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【連載】

電子メールマガジンの作り方




第5回:長く発行を続けるための作業テクニック(その2)
――意外に難しい定期刊行、欠刊なしの発行テクニック――

 これまでの連載で、掲載内容と発行間隔をどのように決めるかが、長くメールマガジンを発行していけるポイントだというお話をしてきました。前回は、掲載内容について考えてきましたが、続いて、発行間隔と校正について考えてみようと思います。

●発行間隔について考えよう!

 メールマガジンを発行するにあたって、自分で原稿を書いたり、新しい企画を考えたりと、さまざまな仕事が出てくると思います。意外とやることは多いものですが、せっかくの発行が単に苦痛になってしまっては元も子もありません。まずは、掲載間隔についてちょっと考えてみましょう。

 個人でも新鮮な情報を素早く届けられるのは、電子メールを利用する大きなメリットです。中には、毎日がんばろう!という人も出てくるかもしれません。

 みなさんの中には、仕事や学業などを抱えている人も多いと思います。もし、毎日発行しようとした場合を考えてみると、休みをとるのは難しくなるのは容易に想像できますね。ならば、学業や仕事がないオフに発行しようと決めた場合、休日出勤やなんらかのイベントのあった日にはどうするか考えてみましょう。また、長期旅行に行く場合にどうするかと言った問題も出てきます。

 もちろん、「休む」という手もあるわけですが、しばしば休んだり、予告無しに届かなかったりすることが続くと、読者の信頼をなくすことになりかねません。
 人によってメールマガジンにさける時間もさまざまです。どのくらいのペースなら無理なく作れるのか、考えてみましょう。

 また、特に発行するペースが頻繁なメールマガジンの場合、届く時間がばらばらだと、読者は「いつ来るのだろう?」と気になるものです。きっちりとした時間は難しいにしても、朝頃、お昼頃、夕方頃、夜頃といったおおよその時間は決めておくのがいいと思います。

 また、発行時間や発行日(曜日)はメールマガジンの内容や、想定読者によって、いつ発行するのがベストなのか、一度考えておいても損はありません。例えば、内容がニュースなら、出勤前に読んでもらえるように早朝、もしくは帰宅前の夕方だと読みやすいかもしれません。また、休日に家族で楽しんでもらう内容のメールマガジンであれば、発行日は休みの前日や、週の後半のほうがいいかもしれない、といった具合です。

 内容もマンネリにならないように日々手を変えなければなりませんし、あまりにもマイペースでも、情報が陳腐化してしまうかもしれません。

 このあたりをすでにメールマガジンを出している人たちはどう考えているのでしょうか。今回は、発行形態の違う(日刊、月刊、不定期刊)4誌の発行者の方にお伺いしてみることにしました。

<<毎日発行するメールマガジンの場合>>

 「日刊」で発行を続けるにあたって一番気を遣っていることと言えば、やはり体調のことですね。すでに一年以上も配信を続けていますが、幸いまだ「寝込んで配信できない」なんてことはないのです。ま、単に「体が丈夫なだけ」って感もありますが(笑)。それと、載せるニュースを簡潔にまとめて解説するのではなく、私自身の感想と言いますか、個人的なコメントのみを載せるようにしていることも長く続いているポイントかもしれません。うまくまとめようとすると、その分「文章力」が問われてしまいますので。
 「HONJ通信」は5コーナーで構成しているのですが、3コーナーはあらかじめ土日などの空いた時間で作っておきます。ですから、日々まとめているのは2コーナーのみです。また、メールマガジンの最初で挨拶程度にしゃべるネタも、あらかじめ最近のニュースをチェックして項目として羅列していたりします。例えば、

と、まぁこんな感じです。やはり日々のことですので、毎回毎回「天気の話題」というわけにもいきませんから、色々と考えています。(HONJ通信 本城敬志さん)

誌名  :HONJ通信
刊行形態:日刊(土、日、祝祭日除く)
発行部数:2,561部
配送方法:まぐまぐ

<<月一度発行のメールマガジンの例>>

 第一に月刊というのはメールマガジンとしては発行周期が比較的長い方なので、発行日は必ず守るようにしています。ちなみに毎月最終土曜日に発行している根拠は読者アンケートの結果によるものです。次に、発行周期が長い分、内容的に質の高い記事になるように心掛けています。(横浜 Bay Side 通信 木村俊平さん)

