインターフェイスを考えよう(その2)('99/0708)

第8回:「メールマガジン」のプロモーション(その1)('99/0715)

第9回:「メールマガジン」のプロモーション(その2)('99/0722)

第10回:「メールマガジン」のプロモーション(その3)('99/0729)

第11回:「メールマガジン」に広告をとるには('99/0805)


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