誌名  :横浜 Bay Side 通信
刊行形態:月刊(最終土曜日)
発行部数:17,401 部
配送方法:まぐまぐ

<<不定期刊行の例(1)>>

 メールマガジンでありながら、読者との対話を大事にしています。一方的に情報を提供するだけではなくて、今回のメールマガジンが面白かったか? 面白くなかったか? どちらでもないか? そう思ったのは何故か? 今後期待する事は? などというアンケートを取ってそれを掲載し、私のコメントを付けます。また、紙上バトルトークと題して、毎回テーマを決めてそれに対する意見を投稿してもらいます。ほかの読者の意見を聞けるのは好評なようです。
 また、編集後記として、最近編集者が思ったことや行なったことを書いています。そうすることで、読者も参加している気分になるし、編集している人と読者の親密度がアップしてマガジンに親近感が出ているのだと思います。(F1ハイパーニュース 田原俊哉さん)

誌名  :F1ハイパーニュース
刊行形態:隔週+F1GP各セッションごと
発行部数:25,512 部
配送方法:まぐまぐ他

<<不定期刊行の例(2)>>

 定期的に発行するということにも良さはたくさんありますが、ひとつ恐いのは、定期にしてしまうと、それを宣言した時点で、書くべき空間ができてしまっている点です。例えば日刊で1,000文字程度のメルマガを出すとすると、目の前に、年間360,000文字の、埋めなければならない空間ができてしまう。そして、それを埋める義務感のようなものが発生する。すると、どうしてもクオリティといったものの優先順位が下がってしまう。これがちょっと怖いんですね。ですから、ある満足するクオリティになるまで、待つ・ためる、といったことをした方がいいのではないか、と私は考えています。単に気ままにやりたい、というのもあるのですけれども…。(えふりぺ 深水英一郎さん)

誌名  :えふりぺ
刊行形態:全くもって不定期
発行部数:12,437 部
配送方法:まぐまぐ




 4人の方とやり取りをして感じた私の結論ですが、発行間隔を決めるには、次の2つのことをあわせて考えてみてはどうでしょうか。

★自分が守れる発行間隔を設定する:
読者からの信頼を失わないことがメルマガの成功の上でかなり重要。まずは守れる範囲の約束を。


★扱うテーマと発行間隔のミスマッチは生じていないか:

読者は、購読テーマと発行タイミングのズレについては敏感。

 一般ニュース速報を扱いながら週刊では遅すぎるでしょうし、えふりぺの深水さんがおっしゃる通り、クオリティ高い文章の配信を第一に期待している読者に対して、毎日の発行を実現するがためにクオリティの低い文章を送ってもミスマッチが生じるでしょう。ですから、刊行スケジュールを決めるにあたっては、書きたいテーマの中で、自分が運用できる刊行スケジュールと考え合わせて、テーマを絞り込んでいけばいいと思います。

 例えば切手に関するメールマガジンを発行したいのであれば、自分がどれくらいその発行に対して時間をさけるかイメージしてみるのです。月に一度しか発行できない人は、随時刊行が要求される「切手の発売速報」の発行は無理です。むしろ、何か研究テーマを決めてレポートをするなど、読みきりのクオリティの高いものを作ったほうがいいでしょう。

 せっかく作ったメールマガジンを一瞬で終わらせないためにも、読者との約束は確実にできることから公約していくようにすることをおすすめします。例えば、私の場合、毎年正月号で「無遅刊・無欠刊」を公約しています。発行は、切手の発売日前日と言う不定期刊行のスケジュールで、違和感の生じない「切手の発売速報」の延長上の内容だけで運営しています。たったこれだけですが、それをずっと続けていることが読者の支持につながってきたのだと思います。

●読者に読みやすいメールマガジンを届けるために

 メールマガジンの発行手順ついでに、少し校正について考えてみましょう。通常、出版社や新聞社は「校正」を行なっています。レイアウトの崩れや、誤字・脱字が多ければ読者にとって読みにくいものになってしまうわけですから、個人のメールマガジンでも多少の「校正」作業は必要だと私は考えます。
 「まぐまぐ」等のメールマガジン発行支援システムでは、全読者に一斉配信する前に、テストモードで発行者にのみ、実際に配信されるメールが送られます。テストモードで届いたメールを一読者の視点で読んでみて、またリンクが正しいかどうか実際にクリックしてチェックしてみてから一斉送信作業に移りましょう。以下に、私がやっている簡単な校正方法をいくつかご紹介します。

・リンクのチェック

テストモードで実際に送られてきたメールのハイパーリンク部分はすべてクリックしてみましょう。手で打った場合はもちろんのこと、カット&ペーストを使用した場合でも、意外とURLを間違えて記載していたりするものです。また、サイトによってはすぐにURLが無効になってしまったり、その人だけがアクセスできる専用のURLだったりすることもあります。


・段落崩れなどをチェック

文章をあらかじめワープロやエディターソフトを使って書くと、メールソフトで見たときと見ばえが違うことがあります。テストモードで実際に送られてきたメールで、その点をチェックしておきましょう。


・プリントアウトしてチェック

やはり紙に打ち出されたものを見ると、画面に向いて書いていたときと違った気
分で、冷静に読めるものです。プリンターを持っている人は、ぜひ試してみることをオススメします。

・第三者によるチェック

友人でも家族でも誰でもかまいません。そのテーマやインターネットに詳しくない人ならなおさらいいです。長文を書いた時だけでも目を通してもらえれば、分かりやすい文章を書けているかどうか、アドバイスをもらえると思います。

・時間をおいてチェック

「てにをは」など日本語の助詞の使い方は難しいものです。が、自分の書いたも
のであっても、一度時間をおいて読み直してみると、環境が変わって結構冷静に読めるものです。

 さて、他のメールマガジンではどのようにして作っているのでしょうか。前号でもご紹介したインターネットニュース「DragonField Internet NOW! 」は、校正を非常に重視しているメールマガジンです。そこで、木村祥一郎さんにインタビューさせていただきました。




キッテコム:校正の担当者と編集者はそれぞれ専任で行なっているのですか?
木村:校正専任ではありません。Internet NOW!の作業の流れを説明すると、執筆→校正→校了チェック→編集→配信前チェック×2→編集長チェック→配信、となります。
校正は一人で担当、校了チェックと配信前チェックは数人で行ないます。校正基準は、内容確認はもとより、助詞などの日本語校正、機種依存文字の排除、英数文字の統一、改行時の禁則処理などです。また「Windows」と「ウィンドウズ」、「Win」といった表記のずれの統一なども厳しくチェックしています。


キッテコム:
何段階も厳しくやってるんですね。次に内容に関してですが、これは掲載しない、といった基準のようなものは用意されていますか? もしよろしければ、例を教えてください。

木村:掲載しない基準は用意しています。簡単に言うと、1.根拠の無いもの、2.宗教絡みのもの、3.悪徳商法に関与するものなどです。


キッテコム:
インターネットでは、どうしてもウソやデマが流れたりすることがあります。そういった誤報やデマをつかまないノウハウみたいなものはありますか?

木村:最大の防御策は、一次ニュース(直接発信元から発信されたニュース)のみを掲載し、裏の取れないものは掲載しないことを徹底することですね。


キッテコム:
どうもありがとうございました。

 すばらしい内容の文章も、誤字を発見すると逆に目立ってしまうものです。高揚していた気分も途端に萎えてしまいがちですが、とてももったいないことだと思います。ここまで行き届いた校正は、人数も時間もそれなりにいないとできないものですが、できる範囲で取り入れていきたいものです。

 「DragonField Internet NOW! 」は、インターネットニュース関連をテーマにしていますが、このニュース関連は企業の参入も多い激戦区です。そんな中で、常にトップグループを維持し、各所へのニュースソース提供など提携を多くしている理由の一つは、クォリティを維持するための努力にあると思います。

 個人のメディアだからと言って甘えずに、誤字・脱字のないメールマガジンを追求していきましょう。

<<ご紹介したメールマガジン>>
誌名  :DragonField Internet NOW!
テーマ :インターネットニュース
発行部数:61,000部
配送方法:自社システム

次回は、電子メールマガジンのレイアウトについてお送りします!


【追伸】この連載をご覧いただいたメールマガジン業界の方から、最近ポツポツとメールを頂戴しています。反響が嬉しいとともに、今後の連載の参考にさせていただいております。何か面白いお話などございましたら是非教えてください。

(99年6月24日)

[Reported by webmaster@kitte.com ]


バックナンバー

第1回:あなたも、電子メールマガジンのオーナーになろう!('99/0527)

第2回:どれが人気!? 電子メールマガジンの発行サービス比較('99/0603)

第3回:人気のある「メールマガジン」を作る秘訣('99/0610)

第4回:長く発行を続けるための作業テクニック(その1)('99/0617)

第6回:「メールマガジン」のインターフェイスを考えよう(その1)('99/0701)

第7回:「メールマガジン」のインターフェイスを考えよう(その2)('99/0708)

第8回:「メールマガジン」のプロモーション(その1)('99/0715)

第9回:「メールマガジン」のプロモーション(その2)('99/0722)

第10回:「メールマガジン」のプロモーション(その3)('99/0729)

第11回:「メールマガジン」に広告をとるには('99/0805)

第12回(最終回):自分のメディアを持つということ('99/0812)


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